3月に入って、虚偽・誇大なアフィリエイト広告に対する初の消費者安全法による注意喚起と、アフィリエイト広告自体を違反認定した消費者庁初の景表法措置命令が出されました。
・シミ消し化粧品のアフィリエイト広告に、初の消費者安全法による注意喚起 (消費者庁 2021年3月1日)
・T.Sコーポレーション男性用育毛剤のアフィリエイト広告に、消費者庁による初の景表法措置命令(消費者庁 2021年3月3日)
消費者庁では、現在、アフィリエイト広告についての実態調査を進めており、今後もアフィリエイト広告上の表示を含めて、法律に違反する表示があれば厳正に対処していきたいとしています。
アフィリエイト広告に対する消費者庁のこれまでの対応と最近の動向を整理してみました。
アフィリエイトサイトについて、初めて消費者庁が景品表示法上の考え方を取りまとめたのが2011年10月でした。(※1)
その当時のガイドラインとしては、景表法上問題とされたのは、アフィリエイターがアフィリエイトサイトに掲載する、広告主のバナー広告の表示内容についてのみの言及でした。
「アフィリエイターによるアフィリエイトサイト上の表示に関しては、アフィリエイターはアフィリエイトプログラムの対象となる商品・サービスを自ら供給する者ではないので、景品表示法で定義される「表示」には該当せず、したがって、景品表示法上の問題が生じることはない。」と示されています。
(※1)
インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項
(平成23年10月28日 消費者庁)
一部改定 平成24年5月9日 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/120509premiums_2.pdf
その後、アフィリエイト広告が関係する表示に対する処分などの動きはありませんでしたが、2018年6月のブレインハーツの措置命令事案で、アフィリエイトサイトの表示の違反認定について話題となりました。
この事案では、販売事業者であるブレインハーツが自社ECサイトに違反表示を行うとともに、広告代理店を通じて、アフィリエイトサイトの運営者に対し、自社ECサイトの記載内容を踏まえた口コミ、ブログ記事等を作成させていたものの、アフィリエイターが作成した表示自体は違法認定には至りませんでした。
・アフィリエイトサイトの表示も規制対象!ブレインハーツの通販サイトに景表法措置命令(消費者庁:平成30年6月15日)
アフィリエイトサイトが対象表示媒体として違反認定された事案としては、2020年3月に埼玉県がサプリメントの痩身効果に対してニコリオに措置命令を行いました。
・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意! (埼玉県 2020年3月31日・4月1日)
そして、アフィリエイト広告における違反行為への対応については、2020年2月から始まった「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」において議論され、8月に取りまとめられた報告書(※2)では、今後の検討課題として以下のように言及されています。
アフィリエイト広告における違反行為への対応
通信販売の販売業者等がアフィリエイターに広告表示の内容の決定を委ねているような場合に販売業者等がアフィリエイト広告の不当表示の責任を負うという点に関する解釈上の整理の明確化に加え、アフィリエイトサービスプロバイダー(ASP)の法的な位置付けの整理を検討。(※2)
特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会報告書(令和2年8月19日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/assets/consumer_transaction_cms202_200819_03.pdf
これを受けて、3月3日の伊藤消費者庁長官記者会見(※3)においても、消費者庁の今後のアフィリエイト広告への対応について重要なテーマとして述べられています。ポイントをまとめてみました。
●アフィリエイト広告の問題点
アフィリエイト広告の特性として、広告の対象である商品等の販売者本人ではなく、アフィリエイターが広告を作成・掲載していることから、販売者による広告内容の審査が行き届かない可能性がある。
また、商品の購入等があった場合にのみ報酬が発生するという仕組みであることから、アフィリエイターが報酬目当てに虚偽・誇大な広告を作成するインセンティブが働きやすい可能性がある。
●アフィリエイト広告の実態調査
アフィリエイト広告について、現在、実態調査を進めており、ASPに対するアンケート調査(外部委託)と併せて、消費者庁において関係者に対するヒアリングを行っている。
調査によってアフィリエイト広告のビジネスモデル、その広告の作成・掲載に関して、どのように、誰がどういうふうに関与しているかといった実態や認識などについて把握する。
2021年の夏くらいまでに実態把握を行い、その上で、表示の適正化に向けた取組や、消費者に向けての注意喚起、景表法や特商法の解釈上の整理の参考とする。
●アフィリエイター自体を規制する法律は?
記事を書いたアフィリエイターを処分するような規制について、現段階では考えていない。
商品等を供給する者についての表示、その表示に責任を持つ人に適正表示の責任を持ってもらう。
(※3)
伊藤消費者庁長官記者会見要旨
(2021年3月3日(水)
https://www.caa.go.jp/notice/statement/ito/023351.html
令和3年度は、いよいよアフィリエイト広告の適正化に向けた本格的な法執行が進みそうです。10年前であれば、広告バナーの管理さえしておけば責任を問われるリスクは低かった時代は過ぎました。
過激なアフィリエイト広告が問題視される中、今後、広告主となる事業者やASPにはアフィリエイト広告の管理責任が強く求められていくことになりそうです。
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《参考記事》
・健康食品「肝パワーEプラス」の記事態広告アフィリエイトで薬機法違反。広告主、広告代理店、制作会社社員が同時逮捕
・アフィリエイト・ドロップシッピング運営上の景品表示法上の留意事項
・ネット上の健康食品の成分に関する記事体広告、薬機法に抵触する境目は?
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