グリーンコープ連合に景表法措置命令。仕入れ先メーカーの品質管理ミスで(消費者庁:平成30年3月27日)

消費者庁は3月27日、生活協同組合連合会グリーンコープ連合に対し、同連合会が会員生協を通じて、会員生協の組合員である一般消費者に販売しているウインナーソーセージに関する表示について、景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。
消費者庁及び公正取引委員会(公正取引委員会事務総局近畿九州事務所)の調査による事案です。

同連合会が組合員向けに発行するカタログにおいて、対象商品が化学的な合成添加物を一切使用せずに製造されたものであるかのような表示をしていましたが、実際は対象商品に使用された羊腸は化学的な合成添加物であるリン酸三ナトリウム溶液に漬けて加工されており、優良誤認表示とみなされました。

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生活協同組合連合会グリーンコープ連合に対する景品表示法に基づく措置命令について
(平成30年3月27日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180327_0001.pdf
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報道によると、羊腸についてこれまで塩水処理したものを利用してきたが、2017年3月29日に委託先の畜肉加工メーカーがリン酸三ナトリウム溶液で処理していた羊腸を使用していたことが判明、翌日の製造分から塩水処理のものに切り替え、同年5月1日に消費庁に自主申告したとしています。

◆消費者庁、グリーンコープ連合に景表法違反で措置命令
(食品と開発 2018年3月28日)
http://www.kenko-media.com/food_devlp/archives/2509

今回の事案は、グリーンコープの仕入れ先メーカーの品質管理ミスによって生じたもので、「気づかなかった」では済まされない販売事業者としての表示責任が問われているものです。
同社が発表したお詫び告知文より、誤りを生じた経緯と再発防止策について確認します。


【対象商品】
グリーンコープの会員であるグリーンコープ生活協同組合(14組合)を通じて販売するウインナーソーセージ(14種)

【表示媒体】
「GREEN」と称するカタログ

【表示期間】
平成28年6月13日~平成29年3月18日

【違反内容】
表示内容:
あたかも、対象商品は、化学的な合成添加物を一切使用せずに製造されたものであるかのように示す表示をしていた。

表示例:
「ハム・ソーセージも 原料は産直豚100%! 添加物に頼らず、素材の良さをいかしています。保存料・着色料・添加物・化学調味料など不使用。」及び「今週のお・す・す・め! グリーンコープのハム・ソーセージには化学的な合成添加物は一切使っていません。」と記載。


実際:
対象商品に使用された羊腸は、化学的な合成添加物であるリン酸三ナトリウム溶液に漬けて加工されたものであった。

同社は今回の処分についてのお詫び告知文において、誤りを生じた原因について次のように説明しています。

●2017年6月19日の報告
グリーンコープが、2017年3月29日にメーカーが誤ってリン酸溶液に漬けていた期間があったことが分かったことを全組合員に報告した。

リン酸塩についてのグリーンコープの考え方
リン酸溶液は羊腸の中にウインナーの具を充填しやすくする効果があり、一般的に流通している殆ど(一般に流通されている99%)の羊腸に使用されている。
グリーンコープは、総量規制(総量を出来るだけ減らす)という考え方に基づいて、羊腸はリン酸溶液に漬けずに、「塩水」に漬ける仕様にしている。

羊腸メーカーに対して正しい伝達がされていなかった
・羊腸メーカーは、一般的に99%がリン酸溶液に漬けられていることから、「塩水」をリン酸溶液に変更することは問題ないと判断し、変更した。
・その際、溶液の変更を「指定原料の変更」として事前に了解が必要な事項と認識していなかった。羊腸を漬ける溶液は仕様確認の中で原料という扱いではないため、「原料や添加物」の変更ではないと判断。
・2016年5月2日付けの仕様書において、「塩水」を「リン酸溶液」に変更したことを仕様書の書類としてウインナー類製造メーカーに報告していた。

ウインナー類製造メーカーの仕様確認ミス
・年1回の仕様書確認において、羊腸を漬ける溶液の変更に気づかなかった。
今回の件は原料の変更という扱いではなく、原料以外の一部の記載事項の変更として扱われたため。
・2017年4月から豚腸加工メーカーを羊腸加工メーカーに変更する際に、あらためて仕様書を総点検した際に、変更に気付いた。

グリーンコープの確認ミス
年1回の仕様書確認の際、羊腸の加工工程に関する書類が提出されていないことに気がつかずに確認を終えていた。

再発防止策と返金対応
取引先・メーカー説明会を開催し、仕様書の確認を書類の変更だけではなく、それぞれのグリーンコープ商品の「特長事項」(例えば、「リン酸塩を使わない」等)を、取引先・メーカーが原料を調達しているメーカーに対して「重要事項」として指示して変更の可否を確認することを徹底する。
リン酸塩は自然界でも存在し、グリーンコープ基準のウインナー類にも原料由来のリン酸塩が含まれていることから、返金対応は行わない。

●2017年10月30日の報告
2017年6月19日に組合員に報告していた、羊腸をリン酸溶液に漬けていた期間について誤りがあり、溶液が切り替わった日付(2017年3月31日)以降も届けていたことを報告した。

溶液を切り替えた根拠を確認していなかった
・溶液が切り替わった日付について、事故発生当時、グリーンコープと取引先の工場長とのやり取りで、切り替わる日付を取引先からの報告を受けて報告していたが、羊腸が切り替わったという証明を取り寄せていなかった。
・しかし、公正取引委員会への報告で、4月1日から変更になったという根拠資料を求められ、取引先と再度確認を行った結果、切り替わった時期が違っていたことが判明した。
・工場長と現場の担当者とのやりとりが不十分で、 すべての羊腸が切り替わる日付の報告になっておらず、かつ、グリーンコープも取引先との確認が不十分だったため、羊腸の切り替わりについて間違った日付で案内していた。

再発防止策
取引先内部での情報共有の徹底、調査、確認、根拠資料(原料の入出庫記録、製造記録、出荷記録など)を提出させ、グリーンコープも確認する。

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ウインナーソーセージに係る表示について消費者庁及び公正取引委員会の調査を受けて、景品表示法に違反する行為として措置命令を受けました。
(生活協同組合連合会 グリーンコープ連合HP 2018年3月27日)

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景品表示法における不当表示は無過失責任となりますので、仕入れ先のミスであっても表示責任のある販売事業者が処分の対象となります。
また、2014年12月1日より施行された法改正により、管理体制整備も義務付けられるようになりました。
課徴金については、「課徴金対象期間」の売上高が5000万円以上であれば賦課される可能性があります。違反行為を行った事業者が、「相当な注意を怠ったものではないと認められた場合」は免除されますが、今回のケースでは難しいかもしれません。

≪参考記事≫
・景表法課徴金は対象売上高の3%、課徴金賦課の対象外となるケースは?

・ホクレンに景表法措置命令。加工食品の店頭POPの道産原料表示に誤り
(北海道:平成29年8月22日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。