ステマ告示処分4事案目。医療法人社団スマイルスクエア、Googleマップの口コミ投稿に措置命令 (消費者庁 2025年3月17日)

2023年10月1日に施行された ステルスマーケティング告示の4事案目の行政処分です。消費者庁は2025年3月17日に、医療法人社団スマイルスクエア(東京都世田谷区)の運営する歯列矯正歯科の口コミ表示に対して、景品表示法第5条第3号による措置命令を行いました。

同法人は歯列矯正歯科の来院者にGoogleマップの「口コミ」で星5評価と感想の投稿を依頼。
星投稿を条件に、5000円分のQUOカード提供や治療費から5000円を割り引くこと伝え、これに応じて報酬を受けた来院者が星投稿していました。
ステマ告示初の処分となった2024年6月の医療法人社団祐真会に対する事案と同様のものとなっています。

《参考記事》
・医療法人社団祐真会、Googleマップの口コミ投稿にステマ告示初の措置命令 (消費者庁 2024年6月7日)

処分の内容と、医療法人に対するステマ告示処分、レビュー投稿での「事業者の表示」の判断基準を確認します。

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医療法人社団スマイルスクエアに対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 2025年3月18日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/041364
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●違反概要
【対象役務】
スマイルスクエアが経営する「スマイル+さくらい歯列矯正歯科二子玉川」と称する診療所において提供する歯列矯正
【表示個所】
「Googleマップ」内のスマイルスクエアが開設し経営する「スマイル+さくらい歯列矯正歯科」の「プロフィール」と称する施設情報を示す表示における「クチコミ」と称する当該施設の口コミ及び評価を示す箇所
【表示期間】
2024年5月15日~2024年9月11日までの間
【違反表示内容】
歯列矯正を受けるために診療所に来院した者(第三者)に対し、「Googleマップ」内の「スマイル+さくらい歯列矯正歯科」の「プロフィール」における「口コミ投稿欄」の診療所の評価として「★★★★★」(「星5」)と併せて感想を投稿すること又は星5を投稿することを条件に、5,000円分の「QUOカード」を提供すること、又は第三者が支払う治療費の総額から5,000円を割り引くことを伝え、これに応じてQUOカードの提供又は当該割引を受けた第三者が「星5」の投稿していたことから、スマイルスクエアは、本件役務に関する投稿表示内容の決定に関与しているものであり、当該投稿による表示は事業者の表示と認められる。

上記表示は、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当するものであった。

星5表示件数:9件
表示例:Googleマップ内の「スマイル+さくらい歯列矯正歯科」のプロフィールにおける口コミ投稿欄の投稿

(消費者庁資料より引用)

レビュー投稿での「事業者の表示」の判断基準

本件では、Googleマップの口コミでの高評価投稿を条件とした対価の提供という、事業者からの第三者に対する明示的依頼があり、一般消費者の投稿であっても第三者の自主的な意思による表示とは認められませんでした。
違反とならないためには、「広告・宣伝・PR」、「A社の商品提供を受けた投稿」など、広告であることが明瞭となる表示が必要です。
レビュー投稿のケースについて、事業者の表示となるものとならない表示の事例を消費者庁の示すガイドライン及びQ&A(※)からピックアップしました。

事業者の表示となるケース
・出店事業者が、「いわゆるブローカー」や、自らの商品購入者に依頼して、購入商品について、 ECサイトのレビューを通じて表示させる場合。
例:
★5つの評価をしてくださいといったレビュー投稿の内容を指示したり、必ずレビュー投稿してください、と依頼するケース。
「星5」ではなく、サービスの品質や内容、価格等の取引条件について推奨するコメントをすることが条件とされている場合も同様。

事業者の表示とならないケース(第三者が行う表示)
・出店事業者の商品購入者が、ECサイトのレビュー機能を通じて自主的な意思で行った事業者の商品の表示。
レビュー投稿キャンペーンのようなもので、キャンペーンに応募して投稿するかしないかは第三者の自由意志であり、事業者と購入者との間で、投稿内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていない場合。
例:
事業者が商品購入者に対してレビュー投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合。サービスを利用した後に、予約サイトの口コミ投稿を行うことを条件として、サービスを割引価格で提供する場合。

なお、第三者の自主的な意思と認められるのは、投稿の内容だけでなく、投稿するかしないかも自由意志である場合となります。商品やサービスを無償で提供し、SNSを通じた表示を行うことを依頼したが投稿内容は自由というケースは、投稿することを前提としているので、投稿内容の決定に関与したとみなされますので、注意が必要です。

(※)
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/assets/representation_cms216_230328_03.pdf

ステルスマーケティングに関するQ&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/stealth_marketing/#q4

医療法人に対するステマ告示処分が続くわけ

Googleマップの口コミでのステマ告示処分では、今回も医療法人に対する処分となりました。}
その理由として、医療行為について、ステマ広告によって一般消費者による自主的かつ合理的な選択が阻害されることは、一般消費者への影響が大きいこと考えられます。
なお、ステマ規制は、「広告を隠す行為」自体を規制するものですので、優良・有利誤認のように表示内容そのものが不当表示認定されるものではないことから、社団祐真会のステマ事案同様、違反認定された投稿内容、ユーザーアカウントは公表されず、「評点(星5)」のみの公表となっています。
また、医業広告に対しては、景表法はもとより、厚労省が定める医療法の広告規制があります。
特に、患者らの主観による治療内容・効果に関する体験談は、治療内容・効果について、消費者の誤認を招く恐れがあるとして禁止されています。
口コミをマーケティングに活用する際には、各法規制の十分な理解と注意が求められます。

《参考記事》
・大正製薬NMNサプリにステマ告示3事案目。自社WebサイトのSNSタイアップ投稿転載に注意(消費者庁 2024年11月13日)

・「chocoZAP」にステマ告示2事案目。自社WebサイトのSNSタイアップ投稿転載にもPR表記を(消費者庁 2024年8月8日)

・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

・顧客による自主的な投稿ではない「口コミ」評価のNo.1表示に優良誤認。埼玉県 整骨院「くまのみ」に景表法措置命令(埼玉県 2023年3月14日)

・「妊活」サプリ、ゼネラルリンクに景表法措置命令 ステマランキングサイトによる広告手法に注意(消費者庁 2020年3月10日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。