健康食品、化粧品のネット通販「定期購入販売」関連相談、大幅増加 (JADMA 2019年度消費者相談件数)

ネット通販に関する消費者相談で、健康食品、化粧品の「定期購入販売」関連相談が大幅に増加しています。

(公社)日本通信販売協会の消費者相談室「通販110番」に寄せられた、2019年度の消費者相談件数(速報値)とその概要が発表されています。
2018年度は減少傾向となった「通信販売に関する相談」ですが、2019年度は再び増加となりました。
その主な要因は、「定期購入販売」関連相談によるものとなっています。

相談状況の、広告媒体別、苦情・問い合わせ内容、商品別の傾向についてご紹介します。

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2019年度消費者相談件数とその概要
(社)日本通信販売協会 会報誌(ジャドマニューズ2020年5-6月)
https://saas.actibookone.com/content/detail?param=eyJjb250ZW50TnVtIjo0NjQyNH0=&detailFlg=1
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●「定期購入販売」関連相談、83%増加。「詐欺的サイト」、20%の減少
「通信販売に関する相談」は4,230件で、前年度の3,977件から6.4%の増加となった。
その要因は、「定期購入販売」関連相談が、前年度の502件から83.3%増加し、920件となったことによる。
詐欺的サイトに関する相談は531件で20.2%の減少となった。
相談者の内訳は消費生活センター等からの相談が578件で13.7%、消費者からが86.3%。

一方、「通信販売以外に関する相談」は131件で、前年度は128件で横ばい。
総件数は4,361件と6.2%の増加となった。


●媒体別ではモバイルがトップで、相談に占める割合が更に伸長

媒体別の相談では、媒体の判明した相談3,474件全体のうち、
1位:「インターネット(モバイル)」(1,606件、構成比46.2%、前年比117.7%)
2位:「インターネット(PC)」(1,329件、構成比38.3%、前年比101.8%)
3位:「テレビ」(273件、構成比7.9%、前年比102.2%)
4位:「カタログ」(83件、構成比2.4%、前年比101.2%)
5位:「新聞」(64件、構成比1.8%、前年比79.0%)

●苦情内容は定期購入に関するものが多数

苦情内容の上位項目は以下の通り。
1位:「契約・解約」(1,083件、前年比138.3%)
2位:「返品・交換」(705件、前年比114.3%)
3位:「電話がつながらない」(506件、前年比121.9%)
4位:「広告内容」(506件、前年比121.9%)
5位:「代金支払・代金回収」(258件、前年比131.6%)
6位:「商品の汚れ・不良品等」(218件、前年比103.8%)

「契約・解約」は、苦情の多い企業について健康食品や化粧品の「定期購入」に関するものが多かった。一社あたり10件以上の相談が寄せられた企業は16社あるが、 そのうち14社が健康食品や化粧品を扱っている事業者だった。
「返品・交換」は、企業別では 「外資系大手ネット通販企業」への相談が最も多く、 続いて健康食品や化粧品の「定期購入」に関する相談。
「電話がつながらない」も、定期購入販売を行っている企業によるものが目立つ。
「広告内容」は、「返品・交換」の上位企業、「契約・解約」の健康食品や化粧品の「定期購入」に関する企業が上位を占めた。
「代金支払・代金回収」は、健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業、外資系大手ネット通販企業に集中。

●「企業の連絡先(を知りたい)」問合せが32%減少、「返品特約」表示に関する意見目立つ

問合せ内容の上位項目は以下の通り。
1位:「企業の連絡先」(446件、前年比123.2%)
2位:「広告内容」(88件、前年比101.1%)
3位:「契約・解約」(72件、前年比130.9%)
4位:「信頼性・情報」(54件、前年比87.1%)
5位:「返品・交換」(44件、前年比72.1%)
6位:「商品取扱企業」(42件、前年比102.4%)

1位の「企業の連絡先(を知りたい)」では、会員企業が176件で23.2%増加。テレビ媒体を主体として販売を行っている企業への集中が見られた。
非会員企業では、270件で22.7%増加。外資系大手ネット通販企業の電話番号を問うものが54件となり、前年から3件の増加。健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業の連絡先を問う相談が複数社に渡って寄せられた。
「広告内容」「契約・解約」は、過半が消費生活センター経由の相談で、健康食品や化粧品の定期購入販売を行っている企業の「返品特約」の表示や解約の可能性について意見を問うものが多かった。

●商品別相談、定期購入トラブルが「健康食品」の7割弱

「通信販売に関する相談」 のうち商品が判明したもの (詐欺的サイトを除く) は3,051件だった。 上位10商品のうち、8商品が前年度を超える件数となった。
1位「健康食品」(657件、前年比161.0%)
前年同様1位だが、前年度408件から61.0%の大幅増。
1社当たり10件以上の相談が寄せられた企業は前年度7社に対し13社となり、そのうち12社が「定期購入トラブ ル」 に関するもので446件。
消費生活センターから見解を求められるケースも多く、114件を数えた。
2位「化粧品」(275件、前年比111.8%)
3位「医薬品(含部外品)・衛生用」(225件、前年比156.3%)
4位「婦人衣料品」(208件、前年比106.7%)
5位「冷暖房・家庭電気製品」(156件、前年比138.1%)
6位「バッグ(含財布)」(109件、前年比126.7%)

健康食品や化粧品の「定期購入」に関する相談は、2017年12月の特定商取引法の改正に伴う「特定商取引に関する法律施行規則」により、定期購入契約に関する表示が義務付けられ、2018年度は2017年度から3割以上の減少となっていました。
しかし、2019年度は再び大幅増加となっています。

JADMAによると、新たに、回数縛りのない「継続的な定期コース」(中止の申し出があるまで継続的に販売する方法)等を行う事業者が増え、その販売方法に対し、「定期購入であることに気が付かなかった」とする相談が増大したとしています。

前回の法改正では規制しきれない新たな手法による消費者トラブルの拡大が続く限り、更なる法規制は避けられないと思われます。

≪参考記事≫
・通販の定期購入契約で気を付けたい特商法の留意事項とは。購入手続き画面表示の具体例(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))

・強まる「定期購入」契約に関する監視の目。適格消費者団体、行政の動向

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。