「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

消費者契約法や特定商取引法改正の動きが活発ですが、一般消費者における、消費者契約の保護制度や「特定適格消費者団体」は、果たしてどの程度認知されているのでしょうか。

消費者庁では、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より「消費者意識基本調査」を実施しています。平成28年度調査より、日頃の消費生活での意識や行動、消費者事故・トラブルの経験、消費者契約等の項目をピックアップしてご紹介します。

●商品やサービスを選ぶときに意識すること
●消費者として心掛けている行動
●購入商品や利用サービスでの消費者被害の経験
●被害を受けた商品・サービスの販売・購入形態
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出の有無
●被害を受けた商品・サービスについての相談又は申し出をした相手
●消費者庁の取組で知っていること
●消費者契約についての認知度
●「特定適格消費者団体」の認知度


●商品・サービス選定情報は、身近な人からが5割、次いでネット
商品やサービスを選ぶときの知識・情報を得る機会について、上位項目は「「家族、友人、知人からの情報」(52.4%)、「インターネットサイト」(47.7%)、「チラシ・パンフレット」(44.6%)、「販売員の説明」(41.1%)の順となっている。
「SNS」は8.1%となった。

●表示確認や個人情報管理を積極的に心がけている
消費者として心掛けている行動について、「心掛けている(『かなり心掛けている』+『ある程度心掛けている』)の割合でみた。
「表示や説明を十分確認し、その内容を理解した上で商品やサービスを選択する」(68.3%)が最も高く、次いで「個人情報の管理について理解し、適切な行動をとる」(58.8%)、「環境に配慮した商品やサービスを選択する」(48.0%)、「商品やサービスについて問題があれば、事業者に申立てを行う」(44.9%)。
前回の調査結果(平成27年11月調査)と比較すると(ア)~(カ)いずれの項目も、「心掛けている」の割合が減少した。

●商品や利用したサービスでのトラブル経験は8%
この1年間に購入した商品や利用したサービスについて、何らかの消費者被害・トラブルを受けた経験があると回答している人は7.7%(429人)で前回10.9%(712人)から減少した。
内容別に前回調査と比較すると、「商品の機能、品質やサービスの質が期待よりかなり劣っていた」(8.2%→5.9%)は 2.3 ポイント、「表示・広告と実際の商品・サービスの内容がかなり違っていた」(4.8%→3.2%)は 1.6 ポイント、「思っていたよりかなり高い金額を請求された」(2.7%→1.0%)は 1.7 ポイント、「契約・解約時のトラブルにより被害に遭った」(1.2%→0.9%)は0.3ポイント、「けが、病気をする等、安全性や衛生面に問題があった」(1.8%→0.8%)は 1.0 ポイントそれぞれ減少した。


●被害を受けた販売形態、「通信販売」46%、13ポイント増

被害事例数489件を販売・購入形態別に分けたところ、「通信販売(インターネット取引を含む。)」の割合が 45.6%と最も高く、次いで「店舗」(41.5%)となっている。
前回の調査結果と比較して、「通信販売(インターネット取引を含む。)」(32.6%→45.6%)が 13.0ポイント増加、「店舗」(53.0%→41.5%)は 11.5 ポイント減少し、販売・購入形態の首位が入れ替わった。

●トラブル経験者の内、「相談・申出」した人は55%
相談又は申し出の有無別では、「した」の割合が 55.2%、「誰にもしていない」が37.6%となっている。
前回の調査結果と比較して、「した」(51.7%→55.2%)が3.5ポイント増加した。

消費者庁の取り組み認知 (H28年度 消費者意識調査)

●トラブル「相談・申出」先トップは「商品やサービスの提供元であるメーカー等の事業者」
消費者被害・トラブルについて「相談又は申し出をした相手」は、「商品やサービスの提供元であるメーカー等の事業者」が41.9%と最多。次いで、「商品・サービスの勧誘や販売を行う販売店、代理店等」(35.2%)「家族、知人、同僚等の身近な人」(33.3%)、の順となっている。
「市区町村や消費生活センター等の行政機関の相談窓口」の割合は7.0%にとどまる。
前回の調査結果と比較してみると、「メーカー等の事業者」(46.3%→41.9%)が4.4ポイント減少、「販売店、代理店等」(32.0%→35.2%)が3.2ポイント増加した。


●消費者庁の取り組み、消費者契約に関する制度や消費者団体による訴訟制度の認知度は約3割

消費者庁の各取組のうち知っているものは、「悪質商法等の消費者の財産に関わる被害についての情報発信」が 41.1%、「食品表示ルールの整備」が38.4%、「偽装表示や誇大広告等、商品やサービスについての不当な表示の規制」が36.3%。
前回の調査結果と比較すると、認知者の割合が減少している項目が多い。
減少幅が大きいのは、上位 7 項目の中では、「偽装表示や誇大広告等、商品やサービスについての不当な表示の規制」(39.7%→36.3%)は 3.4ポイント、「消費者の生命・身体に関する事故の原因調査」(31.0%→25.7%)は 5.3 ポイント減少。
一方、増加したのは「消費者の利益を守るための制度作り(消費者契約に関する制度や消費者団体による訴訟制度等)」(26.8%→28.4%)が 1.6 ポイント、「消費者教育や消費生活に関する普及啓発」(14.8%→15.9%)が 1.1 ポイント増加している。

●「クーリング・オフ制度」の認知度9割、「消費者の利益を害する不当な契約条項の無効」の認知度は2割
消費者契約についての認知度で最も高かったのは、「訪問販売や訪問購入、電話勧誘販売などによって結んだ契約に対しては、契約から一定の期間内であれば契約を解除できる『クーリング・オフ』という制度があること」(90.4%)だった。次いで「未成年者が契約をするには、原則として、保護者の同意が必要で、保護者の同意なく結ばれた契約は、取り消すことができること」(68.8%)。「事業者が事実と異なることを告げるなどの不適切な勧誘を行い、それによって消費者が誤認・困惑して契約した場合には、契約を取り消すことができること」(54.3%)。
一方、「事業者の損害賠償責任をどのような場合でも一切免除するなどの消費者の利益を害する不当な契約条項は、無効となること」は「知らなかった」と答えた人の割合が 78.6%と高かった。

●「特定適格消費者団体」の認知度は13%
「特定適格消費者団体」の認知状況について、「名前も、そのような制度のことも知ってい
る」(1.6%)、「名前は聞いたことがあるが、そのような制度のことは知らない」が(5.1%)、「そのような制度の事は知っているが、名前は知らない」(6.6%)で、これらを合わせた「名前か制度のいずれかを知っている」人は13.3%だった。

平成28年度調査結果では、何らかの消費者被害・トラブルを受けた経験者の割合が減少しました。
他方、消費者契約に関する制度の認知度では、制度によって認知度のばらつきが見られ、最近動きが活発な「特定適格消費者団体」の認知度は13%に留まっています。今後の「消費者教育や消費生活に関する普及啓発」が進むことで、更に被害が減少していくことに期待します。

(※)
消費者意識基本調査(消費者庁 平成28年度実施)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002/

調 査 項 目
(1)「生活全般や消費生活における意識や行動」について
(2)「消費者事故・トラブル」について
(3)「消費者政策への評価」について
(4)「消費者契約」について
(5)「食品の表示」について
調査対象
母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
標本数:10,000 人
地点数:400 地点(376 市区町村)
抽出法:層化2段無作為抽出法
有効回収数(率):6,009人(60.1%)
調査時期  平成28年11月4日~11月30日
調査方法  訪問留置・訪問回収法

≪関連記事≫
・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。