ステマが違法になったことの認知度は27%。インフルエンサーの広告であることの明示は信頼性あり(令和5年度 消費者意識基本調査)

2023年10月1日に施行された景品表示法第5条第3号(ステルスマーケティング告示)の初の行政処分が、6月6日、クリニックが提供するサービスについてのグーグルマップの口コミ投稿に対して出されましたが、消費者のステマ規制に対する認知度やPR表記に対する受け止めはどのような状況でしょうか。

・医療法人社団祐真会、Googleマップの口コミ投稿にステマ告示初の措置命令 (消費者庁 2024年6月7日)

ステマ規制施行から1か月後の2023年11月に消費者庁が実施した「令和5年度 消費者意識基本調査」によると、ステマが違法になったことの認知度は27%、インフルエンサー等の投稿で「PR」等の表示を見た経験は44%となっていました。

ステマだけでなく、インターネットでの商品・サービスの予約や購入においては様々なデジタルマーケティングが展開され、消費者トラブルが問題となるケースが危惧されています。
「令和5年度消費者意識基本調査」より、インターネット上の口コミや評価、ステマ、ダークパターン、AIによる個人向け表示に対する意識や経験に関する項目をピックアップしてご紹介します。

「情報の利用に関する意識や行動」について

  • 商品・サービス購入時に重視する情報源
  • インターネット上の口コミや評価
  • ステルスマーケティングが違法となったことを知っているか
  • インフルエンサー等の投稿で「PR」等の表示を見た経験
  • 広告であることを明示する投稿者は信頼できるか
  • インターネットで購入する際の意識や行動
  • 自分に合わせた情報が優先的に表示されることを知っているか
  • 表示される情報に対する考え方や印象
  • 表示された情報を判別できるか
  • 情報を見分けられるようにしてほしいか

インターネット記事やブログを商品・サービス購入時の情報源として重視する人は3割

商品・サービス購入時の情報源(複数回答)と、重視する情報源(複数回答最大3つまで)の上位3項目は次の通り。
テレビ・ラジオ:情報源1位(74.0%)、重視する情報源3位(27.2%)
家族・友人・知人:情報源2位(66.5%)、重視する情報源1位(36.1%)
インターネット記事やブログ:情報源3位(61.3%)、重視する情報源2位(29.9%)

インターネット上の口コミや評価が高い商品を選ぶ人は7割

パソコンやスマートフォン等でインターネットを利用している(『ほとんど毎日利用している』+『毎日ではないが定期的に利用している』+『時々利用している』)」の割合は80.1%。

インターネットを利用している人で、インターネット上の口コミや評価について「当てはまる((『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』))の割合の高い上位3項目は次の通り。
1. インターネット上の口コミや評価が高い商品を選ぶ:70.1%
2. 評価の点数が高くても、否定的な口コミを見て購入をためらうことがある:63.9%
3. レビュー(購入者の評価)の件数が多い商品を選ぶ:50.6%

一方、「当てはまらない(『あまり当てはまらない』+『ほとんど・全く当てはまらない』)」ことの割合の高い上位項目は次の通り。
1. 信頼する著名人やインフルエンサーが勧めた商品であれば信用できる:49.8%
2. 評価の点数が低くても、好意的な口コミを見て購入を決めることがある:35.5%

商品購入において、ネット上の口コミや評価を参考にする傾向が強く表れていると言えますが、著名人やインフルエンサーのお勧めに対する信頼は低いようです。

ステマが違法になったことの認知度は27%

インターネットを利用している人で、ステルスマーケティングが違法となったことを「知っている」の割合は27.1%。「知らなかった」の割合が65.3%となっている。
年齢層別の「知っている」の割合は、「30~39歳」(36.5%)、「40~49歳」(31.8%)、「20~29歳」(31.6%)の順となっている。

インフルエンサー等の投稿でPR」等の表示を見た経験について、「見たことがある」の割合は43.7%。「見たことはない」の割合が17.7%、「分からない・覚えていない」の割合が30.7%となっている。
性別では、「見たことがある」の割合は「男性」(39.5%)、「女性」(47.9%)。
年齢層別では、「見たことがある」の割合は、「20~29歳」(78.1%)、「15~19歳」(72.6%)、「30~39歳」(63.6%)の順となっている。

