兵庫県焼肉店の「但馬牛」の不正表示に、地理的表示法と景品表示法による措置命令(農林水産省、兵庫県 2022年12月21日)

地理的表示である「但馬牛」の不正表示に措置命令です。

兵庫県朝来市の焼肉店(有)竹田屋が、同社経営の飲食店で提供する料理に但馬牛を使用していないにもかかわらず、そのメニュー、広告等に地理的表示である「但馬牛」及びこれに類似する「但馬和牛」等と不正に表示し、地理的表示法と景品表示法(優良誤認)による措置命令を受けました。

地理的表示法は農林水産省、景品表示法は兵庫県による合同処分です。

「地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度」は、品質、社会的評価その他の確立した特性が産地と結び付いている農産物や食品を、国がお墨付きを与えブランドとして保護する制度として、2015年6月に施行されました。
登録を受けた地理的表示と同一もしくは類似の表示は禁じられ、地理的表示及びGIマークの不正使用に対しては、措置命令を行い、改善されない場合には罰則が科されます。

・農産物の地域ブランドを国が後押し。「地理的表示(GI)保護制度」開始(農林水産省 平成27年6月1日)

単に消費者を誤認させるメニューの産地偽装表示という側面だけでなく、国が保護する地域ブランド侵害に対する厳格な法執行となっています。
制度導入の有無にかかわらず、農産物や食品の産地表示をする際には注意が必要です。

処分のポイントと、両法による規制の考え方を確認しておきましょう。

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特定農林水産物等の名称の保護に関する法律に基づく措置命令について
(農林水産省 2,022年12月21日)
https://www.maff.go.jp/j/press/yusyutu_kokusai/chizai/221221.html

他県産和牛を「但馬牛」と表示していた焼肉店竹田屋に対する景品表示法に基づく措置命令 (兵庫県 2022年12月21日)
https://web.pref.hyogo.lg.jp/press/20221221_12033.html
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【地理的表示法】
違反内容:
少なくとも令和2年3月から令和4年7月までの間、同社が経営する飲食店において、客に提供する料理に但馬牛を使用していないにもかかわらず、そのメニュー、広告等に地理的表示である「但馬牛」及びこれに類似する「但馬和牛」等と不正に表示していた。

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)第3条第2項が禁止する地理的表示の不正使用に該当。

措置内容:
・使用している全ての広告、価格表、取引書類などにおいて、直ちに表示の点検を行い、使用した地理的表示の除去・抹消
・原因の究明・分析の徹底
・全役員及び全従業員に対する地理的表示保護制度についての啓発、再発防止策の実施
・今後、地理的表示保護制度に違反する不適切な表示は行わないこと
・講じた措置について報告書をとりまとめ、令和5年1月20日までに農林水産大臣宛てに提出すること

【景品表示法】
違反内容:
各種広告媒体に「但馬牛」を提供しているかのように表示をしながら、実際は但馬牛を仕入れておらず、 他県産和牛を提供していた。

表示媒体・表示内容:
・観光客向け3面折りリーフレット
「但馬牛専門店、但馬牛といえば“竹田屋” 但馬黒毛和牛の上質なお肉を提供しております」
・団体客向けチラシ
「本場霜降り但馬牛」
・店員による説明
「当店では、すべて但馬牛を使用しています」
・沿道看板
「本但馬牛」

その他、ガイドブック、ホームページ、Facebook等。

表示期間:
少なくとも2020年3月から2022年7月までの 29カ月間

表示例:

(兵庫県公表資料より引用)

景表法では、商品の「原産国」や原材料の「産地」について、消費者を誤認させる表示を「優良誤認」(法第5条第1号)や、「商品の原産国に関する不当な表示」(法第5条第3号)の規定により規制しています。

商品の「原産国」や原材料の「産地」を表示する際の、景品表示法上の注意点をまとめていますので、ご参考ください。

パブコメでの意見を受けて改定案に追記されたり、考え方を示された内容も反映させた詳しい改定内容は、以下の記事でご確認下さい。
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他方、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」による制度は、産地と結び付いた品質に国のお墨付き(GIマーク)を付すことで商品を差別化し、地域一体となって、ブランド価値の維持・向上を図ることを後押しするもので、消費者保護の目的というより、事業者保護の法律となっています。
2015年6月の制度開始より、これまでに119産品が登録されています。

(農林水産省の発表資料より転載「GI登録産品一覧」)

地理的表示制度のねらい

  • 国が品質の“お墨付き”を与えることで、品質を守るもののみが市場に流通するようになる。
  • GIマークにより、真正な地理的表示産品を消費者が一目で認識でき、他の産品との差別化が図られる。
  • ブランド侵害に対し訴訟等の負担なく、自分たちのブランドを守ることが可能。
  • 地域共有の財産として、地域の生産者全体が使用可能。地域活性化につなげられる。
  • 真の日本の特産品の海外展開に寄与。

消費者の信頼を裏切るだけでなく、地域ブランド価値をも棄損する行為は徹底して排除されるべき行為と言えるでしょう。

≪関連記事≫

・大阪府、かなたに「佐賀牛」弁当の表示に景表法措置命令。不実証広告規制とDNA分析による(大阪府:2019年6月12日)

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(消費者庁:平成30年5月15日)

・静岡県特産品「桜えび」が「中国産アキアミ」。不当表示に景表法優良誤認措置命令
(消費者庁:平成29年3月30日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。