日健栄協 機能性表示食品広告審査会、3割の商品に違反のおそれ。求められる法改正への速やかな対応(日健栄協 第7回機能性表示食品広告審査会)

2015 年の制度施行以来、届出件数が9000件を超えるまでに拡大を続ける機能性表示食品市場ですが、2024年3月に発生した「紅麹」問題で、その信頼性が大きく揺らいでいます。
2024年11月に公表された、消費者庁による令和5年度の保健機能食品(特別用途食品、特定保健用食品、機能性表示食品)の栄養成分、関与成分、機能性関与成分に関する買上調査では、機能性表示食品2品について、申請等資料に記載された含有量を下回り、食品表示法違反の疑いが報告されています。
・令和5年度保健機能食品の買上調査、機能性表示食品2品に指導。令和7年度は調査対象件数大幅拡充へ

一方、機能性表示食品の広告表現に関しては、(公財) 日本健康・栄養食品協会(日健栄協)が2月20日に、2024年に実施した第7回広告審査会の結果を公表しました。
本審査会は、2018年度より機能性表示食品の広告の適正化と向上を図ることを目的として「機能性表示食品広告審査会」(※1)を年1回開催しています。
第7回審査会の審査では、審査対象となった広告36 件中12件に違反のおそれが指摘されています。
審査対象広告は企業に素材提供を依頼し、以下の審査指針に基づき、当該機能性表示食品の「届出表示」及び審査指針との適合性の観点から審査しています。

(※1)
————————————–
機能性表示食品広告審査会の設置について
http://www.jhnfa.org/k11-1.pdf
機能性表示食品広告審査会 審査結果
(公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
https://www.jhnfa.org/kinou11.html
————————————–

【審査指針】
・健康増進法等の関連法規
・「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(健食留意事項)(※2)
・「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等
関する指針」(事後チェック指針)(※3)
・「『機能性表示食品』適正広告自主基準」(適正広告自主基準)(※4)

(※2)
健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(令和4年12月5日一部改定 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms214_221205_01.pdf
(※3)
「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)の策定について
(2020年3月24日 消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0001.pdf
(※4)
「『機能性表示食品』適正広告自主基準」
第1版:平成28年(2016年)4月25日 第2版:令和5年(2023年) 6月 5日
((一社)健康食品産業協議会 (公財)日本通信販売協会)
https://jaohfa.com/wp/wp-content/uploads/news/%E3%80%8C%E6%A9%9F%E8%83%BD%E6%80%A7%E8%A1%A8%E7%A4%BA%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%80%8D%E9%81%A9%E6%AD%A3%E5%BA%83%E5%91%8A%E8%87%AA%E4%B8%BB%E5%9F%BA%E6%BA%96%E7%AC%AC2%E7%89%88%E6%96%B0%E6%97%A7%E6%AF%94%E8%BC%83%E8%A1%A8230605.pdf

審査委員会は、外部専門家(第三者委員)4名と協会会員企業のメンバーで構成された広告部会の代表(企業委員)3 名で構成されています。
第7回広告審査会の審査内容と機能性表示食品をめぐる業界自主規制、法規制動向について考察します。


「機能性表示食品広告審査会」 結果報告

【日時】
第7回:2024年12月9日(月) 13時~17時
【審査対象広告】
審査件数:36 件(内訳)動画 16 件、紙面媒体10件、Web (LP) 10 件
対象期間:2023 年12月1日~6月 30 日(7ヶ月間)
収集方法:企業に素材提供を依頼
【審査基準】
A 判定
・ 健康増進法等に抵触するもの、もしくは抵触するおそれのあるもの
・ 「事後チェック指針」「健食留意事項」、虚偽、機能性表示食品の届出範囲を超える表現など「適正広告自主基準」に著しく抵触(*)するもの
(*)著しく抵触:
・ 1つの広告の中に抵触する箇所が複数ある。
・ “疾病の治療に適している”、”病者に適している”など。
B 判定
・ 「事後チェック指針」「健食留意事項」「適正広告自主基準」に抵触するもの
C 判定
・ 「事後チェック指針」「健食留意事項」「適正広告自主基準」に抵触するおそれのあるもの
・ 消費者に誤認を与えるおそれのあるもの
【審査結果】
動画(VD):16件中「C」判定(5件)
紙面媒体(PM):10件中「B」判定(2件)
Web(LP):10件中「B」判定(2件)、「C」判定(3件)
会社数と商品数:「A」判定(0社0商品)、「B」判定(3社4商品)、「C」判定(5社7商品)

