ダイエット酵素食品5社に対する景表法措置命令。薬機法だけでなく、景表法の考え方を理解する(消費者庁:平成31年3月29日)

前回の記事では、酵素等の成分の作用による痩身効果を標ぼうする食品の販売事業者5社に対する景品表示法違反(優良誤認)の措置命令事案を取り上げました。

いずれも不実証広告規制(※)を用いた優良誤認表示での処分となっています。
処分を前に、ジプソフィラとモイストの2社は、不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙掲載。このため、消費者庁は2社を除く3社(ジェイフロンティ、ビーボ、ユニヴァ・フュージョン)にのみ、消費者に対する誤認排除措置を命じています。しかし、3社は処分に納得しておらず、誤認排除措置も講じられていない状況です。

今回は、処分に対する各社の対応と、最近のダイエット系健康食品に対する処分の傾向について確認します。


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酵素等の成分の作用による痩身効果を標ぼうする食品の販売事業者5社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 平成31年3月29日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2018/#190329_1
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


●違反概要
【対象事業者・商品】
(1)ジェイフロンティア株式会社
商品:酵水素328選生サプリメント
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0003.pdf

(2)株式会社ビーボ
商品:ベルタ酵素ドリンク
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0004.pdf

(3)株式会社ユニヴァ・フュージョン
商品:コンブチャクレンズ
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0005.pdf

(4)株式会社ジプソフィラ
商品:生酵素
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0006.pdf

(5)株式会社モイスト
商品:雑穀麹の生酵素
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_190329_0007.pdf

【違反内容】
表示内容:
あたかも、対象商品を摂取するだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、容易に痩身効果が得られるかのように示す表示をしていた。

実際:
5社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

●処分に対する様々な各社の対応
処分を受け、5社の対応は以下の通り、様々です。

ジェイフロンティア(株
商品名と措置命令を受けたことの報告と併せて、「お客様、関係者にご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げる」「本件を真摯に受け止め、再発防止に向けた所対応を既に行っている。」とホームページに掲載。一方で、「措置命令の内容を慎重に検討し、不服申し立ての要否も含めて、対応を検討する。」としている。

(株)ビーボ
謝罪広告の掲載なし。(2019年4月6日時点)

(株)ユニヴァ・フュージョン
ホームページにおいて、「お客様へのお知らせ」というタイトルで、「過去の弊社ホームページでの表示に対して、措置命令を受けた」と、商品名を特定せずに措置命令を受けたことの報告をするものの、「本件は、ホームページ上の表示に関する指摘であるため、商品の品質自体に問題はない。」「お客様にはご心配をおかけする事となり、深くお詫び申し上げる。」として、不当表示を行ったことに対する謝罪はせず。
「事実関係を確認し、今後の対応を検討中」「お伝えすべき事項につきましては、決まり次第発表する」としている。

(株)ジプソフィラ
「薬機法は注意していたが景表法に関する知識・認識が不足していた。処分を厳粛に受け止め、全社的に法令遵守の方針を明確化し、景品表示法の考え方の周知・啓発、およびチェック体制の確立を行っている」としている。

(株)モイスト
3月20日付で、ホームページに不当表示を認める誤認排除措置の謝罪文の掲載を行う。
「本商品は、毎日の食事を本商品に置き換えて摂取カロリーを抑えることでダイエット効果を得ることを目的としたものであり、本商品の成分が痩身を促す効果を有するものではない。」として、優良誤認表示であったことを認めている。

2019.03.29 ジェイフロンティア(株)
お知らせとお詫び「酵水素328選生サプリメント」に関する措置命令について
(キャプチャ画面)
https://jfrontier.jp/news/869/

2019.03.29 お客様へのお知らせ
(株)ユニヴァ・フュージョン(キャプチャ画面)
http://www.univafusion.com/contents/info.html

2019.3.29 お詫びとお知らせ 株式会社ジプソフィラ
http://www.gypsophila-inc.co.jp/information/post-1111/

平成31年3月20日 お詫びとお知らせ 株式会社モイスト
https://moist-corp.jp/pdf/owabi_190320.pdf

●薬機法だけでなく、景表法の考え方を理解する
今回の事案では、例えば、ジェイフロンティアの表示には、「さすが328種酵素エキス※1の威力! 酵素エキス※1としっかり燃焼運動!!(食事管理)」、「ヘルシーな食事と適度な運動+生サプリ生活を続けた結果、なりたい自分になれました!」等と記載されており、薬機法対策を施していることが読みとれます。

しかし、上記の体験モデルでは「約3か月で-12.7㎏」、「約5か月で-14.5㎏」となっており、果たして、誰でも容易に同様の効果が期待できるか否かが問題となります。消費者庁の見解(※)として「適切な運動や食事制限をしながら、人が痩せることができるのは、6か月間で4kg から5kg 程度までである。」と示されています。

適度な運動や食事制限、置き換えによるダイエット効果であることを表記していたとしても、商品として「容易に痩身効果が得られる」ことの客観的根拠が認められなければ、景表法上の優良誤認表示とみなされます。

・景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは

平成31年1月のはぴねすくらぶの「酵母と酵素deさらスルー」、平成30年10月のシエルの「めっちゃたっぷりフルーツ青汁」、平成29年9月のティーライフの「ダイエットプーアール茶」の事案においても、同様の違反内容となっています。

(※)
●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf

●健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について
(全部改定 平成 28 年6月 30 日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_8.pdf

《関連記事》

はぴねすくらぶの酵素サプリ 成分の作用による痩身効果に景表法措置命令 (消費者庁:平成31年1月17日)

・課徴金1億886万円 シエル「置き換えダイエット」系青汁に景表法措置命令

・痩身系健康茶、ティーライフ(株)に対し景表法措置命令。体験談広告の問題点は?
(消費者庁:平成29年9月29日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。