消費者契約法改正議論の行方。広告に詳細注意事項は必要か?(JADMA「通販広告に対する消費者の意識、行動調査」)

現在、消費者契約法改正が議論され、来年の通常国会で提出される見込みです。
広告で消費者の不利益になることを故意に記さなかった場合、契約の取り消しが認められるようになり、広告表示に関しては規制の強化が検討されています。
消費者保護が拡大される一方で、自由な販売活動が制限されるとして、通販業界は強く反発しています。
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消費者契約法専門調査会(内閣府)
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/other/meeting5/
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公益社団法人 日本通信販売協(JADMA)は、消費者の通販広告に対する意識や行動について調査、分析し、法改正の対象となる通販広告の課題と展望を提示しています。
同時に「ジャドマ通販研究所」を通して、法改正により今後通販を活用する消費者にどのような影響があるのか、消費者の生の声をインタビュー掲載しています。(※)


●2大通販トラブル「商品関連」(36.0%)、「配送関連」(27.9%)
過去1 年以内の通販トラブル経験を問う質問で、調査を行った男女1701 人のうち、この1 年に何らかの通販トラブルにあった人は143人。
通販トラブルの経験者を対象に、具体的な通販トラブルの内訳を聞くと、商品の間違いや品質・性能が説明と異なるなど「商品関連」(36.0%)、商品が届かない、遅延など「配送関連」(27.9%)が2大要因となり、全体の6割以上を占めている。
一方、「広告表示関連」は(2.7%)と少ないが、「自身の間違いや見落とし」(7.7%)「品質・性能が思っていたものと異なる」(6.8%)という消費者自身の勘違いが要因となるトラブルも存在することから、商品や契約に関するわかりやすい表示により、トラブルを削減できる可能性があると考えられる。
通販広告調査(トラブル)

●通販広告に注意事項の詳細表示を求める人は1割
「商品の特長をわかりやすく表しているものがよい」(56.6%)、「商品の特長が多少わかりにくくても、注意事項が細かく記載されているものがよい」(10.3%)となった。
また、「広告を見て気になった商品は、他の情報で調べてから購入することが多い」(56.2%)「他の情報は調べずにそのまま購入する」(10.3%)となった。
通販広告調査(商品特長)

●通販で商品を購入する際、「広告以外を参考にする」が83.3%
広告の他に参考にしている情報源の上位3つは、「通販サイトでの商品説明」(54.6%)、「購入者のクチコミ」(42.7%)、「企業サイトでの商品説明」(31.4%)の順となっている。
通販広告調査(参考情報)

多くの消費者は詳細な商品情報を広告以外からも収集しており、広告以外の情報もあわせて総合的に購入判断をしていることが読み取れます。
また、広告には詳細情報よりも、魅力や特長をわかりやすく表示して欲しいという考え方が半数を超えて支持されています。
法改正による規制の有無にかかわらず、消費者の合理的な商品選択のためには不利益情報や詳細情報は消費者に伝えられるべきだと思います。ただし、消費者がその内容を正しく理解するためには、「ただ表示されていればよい」というものではなく、理解しやすい情報提示の工夫や消費者自身の情報に対する意識の向上も求められます。
どのような形での情報提供がなされるべきなのかは、商品・サービスの特性によってその適切な方法は異なることと思います。法律で規制するよりも業界団体が中心となって自主規制を進めていく方が、実効性があるように思われます。

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消費者委員会 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」(平成27年8月)
http://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/other/meeting5/doc/201508_chuukan.pdf
《抜粋》
第3 契約締結過程
1.「勧誘」要件の在り方(法第4条第1項、第2項、第3項)

イ 本専門調査会では、消費者の多くは様々な情報を収集した上で物品を購入しており、実際の購入手段における広告等の記載や説明だけが意思表示に影響しているとは限らないという意見も見られたが、不特定の者に向けた広告等の中にも、消費者の意思形成に直接的に影響を与えるものがあり、取消しの規律の適用を認めるべき場合があること自体については、委員から特段の異論はなかった。
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通販広告に対する消費者の意識、行動調査(社団法人日本通信販売協会)
「通販広告に対する意識調査」
「消費者契約法改正と通販広告表示についての座談会」
https://www.jadma.org/tsuhan-kenkyujo/

・調査手法:インターネット調査
・対象者:全国の10 代から60 代(15~69 歳迄)の一般消費者男女1701 人
・調査地域:全国
・調査期間:2015年8月28日~9月1日

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。