前回の記事では、食品表示の年末一斉取締りを取り上げています。
この一斉取り締まりは、食品表示法が施行された2015年より夏期と年末に継続して実施されているものです。厳しい取締りの甲斐あってか、これまでの取締り結果では食品表示法の「命令」、「指示」措置件数ともに0件となっています。
安全性、自主的・合理的な選択のために求められる食品の義務表示ですが、消費者から見ると不満があるようです。消費者庁の調査によると、義務表示(一括表示)の各表示事項に対して、文字サイズや情報量の多さに起因する見づらさへの不満を持つ人が34~53%の幅で存在しているという結果が出ています。
(「平成30年度食品表示に関する消費者意向調査」(消費者庁))
新たに義務化された栄養成分表示や加工食品の原料原産地表示など、今後も義務化される表示が増すことが予想されますし、高齢化が進む中で、高齢者がきちんと読み取れる文字のサイズにすることは特に必要です。
そんな中、消費者委員会において、今後のより良い食品表示のあり方が検討され、今年の8月に「食品表示の全体像に関する報告書」が公表されました。
分かりやすく活用される食品表示とするための取組として、一括表示の視認性向上とウェブ活用の可能性にスポットが当てられています。
一括表示の視認性向上については、「分かりやすさ」の定義を明確にするために、また、消費者のより詳細な利活用の実態や問題点を把握するために、表示可能面積に対する一括表示面積の割合や、一括表示のデザイン、フォント、文字サイズ等の情報量の把握等の科学的アプローチに基づく調査をもとに検討を行うべきとしています。
また、ウェブによる食品に関する情報提供については、現在、食品表示という扱いとはされていません。現状、「広告」としての活用や、アレルギー表示や栄養成分表示等の詳細な情報提供といった補助的な食品表示として活用されている状況です。
消費者委員会の提言では、ウェブによる食品表示を検討するために、ウェブ活用に関する優良事例等の現状把握調査を行い、その結果を踏まえて以下のような段階的アプローチを検討しています。
第1段階:脆弱な消費者等(誰一人残さない)への対応、及び食品のインターネット販売への利活用 (ウェブの情報は現行義務表示の範囲内)
→ 容器表示とウェブの併用表示
第2段階:現在の食品表示の情報に加え、消費者が更に知りたい、食品事業者が更に伝えたい情報の提示(現行義務表示+αの情報提供とルール作り)
→ ウェブによる食品表示の補完
第3段階:法令によって、表示事項別に容器とウェブで完全に分けて提供
→ 容器とウェブによる表示の棲み分け
もちろん、ウェブ活用に対する消費者の意向や、消費者が利用する機器、通信等の環境条件整備、食品関連事業者の実行可能性を各段階で検証しつつ、進めていくとしています。
食品についての情報提供のあり方は、今後、大きく変わっていきそうです。
平成30年度食品表示に関する消費者意向調査
(消費者庁食品表示企画課 2019年3月)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/research/2018/pdf/information_research_2018_190531_0001.pdf
食品表示の全体像に関する報告書
(消費者委員会 食品表示部会 2019年8月9日)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2019/houkoku/201908_syokuhinhyouji.html
≪関連記事≫
・食品ネット販売事業者 義務表⽰情報提供は55.6%。仕組みの⾒直しに課題(消費者庁 平成28年9月)
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・困難な食品ネット販売における義務表⽰情報掲載の環境整備
(消費者庁 平成28年9月)
・今後、加工食品購入時に「原料原産地名」を参考にする人は9割超
(消費者庁 加工食品の原料原産地表示に対する消費者意識調査)
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