資格取得講座の二重価格と期間限定キャンペーンに有利誤認。「未来ケアカレッジ」のEE21に措置命令 (消費者庁:2022年3月24日)

資格取得講座のサイト上の不適切な二重価格表示と期間限定表示に、景品表示法の措置命令です。
消費者庁は3月24日に、介護など社会福祉関連の資格講座運営を行う(株)EE21(大阪市)に対し、景品表示法の措置命令を行いました。
提供実績のない「通常受講料」を比較対照価格とし、期間限定をうたいながら、期限後も、繰り返し同様の割引での提供をしていたことが、有利誤認とみなされました。

処分内容と二重価格表示、期間限定キャンペーンの有利誤認の考え方を確認します。

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株式会社EE21に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁:2022年3月24日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/028011/
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【違反内容】

対象役務:
「未来ケアカレッジ」の名称で供給する「介護職員初任者研修」と称する役務

表示媒体・期間:
自社ウェブサイト
2020年10月16日~2021年7月27日

違反内容:
(1)通常価格表示
例えば、
2020年10月16日から同年11月19日までの間、
「通常受講料 ¥64,500(税別)」、「11/19お申込み分まで げき得キャンペーン 教室限定 キャンペーン価格 ¥44,500(税別)」等と表示。

あたかも、「通常受講料」と称する価額は、EE21において研修について通常提供している価格であり、「キャンペーン価格」等と称する実際の提供価格が通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。

実際には、「通常受講料」と称する価額は、EE21において研修について最近相当期間にわたって提供された実績のないものであった。

(2)期間限定販売表示
例えば、
2020年10月16日から同年11月19日までの間、
「通常受講料 ¥64,500(税別)」、「11/19お申込み分まで げき得キャンペーン 教室限定 キャンペーン価格 ¥44,500(税別)」等と表示。

あたかも、表示された期限までに申し込んだ場合に限り、「通常受講料」と称する価額から割り引いた価格で研修の提供を受けることができるかのように表示していた。

実際には、表示された期限後に申し込んだ場合であっても、「通常受講料」と称する価額から割り引いた価格で研修の提供を受けることができるものであった。

【表示例】

(消費者庁発表資料より抜粋)

期間限定キャンペーンは、消費者に「今買う(申し込む)ことが得だ」と思わせて購入を促す手法ですので、表示した期限後も同一内容のキャンペーンを間断なく継続することは、実際よりも有利な条件で購入できるかのように誤認させる有利誤認となります。
期間限定の割引キャンペーンの恣意的な繰り返しには注意が必要です。

また、販売実績の伴わない見せかけの比較対象価格の表示も認められません。
公正取引委員会が発表している「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(※)から二重価格表示の適法要件を確認します。

二重価格表示の適法要件として、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
・比較対照に用いる価格(「通常価格」)で販売されていた期間が、通算して2週間以上であること。
・「通常価格」で販売された最後の日から、キャンペーン開始時までに2週間以上経過していないこと。
・最近相当期間にわたって、「通常価格」での販売実績があること。

《「最近相当期間にわたって販売されていた価格」か否かの判断基準》
一般的な目安として、
・二重価格表示を行う最近時(キャンペーンの各時点において、その時点からさかのぼる8週間が目安)において、「通常価格」で販売されていた期間が当該商品の販売期間の過半を占めていること。
キャンペーンが4週間を超える場合は注意が必要です。

最近相当期間販売していない場合:
販売実績のある商品の価格については、販売時期や期間を正確に明示します。
※但し、セール実施決定後に販売を開始した商品の価格を比較対象価格とする場合には、当該価格での相当期間販売実績が必要です。
短期間の販売ではセール前価格の実績作りのための価格とみられるため、販売時期や期間を正確に表示しても、不当表示となるおそれがあります。

「販売されていた」とは:
事業者が通常の販売活動において当該商品を販売していたことをいい,実際に消費者に購入された実績のあることまでは必要ではない。
他方、形式的に一定の期間にわたって販売されていたとしても、単に比較対照価格とするための実績作りとして一時的に当該価格で販売していたとみられるような場合には,「販売されていた」とはみられない。

(※)
◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
(平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

2022年4月からの成年年齢引き下げを前に、3月に出された措置命令では、学生を含む若者をターゲットにした美容脱毛サービス、脱毛器、そして今回の資格取得講座と、価格表示についての有利誤認による処分が続いています。

以下に、価格表示に関する景品表示法の解説記事をまとめました。
どうぞご参考ください。
・二重価格表示の注意点~セール時の価格表示~

・二重価格表示の注意点 ~比較対照価格の商品同一性~

≪参考記事≫

・二重価格表示の適法の工夫とは。パソコン通販サードウェーブ、二重価格表示に景表法措置命令(東京都 2021年3月30日)

・ファクトリージャパン、整体の「期間限定」割引キャンペーン表示に景表法措置命令 有利誤認の考え方は?(消費者庁:2019年10月9日)

・加熱式タバコ「期間限定」割引キャンペーン表示 フィリップ・モリス・ジャパンに景表法措置命令(消費者庁:2019年6月21日)

・マカフィー 期間限定キャンペーンの「標準価格」「特別価格」に景表法措置命令!打消し表示にも注意 (平成30年3月22日 消費者庁)

・「期間限定」割引キャンペーン表示 中国電力の子会社(株)エネルギア・コミュニケーションズに景表法措置命令 (平成29年3月24日 消費者庁)

・「今なら無料!」キャンペーン表示に注意。GMOインターネットのネット接続サービスに景表法措置命令(消費者庁:平成29年3月22)

・値引きキャンペーン「1カ月限定」が、実際は5年近く継続。法律事務所に景表法措置命令!

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。