通販CMの約6割、視聴者限定価格訴求に注意(JADMA「平成27年度 通販広告実態調査(通販CM調査編)」)

(公社)日本通信販売協会(JADMA)が2012年度から実施している通信販売広告実態調査において、2015年は新たに通販CM調査(※)を行っています。インフォマーシャル形式の通販広告の実態と、表示に問題のあったCM広告事例を解説します。

【通販CMオンエア状況】
調査対象として、1週間で590件の通販CMを抽出(同じ素材を30秒CM、60秒CMなど秒数別に編集した同一商品のCM含む)。
同一商品のCMを1件のオリジナルCMとカウントすると215件。広告主は122社で、その内JADMA会員社が82社(67.2%)であった。
平均して1社あたり2商品、5種類の通販CMをBS放送6局でオンエアしていると推計できる。

●通販CM放送秒数、60秒が35%、60~120秒で約8割を占める
60秒が204件(34.6%)で最多、次いで120秒185件(31.4%)、90秒72件(12.2%)。
30秒CMは健康食品の無料お試しセット、語学教材の無料配布等取引条件説明を簡略化できるものであった。

●通販CMで最も多いのは健康食品・医薬品で43%
商品分類別では、健康食品・医薬品254件(43.1%)で最多、次いで化粧品・美容・健康用品140件(23.7%)、食品・飲料58件(9.8%)。
また、健康食品・医薬品はオリジナルCM68件を編集し254件のCMを放送していることから、多様なバージョンがあることが読み取れる。

●割引、お試し、無料モニターなど、視聴者限定価格訴求CMは約6割
215件の通販CMのうち、割引価格で販売するCMは84件(39.1%)、特別商品をお試し価格で販売するCMは29件(13.5%)、無料モニターは12件(5.6%)となった。
また、割引価格を提示するCM84件のうち、初回限定価格を訴求するものが71件、放送終了後30分以内限定価格CMが27件、先着限定価格CMが22件あった。

【不適正な表示事例】
≪取引内容に関する広告表示について≫
取引内容に関する表示については、表面的に問題とされる箇所はなったものの、実態を検証すると価格表示や限定サービスに問題のあるケースが散見された。
●価格表示(通常価格、割引価格、限定価格)に問題あり。
≪問題広告事例≫
(健康食品)
CM:「チョット待ってください。7日分初回限定1袋1,980円にさらに1袋付けて1,980円」と説明。
Webショップ:7日分お試しパック(2袋)1,980円で販売されており、1袋990円となる。→通常1袋990円の商品を2袋セット販売していると考えられ、1袋の価格に整合性がなく、価格表示に信頼性が欠ける。

(カー用品の「日よけ」)
CM:「通常1枚6,980円(税込)の商品に、もう1枚サービスして2枚6,980円でお届け」ととれる説明。
Webショップ:通常販売している単品価格は3,980円(税込)である。
→1枚サービスして特別価格ということではなく、セット価格としての表示とし、単品では3,980円(税込)であると説明すべき。

(輸入洗剤)
CM:「スプレーとブラシ3つ、そして洗剤のパウダーパック4本が6,980円(税別)。CM視聴者特典として30分以内申し込みの場合に、パウダーパックをさらに20本プラス。」と説明。
Webショップ:CM同様のパウダーパック24本セットが、今だけ2,000円引きの5,980円(税別)として販売。
→同じ内容の商品がCMとWebで異なる限定条件・価格設定となっており、通常価格が不明確。

(炊飯器)
CM:通常価格で1万円となっている。
Webショップ:1万円は記念価格で2台目以降は59,800円と表示。
→同じ商品がCMとWebで異なる通常価格となっており、どちらが事実なのか疑念が湧く。

●限定サービスに問題あり。
(医薬品)
CM:通常価格3,800円のところ、「初回限定特別セール30分以内半額」としているが、別途「10分以内半額」という別バージョンCMあり。
Webショップ:初回限定1,900円(税込)とあり。
→CM視聴者の時間限定の特典のように見せているが、常時、初回半額で販売しており限定条件が事実と異なる。

≪商品内容に関する広告表示について≫
商品内容に関する表示については、多くは適正な通販CMであったが、一部問題個所があるCMが見られた。
効能効果の誇大表現。
(洗顔石鹸)
一人の女性に顔の半分だけ当該商品で洗顔した変化を、1回、10日間で実験。その結果を使用前・使用後の画像で比較し、個人の感想(こんなに変わるなんてすごいー)紹介。「個人の感想であり、効能効果を保障するものではありません」と注釈表示はあるが不適切。

(ミドリムシ原料サプリメント)
ナレーションで体験者の痩せたという事実を語らせ、画像で「飲むだけ・美しく・スッキリ」「2週間で-10.6cm」と表示。関連法規に抵触するおそれあり。

●数値表示の説明不足。
(乳酸菌サプリメント)
約3兆個の乳酸菌が取れるとナレーションと画像で表示され、一瞬、1日に3兆個の乳酸菌が摂取できると思わされるが、ナレーションの最後に1袋で乳酸菌が3兆個取れると表示。
本来は1日目安の摂取量とするのが望ましい。

本調査委員会では、不適正な表示を行っている通販各社に対する改善指導や、放送局への協力要請を行っています。特にテレビ通販ではJADMA会員社のCMが大多数を占めることから、Webショップ、紙媒体、電波媒体の広告を総合的に管理し、通販会社として消費者に信頼されるよう継続的指導を行うとしています。


通信販売取引改善のための通販広告実態調査 (2015年度調査)
(社)日本通信販売協会 JADMA NEWS
https://www.jadma.or.jp/pdf/news/2016_06.pdf

<調査概要>
調査対象:関東地区が放送エリアであるBS放送6局。
対象放送局でオンエアされた300秒以内の通販CMを自動CM判定システムによって抽出。
調査期間::2015年11月30日(月)から12月6日(日) 1週間

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《関連記事》

・通販広告折込チラシ、商品内容不適正広告「化粧品」が約5割、「健康食品」が約3割(JADMA「平成27年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

・通販広告折込チラシ、不適正広告事例解説
(JADMA「平成27年度 通販広告実態調査(新聞折込チラシ編)」)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。