健康食品「肝パワーEプラス」の記事態広告アフィリエイトで薬機法違反。広告主、広告代理店、制作会社社員が同時逮捕

記事態広告のアフィリエイトに、ようやくメスが入りました!
7月20日に、福岡市の健康食品通販会社ステラ漢方(株)及び、広告代理店、委託先の制作会社の社長や従業員ら6人が、薬機法違反で大阪府警に逮捕されたことが報じられました。

ステラ漢方、KMウェブ、ソウルドアウト社員の薬機法違反逮捕、大阪府警「情報提供あった」
(NET-IB NEWS 2020年7月21日)
https://www.data-max.co.jp/article/36806?rct=business

以下、記事引用:

ステラ漢方が販売する健康食品「肝パワーEプラス」について、佐野容疑者が医薬品および薬剤師の資格がないにも関わらず、アフィリエイトなどのウェブ広告で「肝臓疾患の予防に効果がある」「無敵の肝臓を手に入れる」と、第三者が語ったような記事広告を掲載・宣伝した疑いがもたれている。大阪府警によると、昨年11月に同広告内容について情報提供があったことから捜査を進めていたとのことであり、「広告内容について、広告主が内容を決めて制作を依頼したのか、広告代理店からの提案なのかなど、これから調べる」という。

今回の事件で、以下の2つのポイントに注目しています。
・記事態広告のアフィリエイト広告が「景品表示法」ではなく、「薬機法」での違反逮捕となったこと
・広告主と広告代理店および制作会社の役員、社員、従業員が同時に逮捕されたこと

アフィリエイト広告が違反表示とみなされた事案には、過去に以下の2事例があります。


ブレインハーツ事案(消費者庁 2018年6月15日):
景品表示法優良誤認違反(不実証広告規制)
サプリメントや下着の痩身効果、石けんの美白効果

ブレインハーツは自社ECサイトに違反表示を行うとともに、広告代理店を通じて、アフィリエイトサイトの運営者に対し、自社ECサイトの記載内容を踏まえたこれらの商品についての口コミ、ブログ記事等を作成させ、自社ECサイトに遷移させるリンクを掲載させていた。
アフィリエイターが作成した表示自体の違法認定には至っていないものの、不当表示のECサイトへ誘導させるアフィリエイトサイトの記事内容について踏み込んで指摘し、処分内容の消費者への周知徹底方法としても、アフィリエイトサイトから処分事業者の「お詫び告知」ページへのリンクも求めた。
→広告主が、アフィリエイトサイトの表示内容決定に関与している。広告代理店、アフィリエイターの表示内容決定への関与度低い。

・アフィリエイトサイトの表示も規制対象!ブレインハーツの通販サイトに景表法措置命令

ニコリオ事案 (埼玉県 2020年3月31日):
景品表示法優良誤認違反、特定商取引法誇大広告(不実証広告規制)
サプリメントの痩身効果

自社ECサイトの表示だけでなく、アフィリエイトサイトの体験談広告について違反対象広告と認定。広告主からアフィリエイターへの直接的な広告制作指示はない。
→広告主は、アフィリエイターに表示内容の決定をゆだねている。アフィリエイターの広告内容の決定への関与度高い

・埼玉県、ダイエットサプリ通販のニコリオに景表法措置命令と特商法業務停止命令。アフィリエイトも注意!

ブレインハーツ事案とニコリオ事案では、アフィリエイターの広告内容決定への関与度の違いはありますが、いずれも景表法の適用となっているので、商品の供給者ではないアフィリエイターは違反対象とはなっていません。
景表法の規制対象は、あくまで、商品の供給者(販売者)で、「表示内容の決定に関与した者」となります。
「表示内容の決定に関与」とは、
・自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した場合
・他の者の表示内容に関する説明に基づきその内容を定めた場合
・他の者にその決定をゆだねた場合
となっており、不当表示の故意又は過失があることは要しないこととなっています。

ですから、仮に広告主(商品の供給者)の自社ECサイトにおいては不適切な表示はなく、アフィリエイトサイトの表示内容を把握・管理できていなかったとしても、広告主はアフィリエイターに表示内容の決定をゆだねた状態となり、アフィリエイトサイトの不適切な表示についての措置を受ける可能性があります。

アフィリエイトサイトの不当表示に対して、ブレインハーツの場合は「自ら又は他の者と共同して積極的に表示の内容を決定した場合」に該当、ニコリオの場合は「他の者にその決定をゆだねた場合」に該当すると考えられます。

一方、今回のステラ漢方の事案は、規制対象が「何人も」となる薬機法での違反逮捕です。その為、広告主だけでなく、アフィリエイト広告の違反表示の内容決定に関与が疑われる広告代理店や制作会社の役員や従業員も同時逮捕となっています。
アフィリエイト広告を実際に制作したり、仕組みを提供・管理する立場の事業者にも責任が追及されています。

2018年6月のブレインハーツ事案で、一気にアフィリエイト広告規制に注目が集まりましたが、しばらく動きがありませんでした。2020年に入り、3月の埼玉県による二コリア事案に続き、今回の薬機法によるステラ漢方の逮捕事件で、再びアフィリエイト広告業界に大きなインパクトを与えそうです。

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《参考記事》

・アフィリエイト・ドロップシッピング運営上の景品表示法上の留意事項

・アフィリエイトサイトの表示規制。消費者庁の本気度

・ネット上の健康食品の成分に関する記事体広告、薬機法に抵触する境目は?

・アフィリエイトサイトの不適切な表示の法的責任主体は?

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。