『平成29年度機能性表示食品の届出後における分析実施状況及び健康被害の情報収集等に関する調査・検証事業報告書』より、前回は届出食品が「継続して一定の品質を確保し製造・生産されている」ことを示す「届出資料別紙様式(Ⅲ)-3の記載内容」を確認しました。
今回は届出者を対象としたアンケート調査による、「届出後の分析実施状況」について取り上げます。
【アンケート調査結果】
機能性表示食品(平成29 年9月30 日までに届け出られた1,124 件(撤回されたものを除く。))に対して郵送。
回答した事業者数は250件(72.3%)、回答のあった届出食品は953件(84.8%)であった。
●届出者の企業規模(事業者数ベースで集計)
・中小企業者が56.0%で最多、大企業が31.2%、小規模企業者が12.4%だった。
●届出食品の販売実績(届出食品数ベースで集計)
・販売中は61.1%、販売終了が7.9%、販売実績なしが30.3%だった。
●届出食品の届出後における機能性関与成分等に関する分析の実施頻度
※「販売実績なし」又は無回答の届出食品を除外し、届出食品ベースで集計。「届出資料に記載する必要がないと判断したが、実際には分析を実施している」又は「届出資料に記載していないため、実施していない」とした届出食品についても、同様に除外。
(1)機能性関与成分の定量試験・定性試験(○は1つ)
・「製品ロットごとに1回」が最も多く28.9%、次いで「一定期間ごとに1回」は23.1%、「原料ロットごとに1回」が10.7%だった。また、「分析していない(届出時のみ実施)」が6.8%あった。
(2)安全性を担保する必要がある成分の定量試験・定性試験験
・「原料ロットごとに1回」との回答が最も多く(30.2%)、次いで「製品ロットごとに1回」が20.8%だった。
・「届出時のみ実施し、届出後には分析していない」という回答も17.0%あった。
(3)原料の基原の確認
・「原料ロットごとに1回」が大半を占め、68.9%だった。「行っていない」および「一定期間ごとに1回」は4.5%。
(4)製品の崩壊性試験等
・製品の崩壊性試験等については、「製品ロットごとに1回」が75.0%であった。「行っていない」は2.2%。
●届出資料に記載した内容と、実際の実施内容とを照らし合わせた場合の変更点(販売実績のある各届出食品の届出後の分析)
(1)機能性関与成分の定量試験・定性試験
・機能性関与成分の分析について「届出資料に記載した内容から変更している」が 36 件(5.5%)あった。
・36 件の変更内容は、「分析方法」が12 件(33.3%)、「代替指標の成分」が2件(5.6%)、「分析機関の種類」が18 件(50.0%)、「分析を実施していない」が16 件(44.4%)であった。
(2)安全性を担保する必要がある成分の定量試験・定性試験
・販売実績のある届出食品(657件)のうち、別紙様式(Ⅲ)-3(3)安全性を担保する必要性がある成分の定量試験」について分析を実施しているとの回答が83 件(12.6%)。
・そのうち、15 件(18.1%)が「届出資料に記載した内容から変更している」と回答。変更内容は全て、「分析を実施していない」であった。
・分析を実施していない15 件のうち、販売終了が7件、うち4件は販売期間が1年に満たなかった。販売中のものについては、販売開始時期を把握していないため販売期間は不明。
・「その他成分について分析を実施している」が113 件(17.2%)。
・届出資料に記載する必要がない成分について実際には分析を実施しているが79 件(12.0%)
・「届出資料に記載した成分がないため実施していない」との回答が446 件(67.9%)。
(3)原料の基原の確認
・原料の基原の確認については、「届出資料に記載した内容から変更している」が5件(0.8%)あり、内容は全て「分析を行っていない」であった。
・「届出資料に記載する必要はないと判断したが、実際には実施している」は49 件(7.5%)あった。
(4)製品の崩壊性試験等
・製品の崩壊性試験等については、「変更している」が6件(0.9%)。
・6件の変更内容は、分析方法を変更したものが3件、分析機関を変更したものが3件(利害関係者のみに変更)、届出後に実際は分析を実施していないというものが2件だった。
・また、「届出資料には記載する必要がないと判断したが、実際には実施している」が37 件(5.6%)あった。
