P&Gジャパン、風呂用防カビ剤に景表法措置命令!空間除菌製品の広告表示リスクを解説(消費者庁 2025年8月1日)

2025年8月1日、消費者庁は、洗剤、洗濯用品、台所用品や消臭・芳香剤等の家庭用品の販売事業者P&Gジャパン合同会社(神戸市中央区)が提供する風呂用防カビ剤「ファブリーズ お風呂用防カビ剤」の表示に対して、不実証広告規制(※)による優良誤認の措置命令を公表しました。
これは2025年度に入って初めての、除菌関連商品に対する景表法の措置命令となります。

P&Gジャパンは、商品パッケージや自社ウェブサイト、テレビCMなどで「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」「防カビ効果は約6週間持続します」といった表示をしていましたが、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められませんでした。

これは、過去に度々、不実証広告規制を用いた処分を受けている「空間除菌製品」と同様に、「表示された実際の使用空間とは異なる条件の試験空間で行われた商品の効能効果の試験結果」が表示の裏付けとして認められなかったケースにあたります。
今後も、このような「空間除菌」系商品の広告表示を行う際は、効果の合理的な根拠として、実際の使用空間における実証が不可欠であると言えるでしょう。

処分の概要と、空間除菌関連商品の菌・ウイルス除去効果の合理的根拠について確認します。

———-
P&Gジャパン合同会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2025年8月1日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/043199
———

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


【対象商品】
「ファブリーズ お風呂用防カビ剤」と称する商品

【表示媒体・表示期間】
商品パッケージ:2022年4月15日~2023年7月24日
自社ウェブサイト:2022年8月16日~2023年5月3日
自社ウェブサイト内のYoutube動画広告:2022年8月17日~2023年4月3日
地上波TVCM:2022年4月1日~2022年12月31日までの複数の期間
Youtube動画広告:2022年8月17日~2023年2月24日

【違反内容】
表示内容:
例えば、商品パッケージにおいて、「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」、「※防カビ効果は約6週間持続します」、「自然発想成分“BIOコート”テクノロジーがお風呂場の隅々にまで広がり、天井や床や掃除しにくい場所などを有効成分でコーティングし、黒カビの成長を防ぎ続ける」等と表示。
あたかも、対象商品を浴室に設置するだけで、約6週間にわたり、浴室全体のカビの繁殖を防止する効果が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例: 自社ウェブサイト

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
消費者庁は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

度重なる「空間除菌」系商品広告に対する処分と今後の見通し

新型コロナウイルス感染症の拡大により社会的関心が高まったことから、令和2年度頃から「空間除菌」系商品広告に対する法執行が強化されてきました。オゾンやマイナスイオンを発生させる装置、二酸化塩素を噴霧する商品、首下げ型や置き型など様々なタイプの商品が、「空間除菌」等の効果表示に関して不実証広告規制による措置命令を受けています 。いずれの事案においても、表示の裏付けとなる「合理的な根拠」が認められず、優良誤認と認定されています。

新型コロナウイルス感染症が2023年5月の『5類感染症』移行後、「空間除菌」商品に対する監視状況が一旦落ち着いたかのように見えますが、直近の2024年度では、花粉やダニ対策グッズに対する処分が出されています。

・浮遊する花粉をブロック、根拠認められず。エステーに景表法措置命令
(消費者庁 2024年4月26日)

・ダニの捕獲効果、根拠認められず。イースマイルとスマイルコミュニケーションズに景表法措置命令(消費者庁 2025年3月14日)

今後も、「空間除菌」系商品広告に対する不実粧広告規制による法執行は続くことが予想されます。
事業者は、商品の効能効果を謳う表示に対する国の合理的根拠や打消し表示の考え方について、しっかりと理解し、対策を講じることが不可欠です。
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《参考記事》
・大幸薬品&デンソー共同開発「車両用クレベリン」に景表法措置命令。子会社、ディーラー含む10社一斉処分(消費者庁 2024年3月19日)

・二酸化塩素による空間除菌製品、今回も根拠認められず。興和、中京医薬品、ピップ、三和製作所に景表法措置命令(消費者庁 2024年1月31日)

・2023年度では1件目となる空間除菌製品の景表法措置命令。共立電器産業、フォレストウェル(消費者庁 2023年12月22日)

・「クレベリン」の大幸薬品に景表法措置命令。「空間除菌製品」の除菌効果表示の合理的根拠に波紋(消費者庁 2022年1月20日)

・コロナ予防効果広告、GSDのマイナスイオン発生器に景表法措置命令(消費者庁 2021年3月31日)

・「滝風イオンメディック」のアップドラフトに景表法措置命令。ウイルス除去、空間除菌、疾病予防効果に優良誤認(消費者庁:2021年6月17日)

・「消費者庁公認」を謳った首下げ型の空間除菌製品。ドラッグストアチェーンのププレひまわりの店頭POP広告に景表法措置命令(消費者庁 2021年6月11日)

・今年度5社目。レッドスパイスの首下げ空間除菌製品に景表法措置命令。除菌効果への打消し表示認められず(消費者庁 2021年3月18日)

・Nature Link、萬祥、首下げ空間除菌製品2社の表示に景表法措置命令。分かれる両社の対応(消費者庁 2021年1月15日)

・Salute.Lab、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。実証データは、訴求内容に適切に対応を(消費者庁 2020年12月22日)

通販事業者 東亜産業、首下げ空間除菌剤の表示に景表法措置命令。新型コロナウイルス関連商品に注意(消費者庁 2020年8月28日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。