ネット通販「定期購入販売」関連相談、前年度比57.1%と大幅減少 (JADMA 2021年度消費者相談件数)

2021年度の通販に関する消費者相談の傾向は?
(公社)日本通信販売協会の消費者相談室「通販110番」に寄せられた、2021年度の消費者相談件数(速報値)とその概要が発表されています。
「定期購入販売」関連相談ですが、21年度は法執行による影響で大幅に減少しています。
特に健康食品に関する相談の減少が顕著ですが、化粧品についてはまだ増加が続いています。
相談状況の、広告媒体別、苦情・問い合わせ内容、商品別の傾向についてご紹介します。

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2021年度消費者相談件数とその概要
(社)日本通信販売協会 会報誌(ジャドマニューズ2022年5-6月)
https://www.jadma.or.jp/pdf/news/2022_05-06.pdf
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「詐欺的サイト」、通販相談件数の4分の1で増加

「通信販売に関する相談」は3,649件で、前年度の3,874件から5.8%、225件の減少となった。
会員企業に関する相談は781件で、通販相談件数の21.4%を占め、前年度の680件から14.9%、101件の増加となった。
非会員企業に関する相談は1,843件で、通販相談件数の50.5%を占め、前年度の2,283件から19.3%、440件の減少となった。
詐欺的サイト(※)に関する相談は937件で、通販相談件数の25.7%を占め、前年度の814件から15.1%、123件の増加となった。
相談者の内訳は、消費生活センター等からの相談が444件で11.9%、消費者からが88.1%。

一方、「通信販売以外に関する相談」は97件(前年度104件)。
総件数は3,746件と、前年度の3,978件から5.8%、232件の減少となった。

(※)詐欺的サイト
前年度まで「模倣サイトによる現金搾取」を目的としたものを集計していたが、今年度より「(悪質な)海外サイト」「模倣サイトによるフィッシングが疑われるサイト」も含めて集計。

媒体別ではモバイルがトップ、PCと合わせて「インターネット」が8割以上を占める

媒体別の相談では、媒体の判明した相談3,030件全体のうち、
1位:「インターネット(モバイル)」(1,899件、構成比62.7%、前年比92.5%)
2位:「インターネット(PC)」(585件、構成比19.3%、前年比82.2%)
3位:「テレビ」(289件、構成比9.5%、前年比113.3%)
4位:「カタログ」(95件、構成比3.1%、前年比114.5%)
5位:「新聞」(65件、構成比2.1%、前年比83.3%)

なお、「(悪質な)海外サイト」トラブル相談では、SNS広告を購入のきっかけとしたものが277件確認され、苦情相談613件に対して、45.2%を占めている。

商品別相談、定期購入トラブルは「健康食品」から「化粧品」へ

「通信販売に関する相談」 のうち商品が判明したもの (詐欺的サイトを除く) は2,712件だった。
1位「化粧品」(246件 前年度比123.0%)
前年3位から1位に、前年度の202件から44件、23.0%の増加。
1社当たり10件以上の相談が寄せられた企業は4社60件で、すべて「定期購入トラブル」 に関する事業者。
消費生活センターから見解を求められるケースも多く、38件だった。
2位「健康食品」(195件 前年度比37.0%)
前年度の530件から335件、63.2%の大幅減少。
1社当たり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度13社310件だったが、今年度は1社10件で「定期購入トラブル」 に関するもの。
3位「医薬部外品・医薬品」(166件 前年度比120.3%)
4位「家庭電気製品」(144件 前年度比92.9%)

苦情内容は昨年度1位の「契約・解約」が大幅減少

苦情内容の上位項目は以下の通り。
1位:「返品・交換」(741件、前年比98.7%)
件数は微減となったが、一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は 前年度6社に対し、今年度は8社となった。うち1社は「外資系大手ネット通販企業」。
2位:「契約・解約」(618件、前年比66.2%)
一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度22社に対し、今年度は9社。減少した13社はいずれも非会員企業で大幅減少となった。
3位:「広告内容」(416件、前年比74.6%)
一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度8社に対し、今年度は5社。減少した3社はいずれも非会員企業で大幅減少となった。
4位:「電話がつながらない」(331件、前年比66.2%)
一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度7社に対し、今年度は2社。減少した5社はいずれも非会員企業で大幅減少となった。
5位:「顧客対応」(232件、前年比82.9%)
一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度3社に対し、今年度は2社。うち1社は「外資系大手ネット通販企業」で、前年度の24件から10件に減少した。
6位:「商品の汚れ・不良品等」(177件、前年比87.6%)
非会員企業は151件で前年度比101.3%と横ばい、会員偉業は26件で前年度比49.1%と大幅減少した。

「企業の連絡先(を知りたい)」問合せがJADMA会員企業で45.8%増加

問合せ内容の上位項目は以下の通り。
1位:「企業の連絡先」(451件、前年比112.8%)
会員企業が156件で前年度の107件から145.8%増加。一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は、前年度1社20件に対し、今年度は2社51件に増加。
非会員企業では、295件で前年度293件と横ばいだが、内訳では外資系大手ネット通販企業に関して167件と前年度から34件増加し、前年度比125.6%。非会員件数の56.6%を占めている。
2位:「広告内容」(61件、前年比79.2%)
会員、非会員企業ともに減少。特定企業への集中はなし。
3位:「返品・交換」(59件、前年比79.7%)
4位:「信頼性・情報」(49件、前年比116.7%)
5位:「契約・解約」(45件、前年比70.3%)

「広告内容」「返品・交換」「信頼性・情報」は、消費生活センター経由の相談が多かった。
「信頼性・情報」「契約・解約」では、外資系大手ネット通販企業への集中が見られた。


「定期購入」に関する相談は、前年度の816件から2021年度は466件、前年度比57.1%と大幅に減少しました。
これは、2020年度に相談件数上位2社に対し「詐欺的定期購入販売」として特商法に基づく業務停止命令が出されたこと、また、適格消費者団体から「差し止め請求」された事業者が2社あり、それらの事業者への相談がなくなったことが大きな要因としています。
一方、会員企業については、前年度の92件から109件に18.5%増加していました。一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業が3社、計60件と55%を占めています。

2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正では、定期購入契約での「お試し」や「トライアル」、「いつでも解約可能」などの強調表示での消費者を誤認させるような表示に関する禁止規定も盛り込まれました。
違反行為により消費者が誤認して申し込みをした場合には取消権が認められ、契約解除の妨害に当たる行為に対しては罰則付きの禁止となります。

厳しい法執行により、悪質事業者が一掃されることを期待します。

≪参考記事≫
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)

・通販で定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けに(特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(平成29年6月30日公布))

・強まる「定期購入」契約に関する監視の目。適格消費者団体、行政の動向

≪関連記事≫

・健康食品、化粧品のネット通販「定期購入販売」関連相談、法執行により減少 (JADMA 2020年度消費者相談件数)

・健康食品、化粧品のネット通販「定期購入販売」関連相談、大幅増加 (JADMA 2019年度消費者相談件数)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。