通販広告折込チラシ、不適正広告事例解説(JADMA「平成29年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

前回ご紹介した(公社)日本通信販売協会(JADMA)が2017年に実施した通信販売広告実態調査結果(※)より、今回は表示に問題のあった新聞折込チラシの個別広告事例を解説します。

調査報告書では、「一部不適正な表示が見られ、改善が必要な広告」「通販の関連法令に抵触する怖れのある広告」について紹介されています。
特に「通販の関連法令に抵触する怖れのある広告」について、紹介します。

≪問題広告事例≫
事例1:常時「特別価格」、ありえない「通常価格」(二重価格表示広告)
事例2:いきすぎた効能・効果訴求(化粧品、健康食品)
事例3:医師、薬剤師監修・推奨(化粧品、健康食品)
事例4:効果と実験データが不適応(健康雑貨)

《通販に関連する法令に抵触する怖れのある広告》
・特商法の記載事項や返品特約が不記載であり、意図的とも取れる広告。
・商品の説明について、景品表示法や医薬品医療機器等法などの関連法令に抵触するおそれのある表示が散見する広告。
・意図的に消費者の誤認を誘発しようとするような表示が散見する広告。


事例1:常時「特別価格」、ありえない「通常価格」(二重価格表示広告)
A)長期間、継続して「今だけ特別価格」(カーナビ)

B)ありえない「通常価格」(靴下)

C)常時「特別価格」(歳末商材ズワイガニ広告)

JADMAコメント:
A)長期間、継続して「今だけ特別価格」(カーナビ)

カーナビ59,800円と専用バイザー7,980円のセットで67,780円を5日間限定、1万円+500円商品券プレゼントとあるが、当該社は長期間、継続して1万円のカーナビを販売しており、実際に59,800円での販売実績に疑問。
※2016年9月作成のマップであることが小さく注釈されているが、消費者が的確に商品情報を理解するには不親切。

B)ありえない「通常価格」(靴下)
シルク靴下の5日間・1000名限定販売で、1足299円(税抜)で11足目以降1,280円(税抜)の表示から、この商品の通常価格は1,280円と推察される。しかし、限定枚数以上に購入する消費者がいるかは疑問であり、通常価格の信憑性に疑問。
・素材構成の表示ではシルク65%であり、「高級シルク」の表示が適切か、「販売数1,000万足」についても裏付けに疑問。「数値・データ」を表示する場合は、第三者から根拠の開示を求められた際に即時提出できるようにしておく。

C)常時「特別価格」(歳末商材ズワイガニ広告)
1kg通常価格10,800円(税別)であるが、「早割価格」として1,000円(税別)引きで、さらにもう1kg上乗せして2kg、9,800円(税別)で販売。「早割価格」の期間を確認したところ、同一内容、価格で常設販売されていた。常時「特別価格」として表示継続されている場合、その価格が「通常価格」とみなされ不適正とされる。

《参考記事》
【景表法】二重価格表示の注意点~セール時の価格表示~

事例2:いきすぎた効能・効果訴求(化粧品、健康食品)
A)塗るだけで肌の引き上げ(ファンデーション)

B) たった1回でシミが目立たなくなる(オールインワン薬用化粧品)

C)身体の部位に効果(酵素飲料)

JADMAコメント:
A)塗るだけで肌の引き上げ(ファンデーション)

「肌に塗ることで、内側からたるんだ皮膚をググっと引き上げ、ピンと張った肌を演出」という表示に合理的根拠はあるか。
B) たった1回でシミが目立たなくなる(オールインワン薬用化粧品)
美容ライターの個人体験として「たった1回試してみただけで、ほくろのように黒く残ったシミが、翌朝には気にならなくなった」と表示。誇大に効能効果を標ぼう関連法令に抵触するおそれあり。
「第1位」の表示について、口コミサイトの短い限定期間であり、信憑性に乏しい。
C)身体の部位に効果(酵素飲料)
個人の体験談として酵素飲料を飲むことにより髪の毛に効能効果があるとの感想。86歳女性の体験談「飲み始めてから数か月で体年齢が娘なみ」「真っ白だった髪の毛が生え際や後頭部が変化」との体験記事と後頭部の黒くなった髪の毛の画像を掲載しているが、酵素飲料が特定の身体の部位に効果があることは考えられず、関連法規に抵触するおそれ。

《参考記事》
体験談を自社ショップサイトに掲載する際の注意点

事例3:医師、薬剤師監修・推奨(化粧品、健康食品)
A)医学誌に掲載の化粧品(エイジングケア美容液)

B)薬剤師が配合 ダブル特許(サプリメント)

JADMAコメント:
A)医学誌に掲載の化粧品(エイジングケア美容液)

全体的に「医学誌」、「皮膚科医」「ドクター監修」といったコピーを多用し、医薬品的な効能効果や安全性を暗示している。
商品の優良性訴求のために、各種データや多数の受賞実績が紹介されているが、消費者が信頼できる賞や数値データであることの合理的な根拠説明が必要。
表記価格で「定価5,000円(税抜)とあり、「定価」は本やタバコなどに使うことになっており、「通常価格」「販売価格」に変更しなければならない。
B)薬剤師が配合 ダブル特許(サプリメント)
効能効果を暗示させるコピーは見当たらないが、「薬剤師が配合」「薬剤師の会社なら安全」という表示は、医薬品的な暗示ととられるおそれ。「1日分あたり800mg※生換算4000mg」の記載は説明不足。

《参考記事》
医薬品医療機器等法(旧薬事法)NG広告クイズ

事例4:効果と実験データが不適応(健康雑貨)
履くだけで遠赤外線放出・指圧効果(靴下)

JADMAコメント:
遠赤外線の説明部分の実験データに、「※ビザを100度に温めた状態での測定結果です」との注釈があり、常温使用の当該商品の説明として合理的ではない。

景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは

他社広告でやっているから大丈夫ということではなく、正しい法律理解と消費者にわかりやすく信頼される広告制作を心がけましょう。


通信販売取引改善のための通販広告実態調査 (2017年度調査)
(公社)日本通信販売協会 広告適正化委員会 2018年6月

《関連記事》
・通販広告折込チラシ、不適正広告事例解説(JADMA「通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)
平成27年度:
平成26年度:

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。