ステマが違法になったことの認知度は3割に届いていませんが、「PR」等の表示は30代以下の年代は目にしている人の割合が多いと言えます。

自身の投稿が広告であることの明示は信頼性につながっている

インフルエンサー等の投稿で「PR」等の表示を「見たことがある」と回答した人で、自身の投稿が広告であることを明示する投稿者は明示しない投稿者に比べて信頼できるかについて、「そう思う(『とてもそう思う』+『ある程度そう思う』)」の割合は63.0%。

一方、「そう思わない(『あまりそう思わない』+『ほとんど・全くそう思わない』)」の割合は13.9%。
性別では、「そう思う」の割合は「男性」(59.0%)、「女性」(66.2%)。
年齢層別では、「そう思う」の割合は、「20~29歳」(77.7%)、「30~39歳」(70.2%)「15~19歳」(69.5%)、の順となっている。

自身の投稿が広告であることを明示する投稿者に対する信頼性は、評価されていると言えるでしょう。

約7割が「簡単に登録ができるのに、解約が複雑で難しい」と感じている

インターネットで商品・サービスの購入する際の意識や行動について次の8項目について聞いた。
《選択項目》
(ア) 「●人が閲覧中」や「●人が購入済み」の表示を見ると、購入したくなる
(イ) 「残りわずか」等、売り切れ間近のような表示を見ると、購入を急がなければいけないと感じる
(ウ) 割引等の特典の有効期限をカウントダウンで表示するタイマーを見ると、購入を急がなければいけないと感じる
(エ) 勝手に不要な商品やオプションが入っていたり、定期購入になっていても気づかない可能性がある
(オ) 商品購入の際に、取引に直接関係のない情報まで入力を求められたら、仕方なく情報を入力する
(カ) 買う予定がなかった商品でも、購入を促すポップアップ広告が何度も出たら、購買意欲が刺激される
(キ) 簡単に登録ができるのに、解約が複雑で難しいと感じることがある
(ク) 解約方法が電話限りなのに、電話がつながらないことがある

「当てはまる((『とても当てはまる』+ある程度当てはまる』))の割合の高い上位3項目は次の通り。
1. 簡単に登録ができるのに、解約が複雑で難しいと感じることがある:68.8%
2. 「残りわずか」等、売り切れ間近のような表示を見ると、購入を急がなければいけないと感じる:46.3%
3. 解約方法が電話限りなのに、つながらないことがある:42.6%

一方、『ほとんど・全く当てはまらない』の割合の高い上位項目は次の通り。
1. 買う予定がなかった商品でも、購入を促すポップアップ広告が何度も出たら、購買意欲が刺激される:75.0%
2. 「●人が閲覧中」や「●人が購入済み」の表示を見ると、購入したくなる:64.9%
3. 商品購入の際に、取引に直接関係のない情報まで入力を求められたら、仕方なく情報を入力する:56.8%

これらの項目はいわゆる「ダークパターン」と呼ばれる手法です。
ダークパターンとは、一般的に、消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのウェブデザインなどを指す、とされています。これらの表示で購入などのアクションに誘引される表示とそうでない表示があることが示されました。

4人に3人が、ネット上で自分に合わせた情報が優先的に表示されることを知っている

インターネットを利用している人で、自分に合わせた情報が優先的に表示されることを「知っている」の割合は76.4%。「知らなかった」の割合が19.3%となっている。
自分に合わせた情報が優先的に表示されることを「知っている」と回答した人に、表示される情報に対する考え方や印象について、「情報管理」、「情報の個別化」、「情報の公平性」の観点からに関する11項目について聞いた。
※(%)は「当てはまる((『とても当てはまる』+『ある程度当てはまる』))の割合。

情報管理
「自分の情報がどこまでAIに使われるかは自分で決めたいと思う」(84.1%)
「AIの活用のために、必要以上の情報を収集されていると感じる(位置情報、履歴、趣味・嗜好等)」(77.5%)
「AIの活用は、個人情報の漏洩につながる気がする」(70.4%)

情報の個別化
「自分に適した情報が表示されていると感じる」(72.0%)
「自分が求めていない情報が表示されていると感じる」(66.1%)
「『おすすめ』が表示される機能は便利だと感じる」(41.3%)
「『おすすめ』と表示されたものを優先的に見る」(32.5%)

