定期購入利用時に困った経験している人は半数以上。事業者の対策は? (「定期購入型電子商取引に関するアンケート調査」 2017年12月20日)

ネット利用者の約13%が利用、その9割が満足しているネットショッピングの定期購入。前回の記事で紹介した「定期購入型電子商取引に関するアンケート調査(2017年12月20日 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)」(※)では、定期購入の満足度の高さが浮き彫りとなりました。

しかし、意図しない定期購入契約による消費者トラブルは急増しており、平成29年12月1日施行された「特定商取引に関する法律施行規則改正」につながっています。
上記調査においても、定期購入トラブルの原因となる「定期購入にするつもりなく注文している」人が1割程度いるという結果が出ています。

今回は、前回に引き続き上記調査より、消費者の意図しない定期購入契約につながる要因とトラブル防止に対する事業者の取り組み事例について取り上げます。

《調査項目》
意図せず定期購入型オンラインショッピングになっていた理由
定期購入型オンラインショッピングにおける自動更新の状況
定期購入型オンラインショッピングの解約条件等
定期購入型オンラインショッピングを注文する前に確認した事項
定期購入型オンラインショッピングを利用するにあたり困ったこと
困ったこと等が起きた場合の対処
定期購入型オンラインショッピング事業者の取組例


意図せず定期購入型オンラインショッピングになっていた理由
定期購入にするつもりなく注文していた人に、「そのつもりがなかったにも関わらず、定期購入になっていた理由について聞いた。
定期購入であることに気づかず定期購入となったものが7割。
「 『 無料サンプル』などの表現が目立ち、『 定期購入』の記載を見落としていたから」(38.0%)、「手続完了までに『 定期購入』 の記載がなかった」(32.0%)。
定期購入であることを認識していたものの、定期購入となったものが2割。
「無料サンプル」や「お試し」だけで解約しようと思っていたが、「解約条件を確認していなかったから」(14.0%)、「解約可能な期限内に解約申込みを忘れていたから」(6.0%)。
定期購入_意図せず理由png

定期購入型オンラインショッピングにおける自動更新の状況
直近に申し込んだ定期購入型オンラインショッピングの76.1%が自動更新されるものであった。なお、自動更新されるかどうかわからない者が14.9%である。

「酒類、飲料」、「ダイエット・健康食品関連」、「化粧品、美容品」の約8割が自動更新。
自動更新されない比率が比較的高いのは、「食品」( 21.4% )。
自動更新されるかどうかわからない比率は、「食品」( 17.9% )、「化粧品、美容品」(14.9%)、「ダイエット・健康食品関連」(13.3%)。
定期購入_自動更新状況png

定期購入型オンラインショッピングの解約条件等

直近に申し込んだ定期購入型オンラインショッピングについて、「違約金なしでいつでも解約可」(73.5%)。
「決められた回数の購入後であればいつでも解約可」(18.0%)。
「解約条件等を確認していない」(4.5%)。
定期購入_解約条件png

定期購入型オンラインショッピングを注文する前に確認した事項

注文前に、価格面を半数以上が確認。
「価格、割引条件」(73.3%)、「送料」(62.0%)、「支払方法」(50.6%)
事業者や商品の口コミ、評判は若い年代ほど確認している。
解約、規約関連情報を確認している者は半数以下。
「解約条件」(43.1%)、「解約方法」(35.3%)、「取引規約、利用規約等」(16.5%)
「特に確認しなかった」者の比率は4.9%で、上の年代ほど高い傾向がみられる。
定期購入_確認事項

定期購入型オンラインショッピングを利用するにあたり困ったこと
定期購入型オンラインショッピングの利用時に、何らかの困ったこと等を経験しているのは52.7%。年代別では、20代(60.8%)、30代(55.9%)の経験率が比較的高い。
困ったこと等の内容では多いのは、「使いきれず、届いた商品が溜まった」(35.5%)、「解約のし忘れ」(10.2%)、「届いた商品が自分にあわなかった」(9.0%)。
「すぐに解約できなかった」(4.7%)「解約の電話がつながりにくかった」(3.1%)「解約条件等の説明を探すことが難しかった」(2.9%)といったトラブルは、若い世代の方が多くなっている。
定期購入_困ったこと

