続々注意喚起、医師からの健康食品による事故情報(ドクターメール箱、健康食品安全情報システム)

最近、健康食品の危害情報についての注意喚起が続いています。

2017年4月に東京都が、「目のピント調節」をうたう機能性表示食品が原因と疑われる薬物性肝炎の重篤な健康被害の事例を公表。
7月にはプエラリア・ミリフィカを含む健康食品での健康被害問題に対して、国センが商品テストを行い、それを受け、厚労省がプエラリア・ミリフィカを取り扱う事業者の監視指導、調査を行いました。現在、調査結果を踏まえたプエラリアに対する今後の対応が検討されています。

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薬事・食品衛生審議会 (食品衛生分科会新開発食品調査部会新開発食品評価調査会)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-yakuji.html?tid=127894
プエラリア・ミリフィカを含む「健康食品」について
《2017年9月4日 配付資料一覧》
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176514.html
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更に、平成29年8月3日には、国民生活センターより、健康食品摂取による薬物性肝障害の事故についての注意喚起がなされています。
国民生活センターの「医師からの事故情報受付窓口」(愛称:「ドクターメール箱」。)(※1)に、2017年7月20日までに寄せられた情報179件のうち、9件が健康食品の摂取による「薬物性肝障害」と診断されたものでした。
(※1)
消費者が商品・役務の利用等により事故に遭い医療機関を受診した情報を直接医師から得ることで、事故情報を早期に把握し、再発・拡大防止に役立てるため、2014年8月より国民生活センターホームページ上に開設。
「医師からの事故情報受付窓口」

《医師からの事故情報受付窓口の概要図(国民生活センター)》

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健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります
-「医師からの事故情報受付窓口」から-
(独立行政法人国民生活センター 平成29年8月3日)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170803_1.html
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また、公益社団法人日本医師会の「健康食品安全情報システム」事業(※2)には、健康食品による薬物性肝障害の情報が2006年11月から2017年6月までの10年8カ月の間に27件寄せられています。
日本医師会では、健康食品による肝障害等の情報提供について、2017年7月10日に会員宛の周知を行っています。
(※2)
患者からの相談や日常の診療から知り得た健康食品による健康被害に関する情報を医師から収集し、診療の現場に還元して役立てるために公益社団法人日本医師会が実施している事業。

今回は、ドクターメール箱と、日本医師会の「健康食品安全情報システム」に寄せられた健康食品による薬物性肝障害の情報を確認します。


「ドクターメール箱」事故情報:
・患者は全て40歳代以上で、50歳代が半数以上(5件)を占めており、女性が7件、男性が2件。
・全ての事例が経過観察も含めて1カ月以上医療機関を受診しており、3件は入院治療を受
けていた。
・3件は健康食品と医薬品・医薬部外品を併用していた。

【情報1】通販で購入した特定保健用食品の粉末青汁を1回飲用し、薬物性肝障害の重症
通販で購入した特定保健用食品の粉末青汁を脂質異常症の改善を目的に1回飲用したところ、腹部に不快感あり。13日後に寒気、15日後に頭痛。同日、検診にて肝細胞の異変を示すAST:858 U/L、ALT:1090 U/Lと値が高く肝障害を認めた。そのため、当院を受診し、そのまま34日間入院となった。なお、今までに肝障害の指摘を受けたことはなかった。
(受診年月:2017年1月、50歳代・女性)

【情報2】知人に勧められたサプリメントの摂取を続けたところ、薬物性肝障害の重症
倦怠感、褐色尿、皮膚の黄染を訴えて当院を受診した。血液検査で、黄疸を示すビリルビンや、肝臓や胆道の病気の変化を示す肝胆道系酵素の値の上昇が認められたため、急性肝障害と診断した。
なお、他の検査結果から、ウイルス感染症や自己免疫疾患などによる肝障害の可能性は低いと考えられた。患者は、2~3カ月前頃から、知人に勧められた3種のサプリメントを使用しており、摂取を中止したところ、ビリルビンや肝胆道系酵素の値は減少した。サプリメント3種に対して血液検査(リンパ球刺激試験)を施行したところ、3種全てで陽性となり、薬物性肝障害と診断し、1カ月強の入院となった。
(受診年月:2015年5月、70歳代・女性)