「B」判定:4件
機能性関与成分ではなく製品自体に機能があると誤認させる表現
国による評価・許可を受けたと誤認させる表現
必要な要件記載の不足
データの出典および選択理由の不足
「C」判定:8件
医薬品的効果効能と誤認させるおそれのある表現
機能性関与成分ではなく製品自体に機能があると誤認させる表現
届出表示の範囲を逸脱した機能を暗示させるおそれのある表現
機能性関与成分以外の成分に機能があると誤認させるおそれのある表現
効果の保証と誤認させるおそれのある表現
作用機序であるにもかかわらず届出された機能と誤認させるおそれのある表現
対象者の範囲を誤認させるおそれのある表現

届出表示の切り出し表現を審査基準に追加

前回の第6回審査会では、16社41商品の広告39 件中9件に違反のおそれがありました。今回は18社33商品の広告36 件中12件に違反のおそれがあり、悪化しています。
これまでの審査会で課題となっていた以下の事項が、今回の審査会より審査基準に盛り込まれ、審査が厳しくなった影響かもしれません。

  • 届出表示を一部切り出して表現することによる届出表示(内容)からの逸脱
  • 機能性の科学的根拠(「最終製品を用いたヒト試験」、「機能性関与成分の研究レビュー」)の区別

これは、業界自主ルールである「適正広告自主基準」が、2016年4月の公表から7年ぶりとなる2023年6月に第2版として改訂され、届出表示を切り出して(一部省略・簡略化等)強調する表現や、研究レビューを根拠としていることの明示等に関する留意事項が追加されたことによるものです。

(以下、追記事項抜粋。)
〇届出表示の一部を切り出して強調することで、医薬品的な効果効能表現になる場合(認知機能、生活習慣病関連の領域等)
 例)届出表示の内容が「血圧が高めの方の血圧を下げる機能」に対し、「高めの方の血圧を下げる」と切り出して強調する場合など。
例えば、補完用語(サポート、助ける、役立つ等)を付記するなどで医薬品的な効果効能表現を回避することが出来る。

〇届出表示に対象者や機能性を得られる条件が限定されるにも関わらず、過大な切り出し表現を行う場合
 例)届出表示における対象者のBMIが高めである、もしくは機能性が運動とともになど限定的な条件下で発揮されるにも関わらず、当該条件に言及せず切り出して強調する場合など。

〇届出表示の一部を切り出して強調することで、届出された機能性の範囲を逸脱する場合
例)
 ①届出表示の内容が「認知機能の一部である記憶力(日常生活で見聞きした言葉を覚え、思い出す力)を維持する機能」と限定されているにもかかわらず、「認知機能維持!」と表示する場合など。
 ②届出表示の内容のうち作用機序にあたる表示のみを切り出して、あたかも科学的根拠に基づく機能性であるかのように表示する場合など。

ⅱ)届出表示の科学的根拠が機能性関与成分に関する研究レビューの場合、以下の点が広告上視認性を持って表示されるよう留意する必要がある。
○訴求する機能性が機能性関与成分の機能であることを明示する。
○届出表示の「報告されています」を省略して表示する場合は、研究レビューを根拠としていることを明示する。

「機能性表示食品」適正広告自主基準(第2版)

