アフィリ規制、ステマ規制、令和5年景品表示法改正、大きく動く令和4年度の消費者庁の広告表示適正化への取組(消費者庁 2023年6月公表)

前回の記事では、消費者庁の「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※1)より、令和4年度の景表法違反状況を取り上げました。

・令和4年度景表法違反、国及び都道府県の措置命令件数は48件。「保健衛生品」が大幅減(消費者庁 2023年6月公表)

今回は、令和4年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
自社のコンプライアンス対策に、チェックしてみてください。

●健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行
●新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応
●その他の特徴的な処分事案
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が60件
●令和5年景品表示法改正
●アフィリエイト広告が「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」に
●ステマが景品表示法第5条第3号規定による不当表示に
●公正競争規約の変更
(チョコレート利用食品、タイヤ、自動車業、募集型企画旅行、ペットフード、酒類小売業、削りぶし、みそ、エキストラバージンオリーブオイル)
●都道府県との連携、協力関係強化

健康食品に対する景品表示法と健康増進法との一体的な執行

虚偽・誇大広告等に対しては、景品表示法及び健康増進法に基づく法執行が消費者庁の表示対策課食品表示対策室及びヘルスケア表示指導室において行われた。

・2022年12月5日に一部改訂を行った「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の周知に引き続き注力。
改定の要点:

  • 広告の実例を踏まえ、「健康保持増進効果等」の該当例について、「妊活」、「腸活」などの例示を追加。
  • アフィリエイト広告は、景品表示法上は広告主の表示とされるものであることを追記。
  • 前回の改定以降、多くの違反事例が蓄積されたことから事例を刷新した。

《関連記事》
・健食留意事項の一部改訂。違反表示事例が充実し、より明示的に(「健康食品に関する景品表示法および健康増進法上の留意事項」一部改訂 2022年12月5日)

・インターネット上で特定保健用食品及び機能性表示食品の虚偽・誇大広告の監視
健康増進法第65条第1項(誇大広告の禁止)の規定に違反するおそれのある804事業者に対して、表示の改善を要請した。

・令和4年度は、健康食品に対して景品表示法措置命令8件(前年度2件)のほか、健康増進法第65条第1項項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある事案について12件(前年度20件)の指導を行った。

●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/161121premiums_2.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(一部改定 令和4年12月5日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms214_221205_01.pdf

新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応

・続く、新型コロナウイルスへの効果等を標ぼうする表示の適正化への取り組み
消毒、除菌等に対する消費者の関心が依然として高い中、新型コロナウイルスの感染予防効果や消毒、除菌等の効果に関する不当表示について、計4件の措置命令を行った。
《関連記事》
・クレベリン「置き型」にも景表法措置命令。空間除菌効果表示の合理的根拠、消費者庁に軍配
(消費者庁 2022年4月15日)

・山田養蜂場、ビタミンDと亜鉛サプリのコロナ予防効果表示に景表法措置命令。プレスリリースの「表示」該当性 (消費者庁 2022年9月9日)
・免研アソシエイツ協会、コロナ予防効果をうたった健康食品に3社目の景表法措置命令。食品表示法でも処分(消費者庁 2022年11月18日)

・新型コロナウイルスの抗原定性検査キットの購入の注意喚起
新型コロナウイルスの一般用抗原定性検査キットの薬機法上の製造販売承認が得られたことを踏まえ、新型コロナウイルスの抗原定性検査キットの購入における注意点(令和3年10月 厚生労働省と合同公表)について、令和4年9月に見直し、消費者に対する注意喚起を行った。
《関連記事》
・第一類医薬品の新型コロナ抗原検査キットのネット販売解禁。販売時の留意点は?「医療用」、「研究用」の扱いは?

その他の特徴的な処分事案

・持続可能な開発目標(SDGs)関連
プラスチック製品の生分解性能に関する不当表示について、計10件の措置命令を行った。
《関連記事》
・樹脂製品の環境配慮の「生分解性」表示に景表法措置命令。エアガン用BB弾、ごみ袋、ストロー、カップ、釣り用疑似餌など10社一斉処分(消費者庁 2022年12月23日)

・No.1表示
いわゆるナンバーワン表示に関する不当表示について、計2件の措置命令を行った。
《関連記事》
・エステのPMKメディカルラボ、不適正な「満足度1位」表示に景表法措置命令。(消費者庁 2022年6月15日)
・オンライン個別学習指導のバンザン、不適正な「満足度1位」と期間限定キャンペーンに景表法措置命令。(消費者庁 2023年1月12日)

事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が60件

不当表示等の発生を防止するために、事業者が講ずべき必要な体制の整備その他の必要な措置について、消費者庁は必要な指導及び助言、勧告をすることができる(景品表示法第27条、第28条第1項)。
勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。(第28条第2項)
令和4年度は「指導及び助言」が60件となった。(前年度102件)

指導が行われた事例:

  • 有利誤認表示について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・ 表示等を管理するための担当者等を定めること、自社ウェブサイトにおいて当該商品の販売方法について、表示の根拠となる情報を確認していなかった。
  • 優良誤認表示についてアフィリエイトサイトにおいて当該商品の効果について、表示の根拠となる情報を確認していなかった。
  • 景品事件について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・景品類の提供等を管理するための担当者等を定めること・不当な景品類の提供等が明らかになった場合に迅速かつ適切な対応を行っていなかった

