水素水再び。老化や疾病の予防効果を謳った水素水生成器の販売・レンタル4社に景表法措置命令 (消費者庁 2021年3月30日)

3月30日、消費者庁は、水素水生成器の販売・レンタルサービスの提供事業者4社に対し、
提供する水素水生成器の老化や疾病の予防効果表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

処分を受けたのは、健康食品、家庭用品等の製造、販売業(株)ドクターズチョイス(東京都千代田区)、ウォーターサーバー及び浄水器のレンタル業(株)シンアイ産業(沖縄県浦添市)、通信販売業(株)アイ・ティー・ウェブジャパン(東京都大田区)、清涼飲料水の製造販売業(株)ナック(東京都新宿区)の4社です。

いずれも優良誤認で不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、生成された水素水の効能効果表示について、3社(ドクターズチョイス、アイ・ティー・ウェブジャパン、ナック)が提出した根拠資料は、いずれも表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められず、また、シンアイ産業は期間内に根拠資料を提出しませんでした。

なお、処分を前に、アイ・ティー・ウェブジャパンとナックの2社は、不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙掲載。このため、消費者庁は2社を除くドクターズチョイスとシンアイ産業にのみ、消費者に対する誤認排除措置を命じています。

処分のポイントについて確認します。

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水素水生成器の販売・レンタルサービスの提供事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2021年3月30日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/023608/
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


●違反概要
(1)株式会社ドクターズチョイス
商品・役務:「H2 SERVER」と称する水素水生成器及びそのレンタルサービス
表示媒体、表示期間:
自社Webサイト:2020年11月19日
表示内容:
あたかも、対象商品で生成された水素水を摂取することにより、体内の悪玉活性酸素が排除され、老化防止効果、がんなどの様々な疾病の予防効果、シミやくすみを改善する美肌効果及び筋肉疲労軽減効果が得られるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:H2 SERVER

(消費者庁発表資料より抜粋)

(2)株式会社社シンアイ産業
商品・役務:「ピュールサーバーH+」と称する水素水生成器及びそのレンタルサービス
表示媒体、表示期間:
自社Webサイト:2020年11月19日
表示内容:
あたかも、対象商品で生成された水素水を摂取することにより、体内の活性酸素が中和され、疲労回復効果、老化防止効果、肌荒れ及びアトピー性皮膚炎の改善効果等が得られるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:ピュールサーバーH+

(消費者庁発表資料より抜粋)

(3)株式会社アイ・ティー・ウェブジャパン
商品・役務:「高濃度水素水キット」と称する水素水生成器及びそのレンタルサービス
表示媒体、表示期間:
(株)楽楽エージェントのWebサイト:2020年11月19日
表示内容:
あたかも、対象商品で生成された水素水を摂取することにより、体内の活性酸素が無害化され、肌のたるみ、シミやシワといった老化防止効果が得られるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:高濃度水素水キット

(消費者庁発表資料より抜粋)

(4)株式会社ナック
商品・役務:「マジックポット」と称する水素水生成器
表示媒体、表示期間:
自社Webサイト:2020年11月20日
表示内容:
a) あたかも、対象商品で生成された水素水を摂取することにより、体内の活性酸素が除去され、シミやシワ等の老化の防止効果、生活習慣病の予防効果、炎症やアレルギー症状の抑制効果及び脂質代謝の改善効果が得られるかのように示す表示をしていた。
b) あたかも、対象商品で生成された水素水を摂取することにより、体内の活性酸素が除去され、シミやシワ等の老化の防止効果、炎症やアレルギー症状の抑制効果、脂質代謝の改善効果及びがん、糖尿病、脳神経疾患等の疾病の予防効果が得られるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:マジックポット

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
5社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

水素水の効果については、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」において以下の内容が記載されています。

・俗に、『活性酸素を除去する』『がんを予防する』『ダイエット効果がある』などと言われているが、ヒトでの有効性について信頼できる十分なデータが見当たらない。

・現時点における水素水のヒトにおける有効性や安全性の検討は、ほとんどが疾病を有する患者を対象に実施された予備的研究であり、それらの研究結果は、健康な人が市販の多様な水素水の製品を摂取した時の有効性を示す根拠になるとはいえない。

・水素分子(水素ガス)は腸内細菌によって体内でも産生されており、市販の多様な水素水の製品を摂取した水素分子の効果については、体内で産生されている量も考慮すべきとの考え方がある。

◆「健康食品」の安全性・有効性情報
(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)
https://hfnet.nibiohn.go.jp/
水素水についての記載:
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3259lite.html

水素水と水素水生成器については、国民生活センターが2016年12月15日に表示・広告、溶存水素濃度等の商品テストを実施しています。
更に、2017年3月29日には消費者庁が、(株)マハロ(東京都)、(株)メロディアンハーモニーファイン(大阪府)、千代田薬品工業(株)(東京都)に対して、3社が供給する水素水や水素サプリメントに関する痩身効果等の表示について、景品表示法違反(優良誤認) の措置命令を行いました。
措置命令を受けた(株)メロディアンハーモニーファインの「水素たっぷりのおいしい水」は、国民生活センターのテスト対象銘柄となっていました。

《参考記事》
・水素関連食品 3社に景表法措置命令 商品テスト対象銘柄も
(消費者庁 平成29年3月3日)

・増える「水素水」に関する消費者相談。溶存水素濃度と効能効果(国民生活センター商品テスト 2016年12月)

・水素水事業者、国センに反発。食い違う見解に見る「商品テスト」の目的とは(国民生活センター商品テスト 2016年1月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。