6月27日、消費者庁は東京都の(株)ドミノ・ピザジャパンに対し、景品表示法違反(有利誤認) の措置命令を行いました。
不当表示とみなされたのは、「ドミノ・ピザ」店舗において、店頭での配布、住宅等への投函、日刊新聞紙への折り込み等により配布したチラシの、ピザをはじめとする料理の価格の表示について、チラシに表示された価格に加えてサービス料がかかることが分かりにくい表示になっていたことによるものです。
サービス料が発生するのは、一部期間を除きオンライン注文に限定されていましたが、ネットの注文ページの表示は違反とみなされませんでした。
強調表示に対応した打消し表示の留意点と、有利誤認の考え方について確認します。
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株式会社ドミノ・ピザジャパンに対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2023年6月27日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/033782/
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違反概要
【対象料理】
店舗において供給するピザをはじめとする料理
【対象店舗】
「ドミノ・ピザ」と称する直営店舗又はフランチャイズ店舗953店舗
【表示媒体】
店舗のチラシ
店舗の店頭で配布、店舗の配達エリア内に所在する住宅等に投函により配布、店舗の配達エリア内に所在する住宅等に配達された日刊新聞紙への折り込みにより配布
【表示期間】
2022年10月3日から2023年4月23日までの間
【表示内容】
例えば、「アメリカン」と称する料理について、
「\お持ち帰り/半額 \毎日、いつでも、どのピザでも、好きなだけ/ お持ち帰り」、
「\お持ち帰り/半額 Ⓜ\950(税込) Ⓡ\1249(税込) Ⓛ\1550(税込)」、
「デリバリー Ⓜ\1900(税込) Ⓡ\2499(税込) Ⓛ\3100(税込)」と表示するなど、
あたかもチラシに表示された価格または同価格からクーポンによる割引を適用した価格で本件料理の提供を受けることができるかのように表示をしていた。
実際:
2022年10月3日から2023年4月23日までの間、本件料理を注文した場合(2022年10月3日から2022年11月6日までの間及び同年12月23日から2023年4月23日までの間に、電話または店頭において注文した場合を除く。)には、「サービス料」と称して、「お持ち帰り」又は「デリバリー」と称する表示価格に、同価格に4%、6%または7%を乗じて得た額が、299円を上限として加算されるものであった。
【表示例】チラシ裏面(赤枠部分に打消し表示)
※打消し表示例
「※当社は品質とサービスを維持し、さらには向上させるために、すべての注文(電話注文、店頭注文を除く)に対してサービス料を頂戴しております。サービス料は、299円を上限として、ご注文金額の7%相当額とさせていただきます。サービス料は予告なく変更になることがございます。」と記載。
【表示例】チラシ表面(赤枠部分に打消し表示)
※打消し表示例
「※オンライン注文の場合、別途サービス料がかかります(7%、上限\299)」と記載。
強調表示に対応した打消し表示の留意点
本件で問題となった、わかりにくい「サービス料」の表示ですが、それが記載された箇所には「サービス料」以外の事項(食品アレルギーの対応、お客様相談窓口、記載内容が予告なく変更される旨、等)も、同様の形式で記載されていました。
しかし、それらの表記については景表法上の問題とはなっていません。
【表示例】チラシ「ドミノのお得なクーポン」ページ(赤枠部分に打消し表示)
景表法上の問題となる「打消し表示」とは、消費者にとって強調表示からは通常は予期できない事項で、消費者が商品・サービスを選択するに当たって重要な考慮要素となる表示です。
本件のケースでは、「お持ち帰り」又は「デリバリー」と称する表示価格が強調表示となり、それ対して、購入選択の重要な考慮要素となる、追加費用を要する旨が「打消し表示」となります。
そして、打消し表示が消費者に正しく認識されないとみなされれば、強調表示は誤認表示となるのです。
ですから、広告物を制作する際には、何が強調表示となり、その対となる打消し表示について、消費者に正しく認識されるよう適切に表示されなければなりません。
強調表示に対する打消し表示を、他の注意書きと同じ扱いで、情報を埋もれさせてしまわないよう、注意が必要です。
打消し表示の表示方法については、景品表示法上の誤認表示とみなされないよう、全ての媒体に共通して、次のポイントに留意する必要があります。
1)打ち消し表示を見落としてしまうほど小さな文字にしない。
2)文字と背景色のコントラストに注意する。
3)強調表示と比べて文字の大きさが小さすぎないように。
4)打ち消し表示は強調表示の近くに配置する。
5)強調表示と打消し表示が一体として認識できるよう表示する。
対象表示のチラシに記載されていた打消し表示では、2)以外のすべての事項において不適切であったと言えます。
打消し表示を行う際には、消費者庁が2017年7月14日に公表した「打消し表示に関する実態調査報告書」を参考に、留意事項を確認しましょう。
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打消し表示に関する実態調査報告書(消費者庁 平成29年7月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180921_0001.pdf
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消費者が有利誤認したという結果は問わない、不当表示認定
本件については、当該サービス料が発生するのは電話注文、店頭注文を除く、オンライン注文に限定されていました。
(不当表示を行っていた期間のうち、一部期間は電話注文、店頭注文を含んでいた)
しかし、違反対象となった媒体はチラシに限定されていますので、違反とみなされなかったネットの注文ページの表示が気になるところです。
サービス料が発生するオンライン注文において、ネットやアプリの注文ページに違反がなく、サービス料について明瞭に記載されていたのであれば、消費者は「有利誤認」することはないのでは、と疑問に感じるかもしれません。
しかし、景表法の不当表示認定では、「一般消費者が誤認したという結果は問わない」とされています。
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景品表示法 第4条第1項第2号(有利誤認)
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に
① 著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、
② 不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
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① に関しては、必ずしも一般消費者が誤認したという結果は問わない。
② に関しては、「半額」等の値引きキャンペーンは通常の広告よりも一般的に消費者への誘引力が強く、また、チラシからオンライン注文に誘導しており、不当表示(今回では、表示価格に加えてサービス料がかかることが分かりにくい表示であったこと)により、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる
つまり、チラシを見て、仮に、オンライン注文をするためにネットの注文ページに行って、商品の表示価格に加えてサービス料がかかること(不当表示)に気づき、商品を注文しなかった(結果的に有利誤認しなかった)としても、半額でなければそもそも注文ページにアクセスすることはなかった(不当に顧客を誘引した)、というのが、有利誤認の判断です。
強調表示と打消し表示のあり方、有利誤認の考え方について、正しい理解が求められます。
≪参考記事≫
・ユニクエスト、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。Web 広告の打消し表示に注意(消費者庁 平成30年12月22日)
・イオンライフ、葬儀サービスの「追加料金不要」表示に景表法措置命令。「追加料金」請求4割(消費者庁:平成29年12月22日)
・ガリバー運営会社のIDOM、自動車保証の表示に景表法措置命令。打消し表示に注意!
・FREETELのSIMサービス、「業界No.1」「通信料0円」表示に優良・有利誤認の景表法措置命令。打消し表示に注意を(消費者庁:平成29年4月21日)
・セール時の二重価格表示に注意!イオン子会社「SPORTS AUTHORITY」のチラシに景表法措置命令(消費者庁:平成30年1月12日)
・寝具の店頭表示価格 販売実績のない二重価格に景表法措置命令!(消費者庁:平成29年3月8日)
・消費者が有利誤認したという結果は問わない。(有)ミート伊藤の特売日表示に景表法措置命令
・打ち消し表示無効。モデル写真と実質料金に乖離。着物レンタル事業者のDM用カタログに景表法措置命令
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