3年目に入った機能性表示食品制度最新動向。消費者庁の体制も本格化(消費者庁 平成28年度:機能性表示食品制度の施行状況について)

機能性表示食品制度開始から2年。

事業者にとって不満となっていた届出手続きの効率化も進み、公表件数もトクホの販売件数の2倍以上となっています。
新たに対象となった機能性関与成分も追加されました。
また、機能性表示食品は、トクホや特別用途食品のような許可制ではなく、国の事後チェックを前提とした制度です。消費者庁では「機能性関与成分の分析方法の検証」「機能性表示食品の買上調査」を行っています。
分析法について関与成分の同定や定量可能性が低い、または不可能なケースがあったり、商品中の関与成分の含有量が表示値を下回ったり、過剰に含まれていたり、ロット間で大きなばらつきが見られる等の品質管理上の問題点が見つかっています。

消費者庁が4月18日に公表した機能性表示食品制度の施行状況に関する資料(※)より、平成28年度の制度の運用状況や検証の取り組みについてご紹介します。

●機能性表示食品の届出状況
平成29年4月12日時点の公表件数は834件(サプリ形状364件、その他加工食品463件、生鮮食品7件)。
平成28年9月27日現在の特定保健用食品許可等件数が1123件(うち販売件数366件)となっており、すでにトクホの販売件数を大きく上回っている。

●適切な届出書類の確認に向けた取組
・適切な届出資料を提出してもらうための文書の発出
機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(平成27年3月30日、平成28年3月31日一部改正、平成28年4月1日施行)
機能性表示食品の届出書作成に当たっての留意事項(平成27年6月2日、平成28年4月1日一部改正)
機能性表示食品の届出書作成に当たっての確認事項(平成27年9月30日、平成28年4月1日一部改正)

・届出データベースの運用開始(平成28年4月1日)
郵送による届出からオンライン手続きによる届出になり、手続きの手間が削減。記入漏れ等が自動的にチェックされ、届出資料のケアレスミスを減少。

・専門的な知見を有する政策調査員を6名増員(平成28年11月~)
増員後3か月間で公表件数が約2.4倍、届出資料確認所要日数36日短縮効果あり。

●追加となる機能性関与成分
・機能性表示食品制度の対象となるもの

糖質:フラクトオリゴ糖、キシリトール 等
糖類:L-アラビノース、ラクチュロース 等
(主としてエネルギー源とされる成分(ぶどう糖やでんぷん等)を除く。)
植物エキス及び分泌物:定量確認及び定性確認可能な特定の成分で機能性が部分的に説明できるもの。
(ただし、エキス等全体で機能性の全てが説明可能で、特定の成分のみでは機能性の全てが説明不可能なもの)

・栄養機能食品制度において別途検討するもの
ビタミン、ミネラル
過剰摂取の懸念、健康・栄養政策との整合性の観点から。

●機能性関与成分の分析方法の検証
【対象】

平成27年度:
機能性表示食品146件(平成27年4月1日~9月30日の期間に届出。撤回届が提出されたものを除く。)、機能性関与成分164成分を対象。
平成28年度:
機能性表示食品379件(平成27年10月1日~平成28年9月30日の期間に届出。撤回届が提出されたものを除く。)、機能性関与成分443成分を対象。
【検証事項と結果】
(1) 定性確認について
・ 記載された分析法により、機能性関与成分として届出された成分を定性的に同定可能か(特異性があるか)。


(2) 定量確認について
・ 記載された分析法により、機能性関与成分として届出された成分を定量可能か。
・ 届出された分析法で第三者が実際に分析可能かどうか。

【結果を踏まえた対応】
平成27年度:
定性確認及び定量確認についての追加資料を68件に対して求め、57件については、定量確認及び定性確認が可能であると判断し、変更届の提出を求めた。
11件については、定性確認及び定量確認が可能かについて、更なる追加資料及び追加分析が必要であると判断し、追加資料の提出及び追加分析の実施を求めている。
平成28年度:
定性確認に関する分析法及び定量確認に関する届出情報が不十分な場合には、追加資料の提出を求める。

●機能性表示食品の買上調査
【検証方法

機能性表示食品として販売されている商品を購入。
機能性関与成分の含有量を分析し、その結果に基づいて、対象商品に表示されている機能性関与成分の表示値の妥当性を評価(一部の届出書類については、分析方法の妥当性についても検証)。

【調査対象】
平成27年度:
平成27年4月1日から9月30日までの間に届出された機能性表示食品(146件)のうち、17件(機能性関与成分としては6成分)。
平成28年度:
平成27年4月1日から9月30日までの間に届出された機能性表示食品(522件)のうち、51件(機能性関与成分としては16成分)。

【検証結果及び対応】
届出書類に記載されている分析方法の多くに不備がみられ、そのまま実施することが困難であったことから、分析法を一部修正するなど補足して実施したところ、品質管理上の問題点が見つかった。
平成27年度:
・ 機能性関与成分の含有量が、表示値を下回っている、若しくは過剰に含まれている。
・ 同一製品にもかかわらず2ロット(又は2パッケージ)間でのばらつきが大きい。
分析方法について追加資料の提出を求め、再検証を行った結果、表示値を下回っている等の問題はみられなかった。機能性関与成分が過剰に含まれているとの指摘があった届出食品についても、安全性が担保されていることが確認された。
平成28年度:
・ 機能性関与成分の含有量が、表示値を下回っているものが7件見付かった。
・ うち1件については、表示値を下回る場合がある旨の表示が認められているものであった。
分析方法に不備がみられたものについては、届出者に対して、届出資料の分析方法を詳細に記載したものに修正するよう求めていく予定。
分析方法の修正が必要ないものについては、品質管理上の問題がなかったか等、表示値を下回った原因について確認を求めた上で、撤回等を促していく予定。

今後、国の取り組みとして消費者啓発にも期待したいと思います。

(※)
機能性表示食品制度の施行状況について
(消費者庁  平成29年4月18日)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2017/245/doc/20170418_shiryou1.pdf

≪関連記事≫

健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 
(消費者庁 平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)

・機能性表示食品制度開始から1年。今後の制度運用動向 (消費者庁:平成28年1月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。