【機能性表示食品制度における品質管理の課題】
届出資料の記載内容からの変更が必要になった場合の対応
・アンケート調査の結果から、一部の届出食品の分析について、「届出資料に記載した内容から変更している」、「届出資料に記載する必要がないと判断した分析について実際は実施している」との回答が見られた。
ガイドラインでは「(1)新規届出が必要になる場合」に該当しない届出事項の変更及び追記事項があった場合や届出事項に誤りがあることが判明した場合には、速やかに変更届出を行うことが求められている。
アンケート調査で回答があった代替指標の変更、分析手法(測定原理)の変更、分析実施機関の区分の変更や、分析項目の追加は、変更届出がなされるべきものである。
代替指標の適切な選定
・一部の届出食品においては、代替指標についての記載が確認された。機能性関与成分の代替指標を挙げているものもあった。
ガイドラインにおいては、「届出者が実施する個々の出荷判定のための製品分析などにおいては、迅速性及び簡便性等の理由により、機能性関与成分と高い相関が認められる代替指標を用いることは可能」とされている一方で、代替指標について明確に定義がなされていない。
代替指標との間に高い相関があることの根拠として、公開されている研究論文の書誌情報を届出資料に記載することが望ましい。品質を担保するために十分な相関係数の一定の基準を目安とすることも、検討する必要がある。
分析を実施する上で発生する記録等は、消費者庁等から求められた際に速やかに提示できるよう、適切に保管しておくことが適当である。
環境汚染物質の記載
・一部の届出食品において別紙様式(Ⅲ)-3「(4)安全性を担保する必要がある成分」又は「(5)基原の確認・崩壊性試験等」に、ヒ素や重金属、微生物、ダイオキシン等の環境汚染物質の分析について記載しているものが見られた。
ガイドラインでは環境汚染物質の分析には言及されていないものの、届出者から積極的
に発信することは消費者の信頼確保につながると考えられる。
基原の確認が必要な機能性関与成分
・機能性関与成分名から基原の確認が必要と推測できる食品であっても、別紙様式(Ⅲ)-3「(5)基原の確認・崩壊性試験等」に基原の確認について記載がない届出食品が、386 件中172 件(44.6%)あった。
・一方、届出者を対象としたアンケート調査では、基原の確認について「届出資料に記載する必要がないと判断したが、実際には実施している」との回答が49 件(7.5%)存在した。
ガイドラインでは、「サプリメント形状の加工食品及びその他加工食品において、機能性関与成分の基原の確認及び最終製品の製品規格の確認のため崩壊性試験等を実施することとしている食品にあっては、基原の確認及び崩壊性試験の方法、分析機関、頻度等について別紙様式(Ⅲ)-3の(5)に記載する。」とされている。
原材料によって組成が異なる可能性のある成分については、機能性表示食品の品質を担保するために基原の確認は不可欠である。機能性表示食品制度への消費者の信頼を確保する観点から、こうした情報は漏れなく届出資料に掲載し、第三者が確認できるようにすることが求められる。
次回は、「③届出者を対象としたアンケート調査による、届出後の分析実施に係る公開状況の把握」について取り上げます。
(※)
平成29年度機能性表示食品の届出後における分析実施状況及び健康被害の情報収集等に関する調査・検証事業報告書 (消費者庁 平成30年3月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/information_research_2017_180822_0001.pdf
≪関連記事≫
・3年目に入った機能性表示食品制度最新動向。消費者庁の体制も本格化(消費者庁 平成28年度:機能性表示食品制度の施行状況について)
・健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 (消費者庁 平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)
・機能性表示食品制度開始から1年。今後の制度運用動向 (消費者庁:平成28年1月)
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