公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)「広告適正化委員会」が、2021年2月に実施した「2020年度通信販売広告実態調査」の結果を2回に分けてご紹介します。(※)
この調査は、通信販売取引改善を目的に2012年度から実施されています。当初は新聞折込チラシとテレビ通販CMが対象でしたが、2019年度にネット広告が調査対象に追加されました。
また、一般消費者の目線に立った調査を行うため2020年度より調査方法が大きく変更となり、消費生活アドバイザー等の資格を有する一般消費者の中から調査員を選定。調査員が調査期間の2週間に日常生活のなかで接触したすべての通信販売に関する広告を対象とし、問題があると考えた広告を収集するサンプル調査となっています。
調査対象エリアは、近畿2府4県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)及び四国4県(愛媛県、香川県、徳島県、高知県)で、調査員は各県の人口構成等に応じて人数を設定しています。
(2020年度は、九州地方(福岡県 · 佐賀県 · 長崎県 · 熊本県 · 大分県 · 宮崎県 · 鹿児島県 · 沖縄県)に合計20人で、エリアの変更と調査員数が増やされました)
今回の調査サンプルとなった、法令順守や消費者保護の観点から問題があるおそれのある広告は294件です。
通販広告の広告表現の適正性について全体傾向をお伝えします。
【問題があるおそれのある広告の媒体・商材状況】
●Web広告が全体の34%、SNS広告が15%
●「美容・健康」が43%、「飲食料品」が28%
【広告内容の適正性】
●「解約に関する事項」の記載なしが50%
●「誇大な性能・効果効能表現」が57%
【問題があるおそれのある広告の媒体・商材状況】
●Web広告が全体の34%、SNS広告が15%
問題があるおそれのある広告を媒体分類別に見ると、「Webサイト上の広告」が34%、次いで「新聞広告・雑誌広告」が27.9%、「SNS上の広告」が14.6%となった。
●「美容・健康」が43%、「飲食料品」が28%
商品分類別では、「美容・健康」が42.9%、「飲食料品」が27.6%を占めている。具体的には、化粧品や健康食品に関する広告が目立つ。
続いて、「サービス」が約16%を占めており、教育や情報サービスに関する広告が目立っている。
【広告内容の適正性】
●「解約に関する事項」の記載なしが50%
問題があるおそれのある広告について、特定商取引法に基づく義務表示事項や返品特約等について記載割合が少ない事項は、「申込期限」(35.4%)、「解約」(49.7%)、「付帯費用」(53.1%)。
「付帯費用」や「申込期限」については、そもそも販売時に設定していないケースがある一方、解約に関する事項については、解約の方法や期間に制限がある場合には、トラブル防止の観点からも重要な事項であるため、できる限り明瞭に記載を求めたい。
悪質な定期購入販売規制を目的とした2022年6月1日に施行された特定商取引法の改正で示された「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」では、特に定期購入やサブスクリプション契約において、次の表示を義務付けています。
・解約の申出に期限がある場合には、その申出の期限、また、解約時に違約金その他の不利益が生じる契約内容である場合には、その旨及び内容も表示する。
・解約方法を特定の手段に限定する場合、リンク先や参照ページの表示ではなく、広告画面はもとより、最終確認画面においても明確に表示する。
《参考記事》
・改正特商法対応急務、「最終確認画面」の義務表示事項と定期購入での禁止表示のポイント(2022年6月1日施行)
●「誇大な性能・効果効能表現」が57%
問題があると考えた理由(複数選択可)について、「誇大な性能・効果効能表現」(57.1%)を占める。
また、「不明瞭な商品内容」(46.9%)「あいまいな取引条件」(44.6%)が4割以上を占め、定期購入の商品内容や販売・解約条件が分かりにくいといった指摘があった。
「せん情的な広告内容」(30.3%)では、健康や美容の悩みを過度にあおったり、セール終了を強調するなど、商品の購買意欲を高めるために行き過ぎた表現が散見された。
2020年度の調査結果と比較して、傾向に大きな変化は見られませんでしたが、「SNS上の広告」が6.8%から14.6%に7.8ポイント増加しており、近年消費者のSNS利用機会の上昇に伴い、問題ある広告もSNS上に多く表示されていることがうかがえます。
本調査委員会では、不適正な表示を行っている通販各社に対し改善要望を通知する、関係各所と情報共有を行っています。
特に「通販の関連法令に抵触するおそれのある広告」を行った通販会社に対しては、改善要請書を通知し、それに対する協力姿勢がなく、違法性・悪質性があり、消費者にとって多大な不利益やトラブルの発生が予測できる広告表示を再度行う場合には、JADMAから関係省庁などへ通報するとしています。
調査報告書では、「一部不適正な表示が見られ、改善が必要な広告」「関連法令に抵触するおそれのある広告」について具体的な審査広告事例が公表されています。
次回は、個別広告事例を解説します。
※
通信販売取引改善のための通販広告実態調査 (2021年度調査)
(公社)日本通信販売協会 広告適正化委員会 2022年6月
https://www.jadma.or.jp/pdf/2022/jadma_koukokujittai2021.pdf
<調査概要>
調査エリア:
近畿2府4県(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)及び四国4県(愛媛県、香川県、徳島県、高知県)とし、各県の人口構成に応じて調査員を選定。
調査期間:
2022年2月7日(月)~20日(日)までの2週間
対象広告:
調査員が接触したすべての通信販売に関する広告とした。
消費生活アドバイザー等の資格を有する一般消費者の中から調査員を選定し、本調査に関するガイダンスを行ったうえで調査活動を開始した。
《関連記事》
・通販広告実態調査 調査方法が大きく変更。一般消費者の目線重視(JADMA「2020年度 通販広告実態調査」)
・通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告1割。その約6割が「化粧品」と「健康食品」(JADMA「2019年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)
・通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告1割。その約6割が「化粧品」(JADMA「平成29年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)
・通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告「化粧品」が約5割、「健康食品」が約3割(JADMA「平成27年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)
・通販広告折込チラシ、不適正広告の多いエリアは福岡、業態ではメーカー系通販 (JADMA「平成26年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)
・求められる折込チラシの通信販売広告改善、商品不適切表示は約3割 (JADMA「平成25年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)
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