JAROへの苦情、コロナ関連半減、定期購入トラブル、健康食品から化粧品へ(日本広告審査機構 2021年度上半期の審査概況)

JARO(公益社団法人 日本広告審査機構)が、2021年度上半期に消費者から受け付けた苦情や問い合わせに基づく審査概況を2021年12月7日に公表しています。

苦情件数は、新型コロナウイルスの影響により急増した前年同期からは減少となりましたが、コロナ前との比較では依然増加傾向です。
気になる定期購入に対する苦情は減少せず横ばいで、健康食品から化粧品へと業種が移行する状況が見られます。

消費者の広告への苦情の傾向と規制動向を確認してみましょう。

  • 2021年度上半期の「苦情」、「健康食品」大幅減、「化粧品」「医薬部外品」大幅増
  • 苦情媒体「インターネット」は変わらずトップ
  • 「化粧品」「医薬部外品」の広告表表現、効果表示に苦情多数
  • 「見解」16件を発信、内、アフィリエイトサイト関連が5件
  • 定期購入契約の苦情は減少せず横ばい
  • 定期購入トラブル、健康食品から化粧品へ
  • 定期購入規制は2022年度本格化

2021年度上半期の「苦情」、「健康食品」大幅減、「化粧品」「医薬部外品」大幅増

総受付件数は7,292件(前年同期7,969件)で、前年同期比91.5%となった。
相談のうち「苦情」は5,594件(前年同期6,147件)で、前年度比91.0%となった。
「苦情」を業種別にみてみると、上位は以下の通り。

1位「化粧品」480件(前年同期252件)で、前年同期比190.5%。
2位「医薬部外品」361件(前年同期276件)で、前年同期比130.8%。
3位「オンラインゲーム」256件(前年同期268件)で、前年同期比95.5%。
4位「携帯電話サービス」247件(前年同期298件)で、前年同期比82.9%。
5位「健康食品」216件(前年同期585件)で、前年同期比36.9%。

例年上位だった「健康食品」は、前年同期比36.9%まで大幅に減少した。
今回1位となった「化粧品」は、2020年度上の前年同期比160.5%(2019年度上157件)、2位の「医薬部外品」は、2020年度上の前年同期比363.2%(2019年上77件)と、いずれも2年連続の大幅増加となっている。

「化粧品」は、内容では医薬品的な効能効果表示152件、鼻の角栓の画像が気持ち悪いという苦情など224件が多数。媒体では、「インターネット」が480件中437件を占めた。
「医薬部外品」は、内容では育毛剤や口腔ケア商品などで医薬品的な効果を標ぼうした表示が124件、口腔ケア商品の口腔内の表現や殺虫剤の害虫表現が不快という苦情が135件あった。

(JAROの公表資料より引用)

苦情媒体「インターネット」は変わらずトップ

「苦情」を媒体別にみてみると、上位は以下の通り。

1位「インターネット」2,726件(前年同期2,920件)で、前年同期比93.4%。
2位「テレビ」2,171件(前年同期2,530件)で、前年同期比85.8%。
3位「ラジオ」228件(前年同期183件)で、前年同期比124.6%。

2019年度に「インターネット」が僅差で「テレビ」を上回って以来、「インターネット」「テレビ」「ラジオ」の順が続いている。

「インターネット」は前年同期に153.1%、「テレビ」129.0%と大幅に増加したため今期はいずれも減少となったが、それ以前と比べれば依然として増加傾向。
※ 媒体別「インターネット」は広告だけでなく、広告主の自社サイトや通販サイトなどの表示も含む。

「インターネット」の中で苦情が多かった業種は、「化粧品」437件(同195件)、「オンラインゲーム」228件(同206件)、「医薬部外品」225件(同188件)、「健康食品」124件(同444件)、「電子書籍・ビデオ・音楽配信」121件(同92件)。
「テレビ」では「携帯電話サービス」187件(同208件)、「医薬部外品」126件(同77件)、「行政」76件(同55件)、「健康食品」73件(同117件)、「自動車」63件(同104件)の順。
「携帯電話サービス」は料金やプランが分かりにくい、音声がうるさいといったもの、「医薬部外品」は殺虫剤の表現が不快というもの、「行政」はワクチン接種に関するものなどが目立った。

(JAROの公表資料より引用)

「化粧品」「医薬部外品」の広告表表現、効果表示に苦情多数

「苦情」を内容別にみてみると、構成比は以下の通り。

「表示」3,013件(構成比53.9% 前年同期比80.6%)。
 内訳:
 「価格・取引条件等」1,276件(構成比22.8% 前年同期比84.9%)
 「品質・規格等」1,541件(構成比27.5% 前年同期比81.5%)
 「その他」196件(構成比3.5% 前年同期比56.6%)
「広告表現」2,229件(構成比39.8% 前年同期比115.6%)。
「広告の手法」352件(構成比6.3% 前年同期比73.5%)。

(JAROの公表資料より引用)

