美容系商品・サービスに監視の目。若年者の消費トラブルの傾向と成年年齢の引下げによる影響

2022年4月からの成年年齢引き下げを前に、3月には美容脱毛サービスや脱毛器の取引条件についての不当表示に対する景品表示法の措置命令が立て続けに出されました。

・美容脱毛サービスの金額表示に有利誤認。セブンエー美容、ダイシン、エイチフォーに景表法措置命令(消費者庁 2022年3月3日)

・セドナエンタープライズ脱毛器、期間限定キャンペーンの繰り返しに有利誤認。同一とみなされたキャンペーン内容は?(消費者庁:2022年3月15日)

脱毛関連サービスや商品は学生を含む若者をターゲットにしており、成年年齢引き下げによる、若年者の消費トラブルと被害の拡大防止を意図した行政の意向が読み取れます。
成年年齢引き下げによる消費者被害として、なにが懸念され、どのような注意が向けられているのでしょうか。

若年者の消費トラブルの傾向と成年年齢の引下げによる影響について確認します。


2020年にPIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)に登録された15歳から20歳代の消費生活相談情報は、次のような傾向となっています。

10代に多い美容商材、20代に増える「賃貸アパート」「脱毛エステ」

15-19歳:20,009件
男性は「脱毛剤」935件、「他の健康食品」799件、「オンラインゲーム」659件
女性は「他の健康食品」2,894件、「他のデジタルコンテンツ」506件、「商品一般」392件
男女共に、「脱毛剤」や「他の健康食品」等、美容に関する商品の相談が目立つが、特に「脱毛剤」は、男性(935件)が女性(235件)の約4倍、「他の健康食品」は女性(2,894件)が男性(799件)の約3.6倍となっている。
美容に関する商品の相談には、定期購入のトラブル等が見られる。

20-24歳:45,957件
男性は「他のデジタルコンテンツ」1,402件、「商品一般」1,078件、「賃貸アパート」1,056件
女性は「他の健康食品」1,941件、「他のデジタルコンテンツ」1,677件、「脱毛エステ」1,228件
男性は、美容に関する商品の相談は減少し、「賃貸アパート」が上位に挙がった。女性は「脱毛エステ」が上位に登場。

25-29歳:40,504件
男性は「賃貸アパート」1,646件、「結婚式」985件、「商品一般」954件
女性は「賃貸アパート」1,771件、「他の健康食品」1,368件、「「商品一般」1,090件
男女共に、「賃貸アパート」がトップに。男性は、「結婚式」が上位に登場。女性は「他の健康食品」がいずれの年代でも上位に入っている。
「賃貸アパート」の内容としては、更新時に敷金の追加を要求されたり、退去時に高額な違約金や合意していない修理費を請求されたりするなど、一人暮らしに伴うとみられるトラブルが見られる。

成年年齢引き下げにより、18、19歳の消費者相談増加の懸念

成人においては、親の同意なしに、例えば、携帯電話契約、ローンを組む、クレジットカードを作る、一人暮らしの部屋を借りるといった契約ができるようになります。
また、未成年者においては、事業者の行為の不当性の有無に関わらず取消しの対象となる、民法に定められた契約の未成年者取消権があります。
このような背景から、20歳以上の消費者相談では一人暮らしに伴う「賃貸アパート」契約や「脱毛エステ」の高額ローン契約トラブルが増加していると考えられます。
また、15-19歳の消費者相談件数が20,009件から、20-24歳は45,957件と倍以上に増加していますが、未成年者取消権の効果により、10歳代の消費者相談が抑えられていると考えられます。
成年年齢引下げにより、18歳から親の同意なく契約が可能となり、未成年者取消権がなくなることで、従来から10歳代に多い消費者相談品目に加えて、20歳代前半に多い品目についても18、19歳の消費者相談が増加することが懸念されます。

4月の成年年齢引下げ施行後も、若年者の消費トラブルと被害の拡大防止に向けた監視の目は強まることが予想されます。

《参考記事》
・若者に多い、お試しのつもりが「定期購入」トラブル。適正表示方法をチェック!(平成29年度上半期 東京都消費生活相談)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。