特商法業務停止命令 化粧品、健康食品及び家電製品の連鎖販売業者「IPSコスメティックス」 (平成28年11月4日)

消費者庁は、11月4日、化粧品、健康食品及び家電製品の連鎖販売業者である(株)IPSコスメティックス(本社:東京都目黒区)に対し、特定商取引法違反で3カ月間の連鎖販売取引に関する業務の一部(新規勧誘、申込受付及び契約締結)停止を命じました。
「IPSコスメティックス」ホームページ

特定商取引法違反の連鎖販売業者【(株) IPSコスメティックス】に対する業務停止命令(3か月)及び指示について
(消費者庁 平成28年11月4日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/pdf/161104kouhyou_1.pdf

 

【取引概要】
化粧品、健康食品及び家電製品の販売事業者であって、同社の会員となって本件商品の再販売又は販売のあっせんをして別の消費者を会員にさせれば、紹介料等が得られるとして、本件商品を購入させる連鎖販売取引を行っていた。
同社が勧誘を行わせている勧誘者は、その友人等に対し、勧誘目的等を告げずに誘い出し、本件商品及び連鎖販売取引の契約について勧誘を行っていた。

【認定した違反行為】

同社又は勧誘者は、以下のとおり、連鎖販売取引の公正及び連鎖販売取引の相手方の利益が著しく害されるおそれがあると認められた。

(1)勧誘目的等不明示(法第33条の2)
勧誘者は、同社の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引をしようとするときに、その相手方に対して、勧誘に先立ち、同社の名称、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る本件商品の種類を明らかにしていなかった。

(2)商品の効能についての不実告知(法第34条第1項第1号)
勧誘者は、本件連鎖販売契約の締結について勧誘をするに際し事実に反し、「認知症になりにくい。」、「アトピーが治ります。」、「がんが治る。」などと、本件商品の効能について不実を告げていた。

(3)契約書面の不交付(法第37条第2項)
同社は、本件連鎖販売契約を締結した場合において、勧誘者を通じて、その連鎖販売契約の相手方に連鎖販売契約の内容を明らかにする書面を交付していたが、一部の者に対して、当該書面を交付していなかった。

3カ月間の業務停止命令とあわせて、同社に対して以下の違反行為の是正を指示しました。
1)化粧品「P.P.1エッセンス」、健康食品「ピュレットワン」及び家電製品「アニオンエア」等の購入者に、効能について正しく説明すること。
(「本件商品を使用することで、あたかも病気の治療若しくは予防又は症状の改善ができるかのように告げていたことがあるが、本件商品についてそのような効果はない。」旨)
2)違反行為の発生原因について調査分析の上検証し、結果を報告すること。
3)再発防止策及び社内コンプライアンス体制について報告すること。

報道では、以下のように報じています。

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「がん治る」会員がうそ マルチ商法に業務停止命令
(日本経済新聞 2016年11月5日)
引用:
同社の会員数は約6万人、商品の使用者は約36万人に上る。昨年8月までの約1年間で約23億円を売り上げたという。
同社を巡るトラブル相談は2013年度から増加。今年10月までの約3年半で各地の消費生活センターに計118件寄せられたという。

———–

業務停止命令に違反した場合は、行為者に対して2年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はこれを併科する手続き(法第70条の2)を、法人に対しては3億円以下の罰金を科する手続き(法第74条)を行うこととなっています。

3月4日に閣議決定された特商法改正案では、悪質業者の取り締まりを強化として、以下の規制が盛り込まれました。
(公布日から1年6月以内に施行)

●次々と法人を立ち上げて違反行為を行う事業者への対処
業務停止を命ぜられた法人の「取締役」や「取締役と同等の支配力を有すると認められるもの等」に対して、停止の範囲内の業務を、新たに法人を設立して継続することを禁止する。
⇒違反した場合、個人は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金
●業務停止命令の期間の伸長(最長1年→2年)
●行政調査「質問」に関する権限の強化
⇒違反した場合、個人は6月以下の懲役又は100万円以下の罰金、法人は100万円以下の罰金(報告徴収・立入検査等の他の検査忌避についても同様に懲役刑を追加)
●不実告知等に対する法人への罰金を300万円以下から1億円以下に引き上げ
●業務停止命令違反に対する懲役刑の上限を2年から3年に引き上げ

《参考記事》
特定商取引法・消費者契約法の改正案が閣議決定。悪質業者の取り締まりを強化

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。