消費者庁は3月11日、次亜塩素酸水を販売していた3事業者に対し、販売する商品の有効塩素濃度及び除菌効果の表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。
措置命令を受けたのは、(株)OTOGINO(オトギノ)(大分県日田市)、(株)マトフアー・ジヤパン(兵庫県神戸市)、(株)遊笑(ゆうわ)(福井県福井市)の3社。
各社が楽天市場やYahoo!ショッピングなど大手通販サイトや自社サイトで販売していた本件商品の、容器ラベルや販売ページに表示していた成分濃度が、実際は、大幅に下回るものでした。
また、除菌効果の表示について、2社(OTOGINO、マトフアー・ジヤパン)が提出した根拠資料は、いずれも表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められず、また、遊笑は期間内に根拠資料を提出せず、いずれも優良誤認で不実証広告規制(※)を用いた処分となっています。
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次亜塩素酸水の販売事業者3社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(2021年3月11日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/023388/
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(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。
内容を確認します。
【3社の概要】
(株)OTOGINO
(大分県日田市)飲料水、化粧品、日用雑貨品等の販売業
(株)マトフアー・ジヤパン
(兵庫県神戸市) 調理器具、食品機械の輸出入及び販売業
(株)遊笑
(福井県福井市)化粧品の製造販売業
【対象商品・表示媒体・期間】
OTOGINO:「OX MIST」と称する商品
容器ラベル:2020年7月9日及び同年8月29日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「おとぎの国」:2020年8月20日
同、自社ウェブサイト「Merry House」、「液晶王国」:2020年9月24日
「Yahoo!ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「おとぎの国」、「おとぎのメディカル」、「液晶王国」:2020年9月24日
「PayPayモール」に開設した自社ウェブサイト「「まぼろし屋」:2020年9月24日
「Qoo10」に開設した自社ウェブサイト「おとぎの国Qoo10」:2020年9月24日
「auPAYマーケット」に開設した自社ウェブサイト「おとぎの国」:2020年9月24日
「ポンパレモール」」に開設した自社ウェブサイト「おとぎの国マリアージュ」:2020年9月24日
自社ウェブサイト:2020年9月24日
マトフアー・ジヤパン:「微弱酸性次亜塩素酸水 アクアトロン MATFER JAPAN」と称する商品
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「MATFER shop」:2020年7月1日
遊笑:「コロバスター」と称する商品
容器ラベル:2020年7月28日
「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「premiumshop.on-line」:2020年8月21日
【違反内容】
●有効塩素濃度に関する表示
3社は、それぞれ、例えば以下の記載のとおり表示することにより、あたかも、商品における有効塩素濃度は、それぞれ、ラベルや自社ウェブサイト記載の濃度であるかのように示す表示をしていた。
OTOGINO:
「塩素濃度 50ppm(製造時)」
マトフアー・ジヤパン:
「当店の製品は有効塩素濃度50ppm、pH値は5.0~6.5で調整されています。」
遊笑:
「(ppm(濃度))100ppm」及び「100%の次亜塩素酸水で100ppmの殺菌力。」
実際:
商品における有効塩素濃度は、それぞれ、表示濃度を大幅に下回るものであった。
●除菌効果に関する表示
以下の記載のとおり表示することにより、あたかも、商品を使用することで、対象商品の内容物に接した菌及びウイルスが、瞬時に99.9パーセント除菌及び除去される効果があるかのように示す表示(OTOGINO、遊笑)、新型コロナウイルスを20秒で99.99パーセント不活性化する効果があるかのように示す表示(マトフアー・ジヤパン)をしていた。
OTOGINO:
例えば
ラベル:「99.9%瞬間除菌」 自社ウェブサイト:「次亜塩素酸水が菌やウイルスなどの有機物に触れると、瞬時に反応して除菌します。」
表示例:
(消費者庁公表資料より引用)
マトフアー・ジヤパン:
自社ウェブサイト:
「新型コロナウイルスを20秒で99.99%不活性化※」
「※NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)が6月26日(金)に公式発表を行いました。」
表示例:
(消費者庁公表資料より引用)
遊笑:
例えば
ラベル:「99.9%瞬間除菌」 自社ウェブサイト:、「理由2 速攻除菌 99%以上の除菌力」、「次亜塩素酸水は高い速攻性と安全性が認められており、様々な用途で便利に使用できます。」
表示例:
(消費者庁公表資料より引用)
実際:
3社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、OTOGINO及びマトフアー・ジヤパンから資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。
除菌用スプレーの成分濃度表示についての措置命令は、昨年12月11日に7社に対して出されています。
・除菌用スプレー 成分濃度表示下回る7社に景表法措置命令。コロナ関連商材に注意
また、12月24日には、国民生活センターが、ウイルス対策等をうたい「次亜塩素酸水」として販売されている商品について、有効塩素濃度やpH、表示等を調べ、情報提供を行っています。
・ウイルス対策の「次亜塩素酸水」、有効塩素濃度や pH、使用期限、使用方法の表示に注意(国民生活センター商品テスト 2020年12月)
次亜塩素酸水は、物体に付着した新型コロナウイルスに対しては有効塩素濃度80ppm以上で表面をひたひたにぬらした場合に不活化できるとされており、仮に十分な濃度があったとしても、瞬時に99.9%の菌やウィルを不活性化することはできず、測定することもできないため実証困難であるとされています。
消毒剤の効能効果や使用方法の表示の根拠として、政府が発表している情報を確認しましょう。
参考:
新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について
(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
≪関連記事≫
・亜塩素酸による除菌効果スプレー3社に景表法措置命令。根拠認められず
(消費者庁 2021年3月4日)
・2度目の緊急事態宣言下、消費者庁の新型コロナウイルス予防商品緊急監視(第4弾)、45事業者42 商品・役務の表示に改善要請 (消費者庁 2021年1月~2月上旬)
・気になる消費者庁のネット広告監視動向と処分。新型コロナウイルス予防関連商品は注意!
・洗浄ジェルのアルコール配合割合ラベル表示に景表法措置命令。輸入業者メイフラワーに処分(2020年5月19日 消費者庁)
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