増える健康食品、化粧品の健康被害。「皮膚障害」「消化器障害」相談が大幅増加(PIO-NETにみる2016年度の危害・危険情報)

先日の記事では、医師からの情報提供による、健康食品の事故情報をお伝えしました。

今回は、PIO-NETにより収集した全国の消費生活に関する相談情報より、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けた「危害・危険情報」についてご紹介します。
2016年度は、健康食品の危害相談が急増していることが読み取れます。

●「危害」の相談、3年ぶりに件数増加
「危害・危険情報」は 15,153 件で、対前年度比でみると 0.3%増となった(2015 年度:15,114件)。
「危害情報」は11,602件、対前年度比でみると9.1%増(2015 年度:10,638件)。
相談は常時10,000件以上寄せられている。
2013年度は13,700件と大幅に増加したが、2014年度、2015年度は減少傾向だった。
「危険情報」は3,551件、対前年度比でみると20.7%減(2015 年度:4,476件)。


(注 1)
PIO-NET (パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)とは、国民生活センターと全国の消費生活センター等をオンラインネットワークで結び、消費生活に関する相談情報を蓄積しているデータベース。
(注 2)「危害・危険情報」とは、商品・役務・設備に関連して、身体にけが、病気等の疾病(危害)を受けたという情報(「危害情報」)と、危害を受けたわけではないが、そのおそれがある情報(「危険情報」)をあわせたもの。データは、2017年5月末日までの登録分。なお、2007年度から国民生活センターで受け付けた「経由相談」は除いており、2015年度以降は消費生活センター等からの経由相談を除いている。

「危害情報」の概要
●健康食品の「危害」相談が急増

1 位は「健康食品」1,866件、前年度(3位、898件)から 968件大幅に増加した。
2 位は「化粧品」1,168件、前年度(1位、1,036 件)からランクを落とすも132件増加。
3 位は「医療サービス」926件、前年度(2位、904件)から22件増加。
4 位は「エステティックサービス」564件、前年度(4位、521件)から43 件増加。
5 位は「外食」467件、前年度(5位、501件)から34件減少。

●「危害」内容では「皮膚障害」「消化器障害」相談が大幅増加
1位は、「皮膚障害」3,042 件(26.2%)で、前年度(2位、2,590件)から 452件増加した。「化粧品」、「健康食品」、「エステティックサービス」などに関するものが多く、「健康食品」は300件増加、「化粧品」は127件増加した。
2位は、「その他の傷病及び諸症状(※)」2,813件(24.2%)で、前年度(1位、2,841件)から 28件減少。「医療サービス」、「歯科治療」、「健康食品」などに関するものが多く、体調がすぐれない、気分が悪い、痛みがあるなどの症状が目立つ。
3位は、「消化器障害」1,917件(16.5%)で、前年度(3位、1,224件)から 693件増加した。「健康食品」、「飲料」、「外食」などに関するものが多く、「健康食品」969件、「飲料」273件となっている。
4位は、「擦過傷・挫傷・打撲傷」の 780件(6.7%)で、前年度(4位、836件)から 56件減少した。「エステティックサービス」、「自転車」、「商品一般」などに関するものが多い。
5位は、「熱傷」676 件(5.8%)で、前年度(6位、643件)から 33件増加。「エステティックサービス」、「医療サービス」、「外食」などに関するものが多くなっている。
(※)「その他の傷病及び諸症状」には、脱毛、切れ毛、頭痛、腰痛、発熱、精神不安定等が該当し、根本的な原因が明らかでないものが含まれる。

●被害者の7割超が女性、40歳代が最多
危害を受けた被害者の性別件数は、女性が 8,549 件(73.7%)、男性が 2,832 件(24.4%)。
「健康食品」や「化粧品」などの件数の増加により、女性の割合が前年度(7,464 件、70.2%)と比べ増加した。
年代別件数では、前年度と同じく 40歳代が2,104件で最多、次いで 50歳代が1,854件。以下、70歳以上1,641件、30 歳代1,588件、60 歳代1,585件、20歳代1,086 件、10歳代337件、10歳未満336件と続く。
また、10歳代から60歳代全ての年代で件数は増加した。

