消費者庁は、2020年12月18日、健康食品(バストアップサプリメント)等を販売する通販事業者の(株)Kanael(カナエル)(本店所在地:東京都新宿区)に対し、特定商取引法違反で6カ月間の業務停止を命じました。
また、業務停止命令と併せて、今回の違反行為の発生原因について調査分析の上検証することなどを指示されています。
定期購入契約の最終確認画面上の契約内容や解約条件等に関する表示方法が、顧客の意に反して申込みをさせようとする行為とみなされました。
処分の内容を確認します。
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通信販売業者【株式会社Kanael】に対する行政処分について
特定商取引法違反の通信販売業者に対する業務停止命令(6か月)及び
指示について(消費者庁 2020年12月18日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/022500/
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【事業概要】
取扱商品:「True up(トゥルーアップ)」と称する健康食品(バストアップサプリメント)等
取引類型:通信販売 ウェブサイト「LAVINAL SHOP」
代表者:山口 稜世
【認定した違反行為】
同社は、次のとおり、特定商取引法の規定に違反する行為をしており、通通信販売に係る取引の公正及び購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。
顧客の意に反して通信販売に係る売買契約の申込みをさせようとする行為
(特定商取引法第14条第1項第2号の規定に基づく施行規則第16条第1項第2号)
遅くとも2020年4月3日から同年10月21日までの間、申し込みの最終確認画面上において、定期購入契約の主な内容である、
(1) 消費者が支払うこととなる金額のうち、2回目以降の本件商品の代金を表示せず、
(2) 契約期間について、購入者から解約通知がない限り契約が継続する無期限の契約である旨を明記せず、
(3) 解約条件について、最終確認画面の「特定商取引に関する法律」というリンク表示先ページ(「特定商取引に関する法律に基づく表記」)にのみ記載し、最終確認画面に解約条件を表示していない上に、
(4) リンク表示を、定期購入契約の申し込みを完了させるボタンよりも下に、そのボタンの文字及び初回の合計金額が表示された部分等と比して小さくかつ目立たない色調で表示することにより、当該ページに解約条件が記載されていることが容易に認識できないようにしていた。
→
顧客が申し込みを行う際、申込み内容を容易に確認・訂正できるようにしていなかった。
(施行規則第16条第1項第2号)
【表示例】
最終確認画面:
「特定商取引に関する法律に基づく表記」ページ(解約条件記載箇所):
(消費者庁公表資料より引用)
【処分の内容】
(1) 業務禁止命令
内容:
通信販売に関する業務のうち、次の業務を停止すること。
1)同社の行う通信販売に関する商品の販売条件について広告を行うこと。
2)同社の行う通信販売に関する商品の売買契約の申込みを受けること。
3)同社の行う通信販売に関する商品の売買契約を締結すること。
期間:
2020年12月18日から2021年6月17日まで(3か月間)
業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して3年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続きを、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続きを行うこととなっています。
(2)指示
1.前記違反行為の発生原因について検証し、違反行為の再発防止策及び社内のコンプライアンス体制を構築して、これを同社の役員及び従業員に、業務停止命令に係る業務を再開するまでに周知徹底すること。
2.同社は、業務停止命令に係る業務を再開するときは、同社の行う通信販売について、特定商取引法の各規定を遵守すること。
上記指示に違反した者には、6月以下の懲役又は100 万円以下の罰金、又はこれを併科、違反が法人の業務の場合には、行為者を罰するほか、その法人に対し100 万円以下の罰金が課せられます。
健康食品や化粧品のネット通販「定期購入」契約に関する処分が続いています。
2019年12月の(株)TOLUTO、(株)アクア、2020年1月の(株)GRACE(グレース)、2020年8月のwonder(ワンダー)に続いて、5件目の特定商取引法違反処分となりました。
業務停止命令となったTOLUTO、wonderでは、「業務の遂行に主導的な役割を果たした者」への業務禁止命令が出されましたが、本件では出されていません。
・TOLUTO、アクア、GRACE wonderにみるネット通販定期購入の特商法違反処分分析
また、「いつでも解約」できると謳って、景品表示法の有利誤認表示と認定された処分事案もあります。
・育毛剤(株)RAVIPAに景表法措置命令。「いつでも解約」「顧客満足度」「使用体験者の年齢」「お手入れなし・あり写真」に不当表示認定
通販の定期購入契約トラブルが増加する中、特商法改正の議論も進み、取り締まりは今後、一層強化される見込みです。
2020年8月19日に発表された「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会報告書」で示された「詐欺的な定期購入商法」への対応のポイントは、以下の通りです。
・「詐欺的な定期購入商法」に該当する定期購入契約を念頭に、「顧客の意に反して通信販売に係る契約の申込みをさせようとする行為」を、特商法における独立した禁止行為とし、規制の実効性を向上させる。
・「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に
係るガイドライン」の見直しを行い、法執行を強化。
・違反のおそれのあるサイトへのモニタリング等を、外部の専門的リソースを活用して法執行を強化する。
・解約・解除を不当に妨害するような行為を禁止する。
・解約権等の民事ルールの創設等も検討。
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「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会報告書」(2020年8月19日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/assets/consumer_transaction_cms202_200819_03.pdf
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購入手続き画面表示のOK、NG具体例など、以下の記事も併せてご確認ください。
・通販の定期購入契約、購入手続き画面表示の具体例を解説(特定商取引に関する法律施行規則改正(平成29年12月1日施行))
≪参考記事≫
・2019年度の通販「定期購入」契約相談が5万件超に。規制強化の議論が進む
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