令和5年景品表示法改正

平成26年の景品表示法改正から一定期間が経過し、デジタル化の進展等の景品表示法を取り巻く社会環境の変化等を踏まえ、消費者利益の確保のために必要な措置について検討すべく、消費者庁では、令和4年3月から「景品表示法検討会」を10回にわたり開催し、景品表示法の適用等に関する考え方等について、令和5年1月に報告書を公表した。

同報告書を踏まえて法案の検討が行われ、令和5年2月に「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」が閣議決定し、同年5月に成立・公布された(主要な改正部分について、公布の日から、1年半を超えない範囲内において、政令で定める日から施行。)。

改正内容:

  • 事業者の自主的な取組を促進するための確約手続
  • 繰り返し違反行為を行う事業者に対する課徴金の割増規定
  • 悪質な事業者へ対応するための直罰規定
  • 適格消費者団体が事業者に対し表示の合理的根拠の開示要請ができるとする規定 等

———–
「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律案」の閣議決定について
(令和5年2月28日)
https://www.caa.go.jp/law/bills/#211
———–

アフィリエイト広告が「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」に

令和4年6月に「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書に基づき、景品表示法第26条に基づく「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改正を行い、アフィリエイト広告が当該指針の対象に含まれることを明確化した。
《関連記事》
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

ステマが景品表示法第5条第3号規定による不当表示に

広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す、いわゆる「ステルスマーケティング」について、景品表示法の観点から対応を検討するため、令和4年9月から「ステルスマーケティングに関する検討会」を開催し、同年12月に報告書を公表した。

当該報告書等を踏まえ、令和5年3月、景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示として「 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)を新たに不当表示として指定し、同年10月1日から施行された。

また、上記の告示指定と同時に、事業者の予見可能性を確保するため、「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」を公表。

公正競争規約の新設及び変更

新設:
エキストラバージンオリーブオイルの表示に関する公正競争規約及び施工規則
(施行日:令和5年3月22日)
https://www.jfftc.org/oliveoil.pdf

変更:
チョコレート利用食品の表示に関する公正競争規約及び施工規則
(施行日:令和4年6月7日)
食品表示基準の一部改正し、原料原産地府令が施行されたことに伴う原料原産地表示の義務付け等
https://media.toriaez.jp/s2990/713.pdf

タイヤの表示に関する公正競争規約及び施工規則
(施行日:令和4年6月28日)
「低車外音」又はこれに類似する用語についての使用基準の新設等https://www.tftc.gr.jp/files/rules/rules_kiyaku_henkou_202206.pdf

自動車業の表示に関する公正競争規約及び施工規則
個人リース、サブスクリプション等の取引における不当表示に係る規定の明確化等
(施行日:令和4年6月30日)
中古車の販売価格の表示方法について支払総額による表示に統一等
(施行日:令和5年4月27日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf

募集型企画旅行の表示に関する公正競争規約及び施行規則
一般社団法人日本旅行業協会及び一般社団法人国旅行業協会によるガイドライン等との整合等
(施行日:令和4年8月5日)
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/travel.pdf

ペットフードの表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年9月28日)
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成20年法律第83号)に基づく愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令(平成21年農林水産省令・環境省令第1号)の規定との整合等
https://pffta.org/kiyaku.html

酒類小売業の表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年9月28日)
民法(明治29年法律第89号)の改正による成年年齢の引下げに伴う変更等
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/liquor_retail.pdf

削りぶしの表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年11月24日)
原料原産地府令が施行されたことに伴う原料原産地表示の義務付け等
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/kezuribushi.pdf

みその表示に関する公正競争規約及び施行規則
(施行日:令和4年11月30日)
原料原産地府令が施行されたことに伴う原料原産地表示の義務付け等
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/miso.pdf

都道府県との連携、協力関係強化

・都道府県における景品表示法の執行力の強化に向けて、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と協力して北海道・東北地区、関東甲信越地区、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区のブロックの都道府県との連絡会議を開催し、景品表示法担当職員向けに研修を実施。

・都道府県職員対象の執行研修や、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と共に、都道府県が行う景品表示法の運用に関して助言を行う。

・消費者庁は、平成24年4月1日から景品表示法に関する調査情報等を共有するネットワーク(景品表示法執行NETシステム)(※2)の運用を開始し、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等及び都道府県等との情報共有の緊密化、協力関係強化を図っている。
《関連記事》
・都道府県等への措置命令権限付与から7年。景表法執行に向けた運用課題と今後の取り組み

(※1)
令和4年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_230922_02.pdf
(※2)
・消費者庁『景品表示法執行NETシステム』運用開始!景品表示法執行が迅速化?

令和4年度の消費者庁の表示適正化への取り組みでは、令和2年度以降、継続して、「新型コロナウイルスへの予防効果等を標ぼうする不当表示等への対応」に注力されているものの、措置命令件数は減少しています。
令和4年度は、アフィリエイト広告規制、ステマ規制、令和5年景品表示法改正法案の公布など、新たな規制の取り組みが進められました。

事業者の皆さんには、一層の広告管理体制への取り組みが求められます。
広告法務のリスクマネジメントについて、お気軽にご相談ください。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。