情報の公平性
「自分に合わせた情報ではなく、事業者の都合で提案をされていると感じたことがある」69.4%)
「AIが提案する内容は、偏見や差別のないものだと思う」(24.7%)
「利用者ごとに懸賞やゲーム等の抽選確率を、操作されていると感じたことがある」(39.0%)
「利用者ごとに商品の価格が操作されていると感じたことがある」(30.9%)

情報管理の側面では、AI活用における個人情報の取り扱いについて、強く不満や不安を感じていることが読み取れます。
情報の個別化においては、自分に適した情報が表示されていると感じる半面、自分が求めていない情報が表示されていると感じる人も一定割合おり、「おすすめ」表示に対して利便性を感じるのは4割程度にとどまっています。
情報の公平性の側面では、事業者都合で提案されていたり、偏見や差別的な内容だと感じている人が6~7割となっています。

自分に合わせた情報の優先的表示について見分けられるようにしてほしい

自分に合わせた情報が優先的に表示されることを「知っている」と回答した人で、それを判別できるか聞いたところ、「分かる(『分かる』+『ある程度分かる』)」の割合は84.4%。「分からない」の割合は13.7%となっている。
また、それを見分けられるようにしてほしいと「感じる」の割合が65.7%、「感じない」の割合が28.2%となっている。

自分に合わせた情報の優先的表示について理解している人は、そのことを概ね判別できるものの、より明瞭に見分けられることを望んでいると言えます。


「消費者意識基本調査」は、消費者問題の現状や求められる政策ニーズを把握し、消費者政策の企画立案にいかすことを目的に、平成24年度より毎年継続的に実施されています。
令和5年度調査では令和4年度に引き続き、ステマ関連やダークパターン、デジタル広告に対する消費者意識に関する設問が多く盛り込まれています。
ダークパターン対策を含めデジタル広告に対する、今後の「消費者法制」見直しの基礎データとなることが予測されます。
ダークパターンの類型と利用者がどのような不利益をこうむるのか、ダークパターンに対する行政の取り組みについて、以下の記事にまとめました。
・「ダークパターン」に打つ手なし?デジタル社会での「消費者法制」の抜本的見直しに向けて

消費者の商品購入における意識やSNS利用状況の記事も併せてご確認ください。
・効果的な施策はポイントやクーポン。ターゲティング広告には警戒。ダークパターンも要注意(令和4年度 消費者意識基本調査)

消費者の商品購入における意識やSNS利用状況の記事も併せてご確認ください。
・見たことのあるSNS広告、「大幅値下げをうたうセール広告」が最多。違法広告に注意(令和3年度 消費者意識基本調査)

(※)
消費者意識基本調査(消費者庁 令和5年度実施)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_002
調 査 項 目
(1)「生活全般における意識や行動」について
(2)「情報の利用に関する意識や行動」について
(3)「デジタルプラットフォームでの商品・サービスの利用」について
(4)「消費生活における意識や行動」について
(5)「消費者事故・トラブル」について調査対象
母集団:全国の満 15 歳以上の日本国籍を有する者
標本数:10,000 人
地点数:400 地点(374市区町村)
抽出法:層化2段無作為抽出法
調査時期  令和5年11月1日~11月15日
調査方法  郵送配布、郵送回収(WEB 回答併用)
有効回収数(率):5,544人(55.4%)

≪関連記事≫
・6割強の人が購入・契約に不安。被害を受けたサイレントカスタマーは46%(令和3年度 消費者意識基本調査)

・消費者被害を受けた販売形態の5割がネット通販。「相談・申出」先、36%が「販売店、代理店等」(令和2年度 消費者意識基本調査)

・消費者意識、4人に3人が表示確認を心掛け、現物を見て購入する人は68%(令和元年度 消費者意識基本調査)

・8割の消費者が表示確認を心掛け、約6割が「偽装・誇大表示」に高い関心(平成30年度 消費者意識基本調査)

・「クーリング・オフ制度」の認知度9割。「特定適格消費者団体」の認知度は13%(平成28年度 消費者意識基本調査)

・消費生活の心がけ「表示や説明の確認」74%、「個人情報管理」57%。約9割が個人情報漏えい不安 (平成25年度 消費者意識基本調査)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。