2024年9月の食品表示基準の一部改正で、表示ルールがより厳格に

2023年6月に改訂された「適正広告自主基準」ですが、更なる改定が求められます。
2024年3月に発生した「紅麹」問題により、2024年9月に食品表示基準の一部改正が施行され、届出情報の表示方法も見直されました。
2024年8月30日に制定された「機能性表示食品の届出等に関するマニュアル」では、表示方法について内容そのものの変更ではなく、より厳格な表示ルールが科せられたと言えます。
変更となった表示方法の一つとして、「機能性関与成分及び機能性関与成分を含有する食品が有する機能性」の事項があります。
例えば、機能性関与成分に関する研究レビューによる届出商品のケースを見てみましょう。

改正前:
商品パッケージのキャッチコピーとして、届け出表示の一部を省略し「○○し、△△する」のような表示(左側イラスト)
改正後:
「(機能性関与成分名)には○○し、△△する機能があることが報告されています。」と、正確に記載する。
(イラスト表示例では変更点を分かりやすくするために赤字で書かれているが、必ずしも赤字で強調することは求められていない)

(消費者庁資料「機能性表示食品の今後について」より編集)

表示の切り替えについては、包材の切り替えなど、事業者の実行可能性を考慮して、2年間の経過措置が取られ、2026年9月1日までに実施することとなっています。
———-
機能性表示食品の届出等に関るマニュアルの制定及び質疑応答集の一部改正について
(令和6年8月30日 消費者庁)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/#guideline
————

エビデンスの妥当性は未だ審査されず。求められる業界自主ルールの速やかな対応

また、2020年実施された第3回審査会より今後の課題とされてきた届出表示のエビデンスの妥当性の確認については、本審査会でも未だ審査内容に盛り込まれていません。
2023年6月30日のさくらフォレストの措置命令事案では、届出表示の一部省略による届出表示の逸脱表示に加えて、届出表示そのものの裏付けとなる科学的根拠が合理性を欠いているとして不当表示認定されました。
この処分の問題に対して、審査会では届出表示のエビデンスの妥当性の確認は手付かずであり、逸脱表示においては、業界自主基準の改定は間に合わなかったと考えられます。
「紅麹」問題を受け、機能性表示食品制度の信頼性を高めるべく大きく法規定が見直される中、業界自主ルールも速やかに改正後の規定への対応が求められます。

《参考》
・さくらフォレストの機能性表示食品に景表法措置命令、届出表示の根拠認めず。同一根拠届出製品約90件も個別確認へ(消費者庁 2023年6月30日)

機能性表示食品の今後について(消費者庁 令和7年1月28日一部修正)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/assets/food_labeling_cms205_250128_01.pdf

≪関連記事≫

・日健栄協 機能性表示食品広告審査会、約2割の商品に違反のおそれ。届出表示の切り出し表現、エビデンスの妥当性、審査されず(日健栄協 第6回機能性表示食品広告審査会)

・日健栄協 機能性表示食品広告審査会、約15%の商品に違反のおそれ。届出ガイドライン改正で研究レビューの質向上へ (日健栄協 第4回・第5回機能性表示食品広告審査会)

・機能性表示食品広告48件中7件に違反の恐れあり。事後チェック指針への適合性は次回審査以降に (日健栄協 第3回機能性表示食品広告審査会)

・機能性表示食品広告44件中12件に違反の恐れあり。届出表示のエビデンスの妥当性確認は今後の課題(日健栄協 第2回機能性表示食品広告審査会)

・機能性表示食品 届出表示のエビデンスの妥当性 「客観的評価機関」としての公正競争規約に期待

・機能性表示食品の事後チェック指針案のパブコメ開始! 指針に対する消費者庁の思惑は?(消費者庁 2020年1月16日:公表)

・機能性表示食品の広告規制の透明化。消費者庁「事後チェック指針」公表へ

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。