10月31日、消費者庁は東京都の健康食品の販売事業者(株)シエルに対し、同社が供給する「めっちゃたっぷりフルーツ青汁」と称する痩身効果を謳った食品の表示について、景品表示法違反(優良誤認、有利誤認) の措置命令を行いました。
優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、体験談に対する打消し表示についても言及されています。
また、新規定期購入者の人数制限表示について、有利誤認と認定されました。
また、措置命令の執行と同時に課徴金納付命令も出されており、1億886万円を平成31年6月3日まで支払うよう命じられています。この課徴金額は、昨年1月、課徴金制度初の三菱自動車に命じた4億8507万円に次ぐ高額なものとなっています。
課徴金対象期間は、平成28年4月1日から平成30年7月30日までの約2年4カ月で、算定した同品の売上高は36億2878万9964円でした。
不当表示は平成27年12月10日から行われていますが、課徴金の対象期間は、課徴金制度が導入された平成28年4月1日から算定されています。
なお、返金措置はとられていません。
処分の内容について確認します。
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株式会社シエルに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 平成30年10月31日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_181031_0001.pdf
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
措置命令の概要
【対象商品】
「めっちゃたっぷりフルーツ青汁」と称する飲料
【表示媒体・期間】
自社ウェブサイト 平成27年12月10日~平成30年1月30日
【違反内容】
《優良誤認表示》
表示内容:
例えば、平成27年12月10日から平成28年12月29日までの間、
「海外でも大注目! 日本版スムージーの“青汁”ダイエット」
「おいしく飲んでスリムボディに!」
「149種類の酵素で燃焼する体に」
「野草、フルーツ、野菜、海藻の酵素を使用しており、特に野草のもつ免疫力やビタミン、ミネラルが、燃えやすい体を作り、肌の新陳代謝も促す。」
等と記載。
あたかも、対象商品を摂取するだけで、容易に痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。
実際:
同社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は期間内に資料を提出しなかった。
違反表示例:
体験談広告の打消し表示について:
自社ウェブサイトにおいて、体験談に対する打消し表示が記載されていましたが、当該記載は、一般消費者が対象表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではない、とみなされています。
打消し表示例(自社ウェブサイト):
「※1日の摂取カロリー合計が、1 日の消費カロリーを下回るように食事を置き換えて行ったことによるダイエットの結果です。」及び「※個人の感想であり、感じ方には個人差があります。ダイエットの効果を保証するものでは御座いません。」と記載。
《有利誤認表示》
【違反内容】
表示内容:
例えば、平成27年12月10日から平成28年12月29日までの間、
「初回 ¥680コース※税抜」「毎月先着300名様限定」
「・先着順となっておりますので、毎月300名様に達しましたら終了とさせていただきます。」
「・毎回自動お届けコースとなり、2回目以降の価格は3,980円(税抜)となります。」
等と記載。
あたかも、毎月300名に限って本件商品の定期購入を開始できるかのように表示していた。
実際:
本件商品の毎月の新規定期購入者数は、300名を著しく超過していた。
違反表示例:
同社は、10月16日、処分を前に不当表示を認める内容の新聞社告及び弊社ホームページでの告知を行いました。このため、消費者庁は、誤認排除措置の実施は求めず、再発防止策の役員、従業員への周知徹底、再発防止のみを命じています。
●課徴金納付命令の概要
(株)シエルは、課徴金として1億886万円を平成31年6月3日までに国庫に納付しなければならない。
課徴金対象行為をした期間:
平成28年4月1日~平成30年1月30日までの間
最後に取引をした日:
平成30年7月30日
課徴金対象期間:
平成28年4月1日~平成30年7月30日までの間
課徴金付加の対象外と認められる「相当の注意」について:
同社は、本件商品について、当該表示の裏付けとなる根拠資料を有することなく、当該表示が示す効果がないことを認識した上で、また、本件商品の新規定期購入者数が、毎月300名を著しく超過していることを認識した上で、前記の課徴金対象行為をしていたことから、当該行為をした期間を通じて対象表示が違反表示に該当することを知らず、かつ、知らないことにつき「相当の注意を怠った者でない」とは認められない。
売上額/課徴金額:
36億2878万9964円/1億886万円
シエルは不当表示を認める内容の社告において、対象商品について「毎日の食事に本商品を置き換えて摂取カロリーを抑えることでダイエット効果を得ることを目的としたものであり、本商品の成分が痩身を促す効果を有するものではありません」と説明しています。
薬機法上、ダイエット系の健康食品において標ぼう可能とされる「置き換えダイエット」表現ですが、合理的な根拠なく行き過ぎた効果を謳うと本件のように景表法に抵触します。
体験談に記載された「※1日の摂取カロリー合計が、1 日の消費カロリーを下回るように食事を置き換えて行ったことによるダイエットの結果です。」という打消し表示も、表示全体から受ける商品の効果を打消すものとは認められませんでした。
≪参考記事≫
・痩身系健康茶、ティーライフ(株)に対し景表法措置命令。体験談広告の問題点は?(消費者庁:平成29年9月29日)
・健康食品NG広告クイズ 「揚げ物食品の油吸収を約70%カット」
・景表法課徴金は対象売上高の3%、課徴金賦課の対象外となるケースは?(消費者庁 平成24年8月26日)
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