北海道電力の電気と都市ガスのセット契約キャンペーン表示に景表法措置命令。「おトク」の条件表示はキッチリと(2023年7月28日 消費者庁)

消費者庁は2023年7月28日に、北海道電力(株)が提供する家庭用電気と都市ガスのセット契約に関する料金表示に対し、景品表示法の有利誤認による措置命令を行いました。

有利誤認となったのは、電気と都市ガスのセット契約で「おトク」と記載された金額相当分の利益を得るために必要な条件の記載が適切になされていなかったことによるものです。
同社が都市ガス販売に参入した直後の2020年12月~21年12月に実施したキャンペーンでのチラシやリーフレットが対象となっています。

処分の内容と、「打消し表示」を行う際の留意点を確認します。

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北海道電力株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (2023年7月28日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/034122
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●違反概要
【対象役務】
家庭用の電気及び都市ガスの小売供給

【表示媒体】
電気の検針票に併せて配布したリーフレット
新聞折り込み又はポスティングの方法により配布したチラシ
ダイレクトメールの方法により、配布したチラシ

【表示期間】
2020年12月3日~2021年12月3日

【違反表示内容】
電気の検針票に併せて配布したリーフレットにおいて、
「電気もガスもまとめてほくでんがおトク!」、
「ガスのご契約が北海道ガスの『一般料金』のお客さまがおトクになる ガスとくパック」、
「ほくでんガス+ほくでんの電気料金プランエネとくポイントプランのセットで ガス料金が北海道ガスの『一般料金』より5%おトクに! 電気とガス合わせたら年間約6,000円相当おトク!」
と表示することにより、
あたかも、都市ガスの小売供給に関する契約先を北海道瓦斯株式会社から北海道電力に切り替え、北海道電力と本件役務をセットで契約するだけで、北海道電力と契約する前の電気料金と都市ガス料金の合計金額又は電気料金の金額に比べ、年間で「おトク」と記載された金額相当分の利益を得られるかのように表示していた。

実際:
「おトク」と記載された金額には、ポイントサービスに加入した上で、毎月のログイン、おおむね毎週配信されるコラムの閲覧等を行わなければ付与されないポイント相当分が含まれていた。北海道電力と契約するだけで、年間で「おトク」と記載された金額相当分の利益を得られるものではなかった。

表示例(チラシ):(赤線部分に打消し表示)

(消費者庁資料より引用)
※打消し表示
(ポイント分を含みます)と記載。
(消費者庁資料より引用)
※打消し表示
(ポイント分を含む)と記載。

メリットをアピールする際は、その条件を漏れなく明瞭に記載する

強調表示は、訴求内容が商品・サービスの実際を反映していることが原則です。
仮に消費者にとって強調表示からは通常は予期できない事項で、例外などがある場合は、打消し表示が必要です。そして、打消し表示が消費者に正しく認識されなければ、強調表示の内容が消費者に誤認され、景品表示法上問題となります。

本件の強調表示では、おトクな金額相当分の利益を得るためには、電気とガスのセット契約をする以外に必要な条件があることを消費者は予期できません。
会員制ウェブサービスへの登録、毎月のログイン、コラムの閲覧など、その他の必要条件を漏れなく明瞭に表示する必要がありました。
もし、これらの条件を打消し表示として記載する場合は、消費者が理解できるような分かりやすい内容である必要があり、「ポイント分を含みます」といった記載では全く伝わりません。
また、打消し表示は消費者が認識しやすい表示方法が求められるため、QRコード等でウェブサイトに誘導させる手法等ではなく、同じ紙面に掲載する必要があります。

打消し表示の表示方法については、景品表示法上の誤認表示とみなされないよう、全ての媒体に共通して、次のポイントに留意する必要があります。

1)打ち消し表示を見落としてしまうほど小さな文字にしない。
2)文字と背景色のコントラストに注意する。
3)強調表示と比べて文字の大きさが小さすぎないように。
4)打ち消し表示は強調表示の近くに配置する。
5)強調表示と打消し表示が一体として認識できるよう表示する。

チラシやリーフレットなど紙媒体においては、紙面のスペースの制約がありますが、商品・サービスの優良・有利性を訴求する際には、その例外条件、制約条件等もすべてしっかりと明瞭に記載することを前提に制作することが求められます。

消費者庁が公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」から、打消し表示の留意点について、確認しておきましょう。

・TSUTAYAの措置命令で考える、「打消し表示」の景品表示法上の留意点

・消費者庁が本気で調査!打消し表示は明瞭に

≪参考記事≫
・課徴金額過去最高16億円超。中国電力の電気料金プランの非公正な料金比較に景表法措置命令。(消費者庁:2024年5月28日)

・イオン銀行のカード入会キャッシュバックキャンペーン表示に景表法措置命令。例外事項の打消し表示に注意!(消費者庁:2020年3月24日)

・三越伊勢丹ホールディングス子会社のエムアイカードに景表法措置命令。ポイント還元率の例外表示に注意!(消費者庁:2019年7月8日)

・LINEモバイル、申込時の手数料表示に景表法措置命令。「よくある質問」に注意!(消費者庁:2019年7月2日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。