除菌・消毒・手指洗浄用アルコール製品の消費者相談増加。使用目的とエタノール濃度の表示を(国民生活センター商品テスト 2020年9月)

国民生活センターが、9月17日、除菌や消毒用の液体やジェルの商品について、エタノール濃度や表示等を調べ、情報提供を行いました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、除菌や消毒等を目的とするアルコール含有商品について、「商品にアルコール濃度の表示がない」、「濃度が表示されているが本当だろうか」などといった商品の安全・品質や表示に関する相談が、2019年12月以降2020年7月31日までに、689件寄せられています。

2020 年5月19日には、ハンドジェルのアルコール配合割合が大幅に表示を下回っていたとして、消費者庁により景品表示法の措置命令が出されています。

・洗浄ジェルのアルコール配合割合ラベル表示に景表法措置命令。輸入業者メイフラワーに処分(消費者庁:2020年5月19日)

厚生労働大臣等の承認を受けて販売される「医薬品」と「医薬部外品」以外の「化粧品」や「雑品」は、アルコール濃度についての表示義務はありません。しかし、お客様の混乱を避け、適切な商品選択ができるよう、使用目的とともにエタノール濃度を商品本体や販売サイトに表示されることが求められています。

国民生活センターの商品テスト結果を確認します。


PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)相談状況:
新型コロナウイルスに関連した相談のうち、除菌や消毒等を目的とするアルコール含有商品について、商品の安全・品質や表示に関する相談情報が、2019年12月以降、2020年7月31日までの登録分で689件。
月別にみると、2020年1月は2件、2月は14件、3月は80件、4月は151件、5月は291件、6月は122件、7月は29件。

【主な事例】
・薬局で新型コロナウイルス対策のために除菌アルコール液を購入した。容器に書いてあるイラストでは手を除菌しているのだが、用途には「家具等の除菌」と書いてあり手指用とは書いていない。手指に使えるかわからないので返品したい。

・スーパーでアルコール除菌スプレーを購入した。成分は「水・アルコール」と表示されているが、アルコールの種類について記載がない。エタノールなのかどうか知りたい。

・ネット通販でアルコール除菌スプレーを購入した。サイトの広告では「アルコール 70%」と記載があったが、商品が届きラベルを確認したらアルコール濃度の表示がなかった。アルコール濃度が 60%以上の製品は危険物の表示が必要とされていると聞いたが、これに関する表示もないので実際のアルコール濃度は低いのではないか。

・新型コロナウイルス対策として除菌ジェルを購入したが、エタノール濃度が表示より低い商品があると報道で知った。私が買った商品は「エタノール濃度 62%」と表示されているが、本当だろうかと心配である。

テスト実施期間:
検体購入:2020年6月~7月
テスト期間:2020年7月~8月

テスト対象銘柄:
性状が液体かジェルの商品から合計 30 銘柄(医薬部外品3銘柄、化粧品18銘柄、雑品9銘柄)。

選定方法:
インターネットの大手通信販売サイト(楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピング)において、「除菌 消毒 アルコール」で検索した際に上位に多く表示された、及び神奈川県内の複数のドラッグストア等で販売されていたものを選定。

テスト結果:
1. エタノール濃度
「医薬部外品」に分類される商品:エタノール濃度がいずれも 80 容量%前後
「化粧品」に分類される商品: 20 容量%台~70 容量%台
「雑品」に分類される商品:50 容量%台~70 容量%台

商品本体にアルコール濃度の表示がみられたもの、30銘柄中14銘柄
「医薬部外品」:3 銘柄中3 銘柄
「化粧品」:18 銘中7 銘柄
「雑品」: 9 銘柄中4 銘柄

1 銘柄(No.27)を除き、今回調べたエタノール濃度が表示濃度より1 割以上低いものはなし。
(なお、1銘柄(No.27)についても、表示濃度との差は2割以内)

2. エタノール以外の成分
30銘柄中「雑品」の1銘柄において、わずかにイソプロパノールやメタノールを含むものあり。
※手指の消毒用に使用するものではなく、基本的に物品の「除菌」等を目的にしたもので、商品に使用される全成分の表示の義務なし。

3. 表示、広告
アルコール濃度に関する表示:
・商品本体とウェブサイトの両方に濃度表示がみられた9銘柄中2銘柄に、アルコール濃度に関する記載に差異がみられた。

・濃度表示が商品本体にはなく、ウェブサイトにのみみられたものが6銘柄(「化粧品」3銘柄、「雑品」3銘柄)あり、1 銘柄(No.26)を除き、今回調べたエタノール濃度が表示濃度より1割以上低いものはなし。
(なお、1銘柄(No.26)についても、表示濃度との差は 2 割以内)

「消毒」、「除菌」等の効能効果に関する表示:
「化粧品」、「雑品」に分類される銘柄で、商品本体に「消毒」と表示されているものはなし。
※、「消毒」といった効能効果の表示は「医薬品」と「医薬部外品」にのみ認められる。
製造販売元等が運営するウェブサイトにおいて、「化粧品」の11 銘柄中 4 銘柄(No.5、17、18、21)において、「消毒」や「殺菌」など、化粧品で認められている効能効果の範囲を超えた記載がみられ、薬機法上問題となるおそれがあり。(厚生労働省及び地方自治体により製造販売事業者への指導等がなされた。)

消防法上の危険物に係る表示:
・消防法上「火気厳禁」等の表示が必要と考えられるものが30銘柄中15銘柄あり、そのうち1銘柄柄(No.4)において、商品本体に「火気厳禁」等の表示がなく、消防法上問題となるおそれがあった。

※除菌・消毒・手指洗浄用アルコールは、アルコール濃度が60重量%以上のものが、消防法上の危険物に該当し、500ml 以下の容器に保管する場合には、容器表面に危険物の通称名、危険物の数量、「火気厳禁」、またはそれと同一の意味を有する表示を行うことが求められる。

以上の商品テスト結果より、除菌や消毒等を目的とするアルコール含有商品を販売されている事業者の方は、次の点に留意してお客様への情報提供を今一度チェックされるとよいでしょう。

●消防法上の危険物に該当する除菌・消毒・手指洗浄用アルコール(アルコール濃度が60重量%以上のもの)については、「火気厳禁」等の適切な表示を行う。
●商品について、表示できる効能効果の範囲を確認し、ウェブサイトにおいても適切な表示をする。
●消費者の適切な商品選択のため、商品本体に使用目的を明示するとともにエタノール濃度を表示し、ウェブサイトにも記載する場合は表示を合わせる。
●商品本体にエタノール濃度を表示する場合は、揮発性や製造後の流通や保管も考慮し、表示濃度が維持できるようにする。

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液体とジェルタイプの除菌・消毒・手指洗浄用アルコールのエタノール濃度
(国民生活センター 2020年9月17日)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20200917_4.pdf
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≪参考記事≫
・増える「水素水」に関する消費者相談。溶存水素濃度と効能効果
(国民生活センター商品テスト 2016年12月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。