●50歳代以上で健康食品の「危害」相談高まる
20~40歳代で「美容医療」や「エステティックサービス」、50~80歳代で「健康食品」や「基礎化粧品」の相談が上位に上がる傾向がみられた。
被害者の年代別に危害の多い商品・役務の傾向は、以下のとおり。
10歳未満は「外食」が3割でトップ、「家具類」「遊園地・レジャーランド」「菓子類」「調理食品」がそれぞれ15%~20%を占めている。 10歳代は「化粧品」、「健康食品」が約3割、「外食」が2割、「飲料」「自転車」がそれぞれ約1割となっている。
20 歳代は「エステティックサービス」24%、「健康食品」23%、「医療サービス」22%、「化粧品」20%、「外食」11%で、美医療系が上位になっている。
30歳代では、「健康食品」37%、「化粧品」21%、「エステティックサービス」17%、「医療サービス」15%、と健康食品の割合が上位に上がっている。
40歳代、50歳代は同じ傾向で、「健康食品」が45%以上、次いで「化粧品」が40歳代19%、50歳代23%、「医療サービス」40歳代15%、50歳代12%、「エステティックサービス」「飲料」がともに1割となっている。
60歳代は、「健康食品」33%でトップ、次いで「化粧品」30%、「医療サービス」15%、「歯科治療」12%、「飲料」10%。
70歳代は、「健康食品」32%でトップ、次いで「医療サービス」27%、「化粧品」25%、「歯科治療」「医薬品類」がともに8%となっている。

●危害情報上位の薬事関連商品の内容
「危害情報」件数上位の薬事関連商品(「健康食品」「化粧品」)について、性別、年代、商品種別・危害内容内訳、事例を分析した。

健康食品(1,866件、前年度比2.08%増)

性別・年代:
性別では女性が 1,622 件(86.9%)と9割近くを占める。
年代別では、40歳代が482 件(25.8%)で最も多く、次いで、50歳代361件(19.3%)、30歳代292件(15.6%)の順となっている。

「健康食品」の内訳:
ダイエット食品などを含む「他の健康食品」が1,074件(57.6%)で最も多く、次いで「酵素食品」が534件(28.6%)で昨年度(190件)から344 件増加となった。

危害内容:
「消化器障害」が 969件(51.9%)と 5 割を超え、次いで、「皮膚障害」592件(31.7%)、「その他の傷病及び諸症状」265件(14.2%)の順。
<事例>
・スマホで青汁の初回お試しを注文。湿疹が出て体調不良になったと言ったのに、4回の定期購入で解約不可と言う。納得がいかない。(40歳代・女性)
・ネットでお試し500円という酵素を注文したら、定期コースの申込みになっていた。飲むと下痢をしたり体調不良になるし、やめたいが連絡不能。(50歳代・女性)

化粧品(1,168件、前年度比1.13%増)
性別・年代:
性別では、女性が1,015件(86.9%)と9割近くを占める。
年代別では、40歳代が208件(17.8%)で最も多く、次いで60歳代の187件(16.0%)、50歳代180件(15.4%)の順となっている。

「化粧品」の内訳:
「化粧クリーム」211件(18.1%)、「基礎化粧品(全般)」168件(14.4%)、「乳液」98件(8.4%)、「化粧水」91件(7.8%)で48.6%と約5割を占めている。

危害内容:
「皮膚障害」が 1,035件(88.6%)と全体の約 9 割を占め、次いで「その他の傷病及び諸症状」98件(8.4%)、「呼吸器障害」11件(0.9%)の順。
<事例>
・通信販売で化粧品をお試しのつもりで注文した。定期コースだが、いつでも解約できると思っていた。肌が乾燥し吹き出物が増えたので解約したい。(40歳代・女性)
・化粧クリームを使用したら1週間ほど目が開けられないほど顔が腫れた。補償や慰謝料が請求できるか知りたい。 (60歳代・女性)

健康食品、化粧品の健康被害は30歳代から70歳代までの幅広い年代で発生していることが確認できます。
商品を扱う事業者には、製品の製造管理のあり方はもとより、被害情報収集と情報処理体制整備、消費者に対する適切な情報提供(表示、広告等)が一層求められます。
フィデスでは、顧客からの問合せ・相談情報の分析・活用、情報提供に関するコンサルティングを行っています。
お気軽にお問い合わせください。

(※)
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2016 年度の PIO-NET にみる危害・危険情報の概要 (独立行政法人国民生活センター 平成29年8月10日改訂)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170810_2.html
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《関連記事》

・健康食品の健康被害と商品名公表
(東京都 平成28年度「『危害』の消費生活相談の概要」)

・広告媒体別の健康食品に関する消費者相談の傾向とは?
(東京都 平成27年度)

・国セン、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品に注意喚起。厚労省、調査開始
(国民生活センター商品テスト 2017年7月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。