《主な事例》
●意図せず定期購入となった

・1回目だけ安く購入でき試したところ、5ヶ月間は解約出来ない事が小さな字で書いてあり、仕方なく5ヶ月続けた。(女性、60歳以上)
・もともと定期コースで契約したつもりはなかったにも関わらず気がつけば定期コースの契約になっていた。おそらく初回割引お試し品の利用契約でそうなっていたかもしれないが、事前説明や確認の連絡がなかったことにやや不満と困ったと感じた。(男性、20代)
●届いた商品が、使いきれずに余ってしまう
・使用しきれていないのにその都度届くため、困った。 返品の方法も手間がかかり大変だった。(男性、20代)
・業者が推薦している使用回数を試してみたが、効果がありすぎ(乳酸菌入り食品)使用回数を減らしてしまった為、在庫となってしまった。(男性、60歳以上)
・お届け間隔が、最長にしても短い場合がある。もっと間隔を空けられると良い。(女性、30代)
●提供された商品が合わなかった
・化粧品を注文したがそれを1カ月使ったら肌に合わないことが判明した。しかし、3回以上使わないと解約できないので他人にあげて自分では使わなかった。(女性、60歳以上)
●事業者がセレクトした商品への不満
・お任せにしたら同じ色柄のものが複数枚届いたことがあった。(女性、60歳以上)
・ 服などファッションについて、デザインが選べないのはある程度は許容するものの、サンプル写真にないデザインの商品が送られてくるのは不満。「この中のどれか」という文言がある以上、売れ残ったり返品された商品ばかり送ってこないでほしい。(女性、50代)
●在庫切れ・値段の変更
・デザインの違うTシャツが5回届く予定だったのに、売り切れて2回しか届かなかった。(女性、40代)
・自動で価格が上がったのに気付かず、購入手続きが自動的にとられてしまったことがある。(男性、30代)
●事業者への解約等の連絡
・コールセンターがつながりにくく、解約するチャンスがなかなかない状態でズルズルと更新されてしまった。(男性、40代)
・通話でしか解約が出来ないのは、遠慮が出るし気軽に止められない。(女性、40代)
・ 解約しようとメールをしたがなかなか返事が来ず、結局もう一ヶ月分購入することになった。(女性、50代)

困ったこと等が起きた場合の対処
困ったことが起こった際に、76.6%が何らかの対処をしており、50代では86.3%となっている。
一方、20~40代の1/4~1/3は何も対処していない。
対処内容では、「休止」(25.3%)、「商品が届くサイクルを変更」(24.9%)が多い。解約については、「契約期間満了後に解約」(20.4%)、「違約金なしで中途解約を要求」(10.8%)、「苦情」(9.7%)、「返品」(4.1%)、「違約金を支払って中途解約」(1.9%)であった。
行政機関等への相談は、1.5%以下となっている。
定期購入_困ったこと対処

定期購入型オンラインショッピング事業者の取組例
●通常購入と誤認させないための表示等の工夫

・消費者が注目しやすい割引価格などの表記の近くで目に入りやすいところに定期購入に関する注書きを表示している。定期購入に関する注書きでは「○○の場合は○○」と表記後、再度、「○○でない場合は○○」と言い方を変えた説明も追加している。
・通常購入用のボタンを目立たせた上で、定期購入用ボタンをその下に別途設置(付属的な見た目としている)。
・通常購入と定期購入とで購入カートを別にし、異なる注文プロセスとしている。定期購入用のプロセスには発送頻度を選択するステップがあるため、間違って定期購入カートを利用してしまった場合にも、途中で気がつけるようになっている。
・商品説明ページに、通常購入用のボタンと定期購入用のボタンを別に設置している。定期購入用のボタンをクリックすると、定期購入に関する説明ページが必ず表示され、説明ページを経由しないと購入できないようになっている。続く注文プロセスでも、注文確認画面、規約への同意画面のステップで定期購入である旨の確認が行われ、注文確定後に送られる確認メールにも定期購入である旨を記述している。

●定期購入の契約条件、利用規約等の表示
・事業者側の目線ではなく消費者目線でサイトを作るようにしている。利用者からの声を可能な限り反映させ、表示・説明を充実させることで問合せを減らしている。
・商品選択画面で商品画像上にマウスをおくと、自動更新、解約条件、支払方法等の情報をポップアップさせて確認可能にしている。
・注文プロセスの要所、要所で確認ができるよう、定期購入に関して必要となる情報の表示、関連ページへのリンク設定をしている。
・利用規約等に消費者がアクセスしやすいよう、各ページからリンクを設定している。
・FAQを充実させて提供。トップ画面の見やすいところからFAQにアクセスできるようにしている。
・ホームページ上に加え、アプリのダウンロード時、アプリ内での有料会員登録時の二段階で契約条件を説明している。

