年も押し迫った昨年末26日に飛び込んできた、日産の景品表示法違反の課徴金取り消し発表には、少なからず驚きました。
ご存知の通り、日産の課徴金事案は、三菱自動車の燃費不正問題(課徴金制度の第1号案件)に絡み、三菱自よりOEM供給を受けて軽自動車を販売していた同社にも、2017年6月に317万円の課徴金納付命令が出されていたものです。
日産は消費者庁の命令を不服として2017年9月に審査請求を行い、同庁は同社の主張内容や提出証拠を精査。また、同庁は2018年7月に行政不服審査会へ諮問したところ、10月末に命令取り消しの答申を受け、その判断を受け入れて12月末に命令を取り消しました。
(課徴金命令を下って約1年半が経過しています!)
消費者庁の課徴金納付命令取り消しは、2016年4月の制度施行以来初めてで、措置命令も含め、命令が覆ることは稀なことです。
景表法の課徴金制度は、不当な表示を防止するため、不当な表示を行った事業者に経済的不利益を賦課するとともに、不当な表示により消費者に生じた被害の回復を促進することを目的に導入されました。
2018年末時点で事業者数24社に対して課徴金納付命令が出されています。
本件で争点となったのは、日産が不当表示について、景表法第8条第1項ただし書に定める「相当の注意を怠った者」ではないと認められるか否か。
措置命令においては、故意、過失の有無を問わない無過失責任のため、取引先からの誤った情報による意図しない不当表示も処分を受けます。しかし、課徴金に関しては、違反事業者が「不当な表示であることを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でない」と認められるときは、課徴金を賦課されないこととされています。
つまり、日産の本事案のように、OEM供給を受けていた事業者の不正データのせいで意図せず不当表示を行ってしまった場合、措置命令は免れないものの、「相当の注意を怠った者」ではないと認められれば、課徴金は免れるということです。
相当注意義務違反については、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたか否かにより、個別事案ごとに判断されることとされ、ガイドラインに想定例が示されていますが、OEM供給のケースは示されていませんでした。
そういう意味では、消費者庁が相応の合理性があると認めた今回の行政不服審査会の答申の結論的判断は、一つの基準を示すことになると言えるでしょう。(詳細は、消費者庁の公表した裁決書を参照ください)
ともあれ、意図しない不当表示を行ってしまうリスクを回避するためには、品質管理及びコンプライアンス意識の高いパートナー選びと、自社の広告管理体制整備が重要であることは変わりません。
◆日産自動車株式会社に対する課徴金納付命令の取消しについて
(消費者庁 2018.12.26)
http://www.caa.go.jp/notice/release/2018/#181226
◆不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160208premiums_3.pdf
《関連記事》
・燃費不正問題、三菱自、日産に追加の景表法課徴金納付命令。自主報告と返金措置で大幅減額(消費者庁:平成29年6月14日)
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