機能性表示食品広告44件中12件に違反の恐れあり。届出表示のエビデンスの妥当性確認は今後の課題 (日健栄協 第2回機能性表示食品広告審査会)

2015 年4月に発足した機能性表示食品制度。
制度施行から5年を経た2020年4月末現在の届出件数は2,887件で、トクホの1074品目(2020年3月末現在)の倍以上となり市場に浸透してきました。

一方で、広告表示に関しては、2017 年には葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分とした機能性表示食品の販売事業者16社に対し 景品表示法に基づく措置命令が出されています。

そんな中、2013年度より「特定保健用食品広告審査会」を実施してきた公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(日健栄協)では、2018年度より機能性表示食品の広告の適正化と向上を図ることを目的として「機能性表示食品広告審査会」を設置しました。

今回、2019年11月に第2回審査会を実施し、審査結果を公表しています。(第1回審査会は非公表)
審査した44件の広告中12件で、審査指針に抵触するおそれがあると判定しました。

審査対象は、同協会会員企業が出稿した広告。
健康増進法等の関連法規、「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」(※1)および「『機能性表示食品』適正広告自主基準」(※2)を審査指針として、審査対象広告について、当該機能性表示食品の「届出表示」及び審査指針との適合性の観点から審査されています。
審査委員会は、外部専門家(第三者委員)4名と協会会員企業のメンバーで構成された広告部会の代表(企業委員)3 名で構成されています。

【日時】2019年11月26日(火) 13時00分~17時00分

【審査対象広告】
収集対象:2019年3月1日~同年5月31日(3ヶ月間)出稿分
収集方法:協会会員企業に提供依頼
収集件数:44件 (内訳:テレビ19件、新聞12件、雑誌2件、Web (LP) 11件)

【審査結果】
TV:19件中「C」判定(2件)
新聞:12件中「C」判定(3件)
雑誌:2件中「B」判定(1件)
Web(LP):11件中「B」判定(3件)、「C」判定(3件)
会社数と商品数:「B」判定(2社3商品)、「C」判定(5社8商品)

「A」判定:0件
健康増進法等に抵触するもの、もしくは抵触するおそれのあるもの。
消費者庁の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」)に著しく抵触(*)するもの。(*)著しく抵触:1つの広告の中に抵触する箇所が複数ある。
虚偽、機能性表示食品の届出範囲を超える表現など「『機能性表示品』適正広告自主基準」に著しく抵触するもの。

「B」判定:4件
「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」および「『機能性表示品』適正広告自主基準」に抵触するもの。
広告で使用するグラフの選択理由の記載が不適切な広告が審査指針に抵触していると判定された。

「C」判定:8件
「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」および「『機能性表示品』適正広告自主基準」に抵触するおそれのあるもの、および消費者に誤認を与えるおそれのあるもの。
届出表示の機能性の範囲を逸脱し、消費者に誤認を与えかねない表現等を含む広告が審査指針に抵触するおそれがあると判定された。

機能性表示食品広告審査会では、届出表示のエビデンスの妥当性の確認については今後の課題としています。
また、今年4月1日より運用開始された機能性表示食品の事後チェック指針(※3)については今回の審査指針には反映されていないため、審査基準の見直し、または、「『機能性表示食品』適正広告自主基準」の改訂が必要であるとしています。

機能性表示食品制度は、事業者の責任において、科学的根拠に応じた多岐にわたる機能性訴求が可能となる反面、多様な機能性を誤認なく適切に消費者に伝える必要があります。
事業者の裁量が大きい分、消費者にとってわかりやすい広告・表示が一層求められています。

(※1)
●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月 30 日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf

(※2)
「『機能性表示食品』適正広告自主基準」
((一社)健康食品産業協議会 (公財)日本通信販売協会 2016年4月)
https://www.jadma.or.jp/pdf/criteria_for_advertise.pdf

(※3)
「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の 透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)の策定について
(2020年3月24日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/about_foods_with_function_claims_200324_0001.pdf

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機能性表示食品広告審査会の設置について
http://www.jhnfa.org/k11-1.pdf

第2回 機能性表示食品広告審査会(2019年11月26日実施) 審査結果
(2020年3月16日 公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)
http://www.jhnfa.org/k11-5.pdf
————————————–

≪関連記事≫

・機能性表示食品の事後チェック指針案のパブコメ開始! 指針に対する消費者庁の思惑は?(消費者庁 2020年1月16日:公表)

・機能性表示食品の広告規制の透明化。消費者庁「事後チェック指針」公表へ

・トクホ広告117件の広告中11件に違反の恐れあり。トクホと機能性表示の棲み分け検討も (日健栄協 第9回 特定保健用食品広告審査会)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。