【情報3】健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症
飲酒後二日酔いがあり、翌日に尿が濃いことを自覚して近くのクリニックを受診した。同クリニックの血液検査でAST:3836 U/L、ALT:2869 U/Lと上昇が認められた。
それまでに検診で肝機能異常を指摘されたことはなかった。当科の検査により、アルコールの影響でよくみられる肝炎ではなく、摂取していた健康食品(摂取期間不明)が原因の薬物性肝障害と考えられた。
健康食品の摂取を中止し、安静臥床で経過をみたところ、再発悪化は認められなかった。その後、外来に移行し、1カ月以上経過観察を行った。
(受診年月:2014年10月、40歳代・女性)

【情報4】10年前から摂取している健康食品と総合感冒薬により薬物性肝障害を発症
10年前から健康維持のため数種の健康食品を摂取していた。今月、総合感冒薬を1日分摂取し、その約2週間後に腹部の不快感があったため、近くの病院を受診した。その病院でAST、ALTともに400 U/L台と上昇がみられ、精査加療目的のため当院の紹介となった。血液検査したところ、使用していた健康食品の1種と総合感冒薬が原因と考えられた。その後、使用の中止のみで改善したが、治療期間は、経過観察を含め1カ月以上となった。なお、同じ感冒薬は以前も服用したことがあるが、問題はなかった。
(受診年月:2012年2月、50歳代・女性)

「健康食品安全情報システム」事故情報:
健康食品による肝障害の情報が2006年11月から2017年6月までの10年8カ月で27件、漢方等の一般用医薬品による肝障害の情報が2件寄せられている。

【症例1】園芸店で購入したボルトジンユの「健康ハーブ茶」を服用し、高度肝機能障害
ボルトジンユの「健康ハーブ茶」を園芸店で購入し、煎じる等して服用し始めた。2カ月後、
黄疸を自覚し、かかりつけ医に相談し検査を行ったところ、高度肝機能障害が判明した(AST:653 U/L、ALT:612 U/L等)。ボルトジンユの「健康ハーブ茶」の服用を中止し、10日間の入院加療ののち、通院にて経過観察を行い、回復に至った。
日本医師会内委員会にて、提供いただいた各種情報をもとに、ボルトジンユによる肝障害と判定した。なお、調査の途上で、インターネットの販売ページに糖尿病治療を強くほのめかす記載があったことから、厚生労働省に医薬品医療機器等法上の対応を要請した。
(情報受付年月:2017年4月、70歳代・女性)

【症例2】健康食品9種類とビタミン剤1種類を服用し、急性肝不全
健康食品9種類とビタミン剤1種類を服用していた。大量腹水、軽度の黄疸の症状があり、急性肝不全(非昏睡型)、急性肝不全等となり、未回復である。日本医師会内委員会では、利用している健康食品の数が多すぎるため、判定を実施できなかった。
(情報受付年月:2014年1月、70歳代・女性)

【症例3】ウコン末(春・秋)とクルクミンの健康食品を摂取し、劇症肝炎
ウコン末(春・秋)とクルクミンの健康食品を摂取していた。胃部の不快感と黄疸(総ビリルビン24.72 mg/dL等)、劇症肝炎(PT34.2%、AST:1906 U/L、ALT:2518 U/L)となったため、肝移植の可能性もあり大学病院へ転院させた。
(情報受付年月:2011年6月、50歳代・男性)

日本医師会ではウコンによる肝障害の報告が多く寄せられたことから、ウコン等を含む健康食品の摂りすぎに注意を促すポスターを作成して全会員医師に配布し、待合室での掲示等による啓発を目指すといった活動を行っています。

●「健康食品」やサプリメントを摂りすぎていませんか?「ウコンについて」
(公益社団法人日本医師会)
https://www.med.or.jp/people/knkshoku/ukon.html

《関連記事》
健康食品の健康被害と商品名公表
(東京都 平成28年度「『危害』の消費生活相談の概要」)
・国セン、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品に注意喚起。厚労省、調査開始
(国民生活センター商品テスト 2017年7月)

・広告媒体別の健康食品に関する消費者相談の傾向とは?
(東京都 平成27年度)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。