●自動更新時期の通知等
・次回提供日の10日前に確認メールを送信している。(提供日の7日前までに手続きすることで次回提供前での解約が可能となる)
・メール・アプリのプッシュ通知・マイページ上のアラート等で、契約の自動更新の時期を事前に通知している。
– マイページ上で、契約更新日を確認可能にしている。
・商品レンタルを継続している利用者に対して、返却し忘れを防ぐため、リマインドを兼ねたお知らせを実施している。

●(提供される物品を事業者が選定する場合)商品・サービスの質、顧客の満足度の確保
・消費者が支払う価格に対して約数倍の価値となる商品を選定して提供している。
・送られて来た商品への納得感が得られるよう、何故その商品を選定したのかなどのメッセージを添えて商品を提供している。
・消費者が入力したプロファイルや商品へのアンケート回答等を基に、次回提供する商品を選定し、ミスマッチを防止している。
・事業者側の商品選定者は、トレーニングを経てから業務に従事。商品選定者に対する消費者の評価等をもとに、評価が芳しくない選定者には再度、トレーニング等を実施している。
・提供する商品に問題がないか、販売事業者が事前に確認してから提供している。
・ブランド等により服のサイズが異なるため、全商品についてサイズを測り直している。

●その他
・初回提供時に、提供日の確認方法、変更方法、問合せ窓口等の説明を含む定期購入に関するガイドブックを提供している。
・一括払い契約の満了時に、契約更新手続きをしなかった場合には、毎月払いの契約に変更して更新している。
・納品書の色を通常購入と定期購入で変え、定期購入用の納品書には解約条件等の注意事項や次回提供日等を記載している。
・サービスを確認した上で継続して利用するか検討できるよう、初月無料で提供。定期購入との認識がなかったとしても最初の1か月で解約できるようにしている。

調査の結果より、オンラインショッピングで定期購入を利用時に、何らかの困ったことを経験している人が半数以上いることが分かりました。
使いきれず、届いた商品が溜まってしまったというケースが3割強で、そういった場合はお届け休止やサイクル変更等の対処でクレームやトラブルにつながることは少ないと考えられます。
しかし、スムーズな解約ができなかったり、商品への不満、意図せず定期購入となった場合は苦情や返品、最終的には解約につながると考えられ、延べにして47%がそのような対処を行っています。
また、注文時に解約、規約関連情報を確認していない人が半数以上という結果となっています。
何らかの形でお客様の不満につながってしまうと、売上を失うだけでなく、お客様との信頼関係まで損なってしまいます。自社のお客様や商材、サービス内容にマッチした顧客サービス対応について、検討されてはいかがでしょうか。
フィデスがサポートいたします。

(※)
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定期購入型電子商取引の動向整理
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/adjustments_index_8_180111_0002.pdf
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株) 2017年12月20日)
定期購入型電子商取引に関するアンケート調査 調査概要
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/adjustments_index_8_180111_0003.pdf
調査期間: 2017年11月13日(月)~11月14日(火)
調査方法: Webアンケート
調査対象:20歳以上のインターネット利用者
【スクリーニング調査】一般消費者
【本調査】過去1年間に定期的に物品が届けられる定期購入型電子商取引を利用した者
割付条件:
性別(男性・女性)×年代(20代、30代、40代、50代、60歳以上)で
均等に割付(各51人)
有効回答数:【スクリーニング調査】10,000人 【本調査】510人
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≪関連記事≫
・定期購入、ネット利用者の約13%が利用、その9割が満足。「意図せず定期購入となった」は1割 (「定期購入型電子商取引に関するアンケート調査」 2017年12月20日)

・通販の定期購入契約で気を付けたい特商法の留意事項とは。購入手続き画面表示の具体例(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))

・健康食品や化粧品等、通販で定期購入契約を行う際の広告に、販売条件の明記が義務付けに(特定商取引に関する法律施行規則の一部を改正する命令(平成29年6月30日公布))

・「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」改訂。お試し価格を設定して定期購入契約を行う際の注意ポイント(経済産業省 平成29年6月)

・消費者保護の更なる強化。特商法・消契法の改正案閣議決定(平成28年3月4日)

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このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。