「表示」は、虚偽・誇大、分かりにくいといった苦情で、広告・表示規制に抵触するものも多い。前年同期に1.5倍と大きく増加したため今期は2割ほどの減少となった。

内訳では、「価格・取引条件等」が苦情全体の22.8%、「品質・規格等」が同27.5%。
業種別件数でみると、「価格・取引条件等」では、「買取・売買」106件で高額買い取りするかのような訴求、「携帯電話サービス」78件で安さをうたう料金プランや割引に関する訴求が多かった。
「品質・規格等」では、「化粧品」152件(前年同期106件)、「医薬部外品」124件(同147件)、「健康食品」99件(同284件)に効果の表示で、「オンラインゲーム」96件に広告とゲーム内容が異なることに関して、苦情が目立った。

「広告表現」は、広告で描かれているものが不快、好ましくないなどというもの。
内訳では、「音・映像」(前年同期比138.2%)、「社会規範」(前年同期比150.6%)が大きく増加。
業種別件数でみると、「音・映像」では、鼻の角栓、歯の汚れ、目の下のたるみを表示した「化粧品」「医薬部外品」(それぞれ224件、135件)の広告に対し、生理的不快感を訴える苦情が多数寄せられた。

「社会規範」については「電子書籍・ビデオ・音楽配信」70件、「オンラインゲーム」40件が多く、前者はストーキング、ひわい、残虐な表現を含む電子コミックや動画配信サービスの広告に対して、後者もひわい、残虐な表現に対して苦情が寄せられた。

「広告の手法」は、 CM の音の大きさ、広告の頻度、ステマ、迷惑な表示方法など。
バナー広告で訴求された内容を見て飛び先の通販ページに行くと、そのようなことは書かれていないというものなどが目立った。

「見解」16件を発信、内、アフィリエイトサイト関連が5件

業務委員会で審議し「見解」を発信したのは16件。(前年同期13件)
内訳は「厳重警告」7件(前年同期5件)、「警告」3件(同7件)、「要望」6件(同0件)、「助言」0件(同1件)。

上半期の「厳重警告」「警告」計10件のうち、アフィリエイトサイトが関わる事例は5件(厳重警告4件、警告1件)を占めた。
前年同期では、「厳重警告」「警告」計12件のうち、アフィリエイトサイトが関わる事例は11件だった。
また、定期購入契約が関わる事例は4件(厳重警告2件、警告2件)だった。

対象業種は「医薬部外品」4件(前年同期1件)、「健康食品」(同7件)、「化粧品」(同3件)、「雑貨品」(同1件)は各3件。
対象媒体は「インターネット」が10件、「テレビ」4件。

(JAROの公表資料より引用)

具体的な警告内容は以下の通り。

2021年度上半期の厳重警告・警告一覧 ( )内は商品・サービス/媒体
≪厳重警告≫
(1)摂取するだけで女性ホルモンが急増して豊胸効果が得られるかのように表示した飲料及び、
(2)上記アフィリエイターに対するもの
(健康食品/インターネット〔まとめサイト内のバナー、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〕)
(3)疾病が改善されるような訴求と分かりにくい定期購入の表示をしたカンナビジオール製品及び、
(4)上記アフィリエイターに対するもの
(雑貨品/インターネット〔アフィリエイトサイト、自社通販サイト〕)
(5)短期間で髪が生えるとうたった育毛剤 (医薬部外品/通販会社のカタログに同梱したチラシ)
(6)短期間で乾燥小じわが伸びると表示されたクリーム (化粧品/通販会社のカタログに同梱したチラシ)
(7)しみ・しわに効果があるかのようにうたったイノシシの油 (化粧品/インターネット〔通販モール〕)

≪警告≫
(8)口臭を除去できるかのようにうたい、この動画をスキップすると二度と割引価格でお試しできないとうたうサプリメント (健康食品/インターネット〔アフィリエイト動画広告、自社通販サイト〕)
(9)使用前後で髪が生えたかのような表示をし、注文時になってサプリメントの併用と定期購入契約であることを伝える育毛剤 (医薬部外品/テレビ)
(10)虫が嫌がる香りや外敵をブロックするなどとうたいながら、虫よけではないと注釈をしているUVスプレー (化粧品/パッケージ)

審査基準:
【厳重警告】
警告相当の広告または表示であって、問題箇所の数、消費者に誤認を与える程度等により、その不当性が特に高いと認められることから、当該広告または表示を直ちに削除または修正することが必要と認められるもの。
【警告】
広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され、消費者に誤認を与えるもの、または広告・表示関係法令に抵触することが明らかであることから、当該広告または表示の速やかな削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【要望】
広告または表示が、実際のものより著しく優良・有利に表現され広告・表示関係法令に抵触する疑いがあるもの、または消費者の誤認を招くおそれがあることから、当該広告または表示の削除または修正を求めることが必要と認められるもの。
【助言】
広告または表示が、消費者の誤解を招く、または社会的・道義的問題等を有する可能性があるため、修正等の検討を求めることが必要と認められるもの。(従来の「提言」から名称変更)

——————————
JARO審査基準改定について
(公益社団法人 日本広告審査機構 2020年6月18日)
https://www.jaro.or.jp/news/20200618c.html
——————————

2021年度上半期の審査状況で特徴的だったテーマとして、「定期購入契約の苦情」「新型コロナ関連の苦情」の2つが挙げられています。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。