埼玉県、ネットで低額料金をうたう「水回りの修繕サービス」訪販の中西設備に景表法と特商法のダブル処分(埼玉県 2024年2月8日)

埼玉県は2024年2月8日に、中西設備こと中西恭佑(千葉市中央区)が訪問販売で提供する「水回りの修繕サービス」に対し、景品表示法違反の措置命令と、特定商取引法違反で業務停止命令(9カ月間)と再発防止を求める指示、同事業者の代表に対する業務禁止命令を行いました。

景品表示法違反は、ウェブサイトの水回り修繕サービスの修理実績やお客様満足度の優良誤認表示、低額料金をうたいながら実際には高額となる修理代金表示についての有利誤認が認定されました。
特定商取引法違反は、訪問販売での申込みの撤回又は解除に関する契約書面記載不備(旧法第5条第1項、旧法施行規則第6条第1項第3号イ)と、消費者からクーリング・オフの申し出を受けたにもかかわらず、履行を拒否していたとして、債務履行拒否(旧法第7条第1項第1号)が適用されています。

本記事では、違反内容と「顧客満足度」No.1表示の景表法上の注意点および、景表法と特商法の同時適用処分の規制動向を確認します。

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水回り修繕等を行う事業者に対する景品表示法に基づく行政処分について
(埼玉県 2024年2月9日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0310/news/page/news2024020902.html

水回り修繕等を行う事業者及び代表に対する特定商取引法に基づく行政処分について
(埼玉県 2024年2月9日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0310/news/page/news2024020901.html
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【事業者の概要】
対象事業者:中西設備こと中西恭佑
業態:訪問販売(水回り修繕等)

【違反概要】
●景品表示法違反について(措置命令)
対象役務:
水回り修繕等
表示媒体:
「くらし水道24」と称するウェブサイト
http://www.chiba-suido.com/
表示期間:
2022年7月25日~2023年12月12日
表示内容:
優良誤認表示
修理実績表示
あたかも、多数の修理実績があるかのような表示をしていた。
<表示内容>
・「信頼の実績  年間14,400件  月間1,200件修理お手伝い!」
実際:
同社が運営する事業の人員体制では現実的に対応不可能な修理件数の表示だった。

お客様満足度
あたかも、顧客満足度が高く、修理後のトラブルが生じていないかのような表示をしていた。
<表示内容>
・「お客様満足度99%  修理後1ヶ月以内の再発トラブル年間0件!」
実際:
(1)表示している顧客満足度は、統計的に客観性が確保された調査によるものではなかった。
(2)消費者及び消費生活相談窓口等から苦情等について複数の連絡を受けていたにもかかわらず、敢えて修理後1ヶ月以内の再発トラブルを限定的に取り上げた表示をしていた。

(埼玉県公表資料より引用)

有利誤認表示
修理代金表示
あたかも、表示にある安価な価格で提供可能であるかのように表示していた。
<表示例>
・「水漏れた!水溢れた!トイレ詰まった!350円(税込)~」
・突然の事だから迅速に対応します!
  トイレのつまり・水漏れ解決
  通常1,580円(税込)→350円(税込)~
・明確な金額を提示!追加料金一切なし!
 水まわりの交換や修理といった作業時には、作業を開始する前に必ず明確な金額を提示します。
 また、特殊な例を除いて、お見積もり時になかった追加費用が発生することはありません。
実際:
表示内容とは異なり、作業の過程で追加料金が発生することにより、約数万円から数十万円の作業代金を請求されるなど、消費者は表示されているような価格で本件役務提供を受けることができないものだった。

(埼玉県公表資料より引用)

「お客様満足度No.1」表示の景表法規制に注意

本件で問題となった「お客様満足度99%」のような「No.1表示」に関しては、2023年度に景表法で13社、特定商取引法で1社に行政処分が出され、監視の目が高まっています。
「顧客満足度」など「第三者の主観的評価」を指標とするNo.1表示について、消費者庁は、2024年9月26日、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表し、景品表示法上の考え方が示されました。以下の記事でご確認下さい。

・消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表。調査会社任せの危うい「No.1表示」の実態が明るみに。「専門家の○%が推奨」も注意

●特定商取引法に基づく業務停止命令等について
【認定した違反行為】
契約書面記載不備(旧法第5条第1項、旧法施行規則第6条第1項第3号イ)
消費者に公布する水回りの修繕サービス提供契約書面に、「書面又は電磁的記録により商品の売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除をおこなうこと」ができる旨が記載されていなかった。

債務履行拒否・不当遅延(旧法第7条第1項第1号)
消費者からのクーリング・オフの申し出を受けたにもかかわらず、訪問販売に係る役務提供契約の解除によって生ずる返金等の債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させる行為をしていた。

【処分の内容】
(1) 業務停止命令(法人)
9か月(2024年2月9日から2024年11月8日まで)

業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。

(2)指示(法人)
前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築する。
これを業務停止命令に関する業務を再開する1か月前までに埼玉県知事宛て文書にて報告すること。

上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。

(3) 業務禁止命令(個人)
9か月(2024年2月9日から2024年11月8日まで)
代表 中西恭佑
内容:
代表が、訪問販売に関する業務のうち、業務の停止を命ずる範囲の業務を営む法人の当該業務を担当する役員となることの禁止。

業務禁止命令に違反した場合は、業務禁止命令を受けた個人が3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを行うこととなっています。

都道府県による景表法と特商法の同時適用の処分

景表法と特商法のダブル処分については、埼玉県では、2020年3月31日・4月1日にダイエットサプリメント通販を行う事業者に対して、2020年5月に害虫駆除サービスを行う事業者に対して行われており、本件で3事例目となります。

・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)

・埼玉県、害虫駆除サービスの訪販で、生活協同組合くらしのコープに景表法措置命令と特商法業務停止命令 (埼玉県 2020年5月8日)

また、大阪府が、2020年3月に健康機器の訪問販売を行う事業者に対して、景表法の措置命令と特商法による業務停止命令(3カ月)を行っています。
・大阪府、景表法と特商法の同時適用。健康機器のSF商法エコ関西に措置命令と業務停止命令 (大阪府 2020年3月18日)

今後も、通信販売や訪問販売、電話勧誘販売といった特定商取引において、特商法と景表法のダブル処分が増える可能性がありそうです。

≪関連記事≫
・埼玉県、社会福祉組合の「火災保険等を利用した雨どいの補修工事」に景表法措置命令 (埼玉県 2021年3月15日)
・埼玉県、家庭教師派遣(株)ワン・ツー・ワンに景表法措置命令。合格率や教師登録数、解約料等の表示に誤認認定 (埼玉県 2020年9月14日)
埼玉県 接骨院MJGの「お客様評価」「やせプログラム」表示に景表法措置命令(埼玉県 2019年11月18日)
・育毛剤(株)RAVIPAに景表法措置命令。「いつでも解約」「顧客満足度」「使用体験者の年齢」「お手入れなし・あり写真」に不当表示認定(埼玉県:2019年8月20日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。