困難な食品ネット販売における義務表⽰情報掲載の環境整備 (消費者庁 平成28年9月)

消費者庁が「第8回 食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」(※)において実施した事業者実態調査より、前回は事業者による義務表示事項情報の提供状況について確認しました。
今回は、情報の伝達・利⽤、情報提供の⽅法など、情報提供促進のための⽅策検討の一助となるデータを紹介します。

・仕入れ先への義務表示事項情報の要求
・仕入れ先からの義務表示事項情報の提供状況・方法
・仕入れ先から提供された義務表示事項情報の利用状況
・義務表示事項情報のウェブページへの記載方針
・義務表示事項情報のウェブページへの掲載方法
・ウェブページへの掲載情報の制約

ウェブページでの情報提供を手入力で行っている事業者が7割以上で、全体的に情報を提供するための仕組みが整っておらず、伝達された情報を管理するシステムとウェブサイト掲載のシステムが連動していないことが大きなネックとなっています。


●仕入れ先への義務表示事項情報の要求
流通業者から仕⼊先への情報の要求は、「義務表⽰事項に関する情報は全て要求している」が60.7%、「義務表⽰事項に関する情報の⼀部を要求している」が16.8%(合計77.6%)。「提供される情報は取引先に任せている(要求していない)」が22.4%。
(回答対象者:宅配及びネットスーパー)



●仕入れ先からの義務表示事項情報の提供状況・方法

要求した情報は、「全て提供される」が94.0%、「全く提供されていない」が6.0%。
その情報の主な伝達⼿段は、「電⼦情報で提供される(メール、CD等の記録媒体)」が39.7%、「指定フォーマットにデータ⼊⼒をしてもらう」が38.5%、「伝票等の紙媒体で提供される」が35.9%、「表⽰⾒本で提供される」が33.3%などである。

●仕入れ先から提供された義務表示事項情報の利用状況
製造者から伝達された情報を全てウェブページで提供「している」は57.7%。
⼊⼿したすべての情報を提供していない理由は、「伝達された情報を管理するシステムとウェブページ掲載のシステムが連動していないから」(24.4%)が最も多く、次いで「ウェブページに掲載した情報を最新のものに保つことが困難だから」(16.7%)、「消費者から
の要望がないから」(12.8%)であった。
業態別ではネットスーパーにおいて、「システムが連動していないから」(35.5%)、「情報を最新のものに保つことが困難だから」(25.8%)、「消費者からの要望がないから」(19.4%)の各理由の割合が他の業態に⽐べて⾼い傾向がある。

●義務表示事項情報のウェブページへの記載方針
「ラベル表⽰と同様に⼀括して(まとめて)記載」が最も多く66.7%。「情報の詳細は別ページ(メーカーサイトを含む)で確認」は4.9%。
お取り寄せでは、「⼀括して(まとめて)記載」(55.6%)が他の業態に⽐べ低く、「情報の詳細は別ページで確認」(12.7%)が他の業態に⽐べて⾼い傾向がある。

●義務表示事項情報のウェブページへの掲載方法
ウェブページへの掲載⽅法は、「ウェブページに情報を⼿⼊⼒している(委託を含む)」(76.9%)、「ウェブページと商品マスタが連動しており、情報が⾃動で⼊⼒される」(13.6%)、「情報が掲載されているメーカーのウェブページのリンクを貼る」(2.7%)。
企業規模別でみると、⼤企業者では「ウェブページと商品マスタが連動しており、情報が⾃動で⼊⼒される」が26.2%であり、中⼩企業者(7.4%)、⼩規模企業者(12.6%)と⽐べ割合が⾼い。
業態別では、お取り寄せで「ウェブページに情報を⼿⼊⼒している」割合が57.1%と低く、「ウェブページと商品マスタが連動しており、情報が⾃動で⼊⼒される」の⽐率が23.8%と⾼い。逆にネットモールでは、「ウェブページに情報を⼿⼊⼒している」割合が90.5%と高く、「ウェブページと商品マスタが連動しており、情報が⾃動で⼊⼒される」の⽐率が7.8%と低い。

●ウェブページへの掲載情報の制約
ウェブページに掲載する際の情報量については、「制約がある」のは42.4%。
制約内容は、「⽂字数に制限がある」が35.2%で最も多く、「表等の作図ができない」が8.3%、「画像を複数枚貼付できない」が5.7%など。

調査結果より、義務表示事項情報は流通業者の要求に対し仕入先から情報が伝達されており、流通業者に一定程度伝達される仕組みはできていると考えられます。
しかしながら、様々な媒体・方法で情報がやり取りされている現状があり、一部の製造者においては、取引先からの要望に対応できていなかったり、流通業者は伝達された情報を活用できていないケースもあるようです。

製造者から伝達された情報を自社のウェブサイトに掲載しているのは5割で、掲載していないのは4割以上。掲載していない理由として、伝達された情報を管理するシステムとウェブサイト掲載のシステムが連動していないからとする理由が2割以上となっています。
全体的にウェブページで情報を提供するための仕組みが整っておらず、商品マスタの情報とウェブサイト情報が連動している事業者は全体の1割程度に留まり、手入力で情報提供を行っている事業者が7割以上となっています。
「業者間による情報の入手の方法」、「消費者への情報の提供の方法」及び「情報の更新の方法」は、それぞれ密接に関連しており、食品のインターネット販売を行うに当たっては、全体の情報の流れを念頭に体制構築することが求められるといえるでしょう。

今後の情報提供の仕組みや商品マスタ等の情報提供に関するシステム構築について、義務表示事項情報についても関連事業者間で十分考慮されることを期待したいです。

(※)
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食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会
(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/foods/index26.html
食品のインターネット販売における情報提供の在り方に関する調査(事業者)
(消費者庁食品表示企画課 平成28年9月13日)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/160913_shiryou1.pdf
回収期間: 2016年6月29日~8月1日
調査方法 インターネットによるアンケート調査
調査対象:
⾷品をインターネットで販売している事業者:321サンプル
※業態の構成⽐は今回のアンケートにおけるものであり、市場構成⽐とは異なる。
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≪関連記事≫
・食品ネット販売事業者 義務表⽰情報提供は55.6%。仕組みの⾒直しに課題(消費者庁 平成28年9月)

・食品のネット購入時に義務表示事項確認する人は9割!情報を探して確認できなかった場合、76%がそのサイトで購⼊せず(消費者庁 平成28年8月)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。