健康食品の品質管理と健食ビジネス戦略 (消費者庁 平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)

先日の記事では、トクホ制度初の表示許可取消しから端を発した、消費者庁によるトクホと特別用途食品の品質管理調査の結果を取り上げました。

懸念されたトクホについてはひとまず問題なしでしたが、現在販売されている366品目のうち、半数以上の195品目が外部の試験・検査機関による検査ではなく、自社検査だったことにやや不安が残ります。

トクホ制度は規制緩和により、事業者から国への定期的な報告義務はありませんが、企業の自主管理に委ねられているからこそ、取得して終わりではなく、透明性の高い厳しい品質管理が求められます。

一方、機能性表示食品については、トクホや特別用途食品のような許可制ではなく、国の事後チェックを前提とした制度です。

27年度の国の検証事業では、「届け出られた研究レビューの検証」「機能性関与成分の分析方法の検証」「機能性表示食品の買い上げ調査」を行っています。
結果は、研究レビューの質に問題があったり、分析法について関与成分の同定や定量可能性が低い、または不可能なケースがあったり、商品中の関与成分の含有量が表示値を下回ったり、過剰に含まれていたり、ロット間で大きなばらつきが見られる等の品質管理上の問題点が見つかっています。

そんな中、八幡物産(株)が同社の販売する機能性表示食品『北の国から届いたブルーベリー』について、機能性表示の届出を11月25日に取り下げ、今後は「いわゆる健康食品」として販売すると発表しました。
(同品の取り下げは、昨年9月30日の取り下げに続いて2度目)

取り下げの経緯について、八幡物産は消費者庁の検証事業を踏まえて調査した結果、「採用論文中に科学的な根拠の弱いものが含まれていることがわかり、機能性表示を行うには十分ではないとの判断を下した」としています。
同商品については、以前から日本アントシアニン研究会より成分や機能性表示の内容に問題があると指摘され、同研究会と八幡物産との対立が報じられていました。
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八幡物産、『北の国から届いたブルーベリー』が2度目の撤回へ
(NETIB-NEWS  平成28年11月16日)
http://www.data-max.co.jp/281116_dm1217/

健康アントシアニン研究会と八幡物産、機能性表示食品の届出情報をめぐり対立
(NETIB-NEWS  平成28年7月12日)
http://www.data-max.co.jp/280712_dm1217/
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一つ間違えば、許可取消や表示違反のリスクの高い健食ビジネス。それぞれの食品制度を俯瞰して、戦略的な事業判断が求められます。

同時に、消費者に対して正しい啓発活動を行うことで、「毎日の健康をサポートするパートナー」として企業ブランドを確立できるかもしれません。

◆機能性表示食品制度の施行状況について
(消費者庁  平成28年5月26日) 
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/other/pdf/kinousei_kentoukai_160526_0002.pdf

《消費者庁による予算事業》
(平成27年度:機能性表示食品制度における機能性に関する科学的根拠の検証)
●届け出られた研究レビューの検証事業
専門家によるワーキンググループにより、平成27年10月31日までに公表された122食品のうち、51編の研究レビューを対象に行った。
【研究レビューの検証内容と結果】
① 「PRISMA声明チェックリスト」に基づいた検証
計画的に実施され、丁寧な記述をしている研究レビューもあった。しかし、不備のある(評価の記述がない、あるいは不十分な)研究レビューが半数以上を占める項目もあった。
② 検索に関する適正性の検証
評価結果にばらつきがあった。適切にキーワード等を組み合わせ、最適な検索式をデータベースの特性に合わせて設定している検索もあったが、検索キーワードが不足しているものや検索対象年、アウトカム等で不必要に絞り込みを行い、検索式を正しく記載していないものもあった。
③ 個々の論文のバイアスリスク評価の適正性の検証
バイアスリスクの評価については方法、結果、考察ともに十分な記述がされていないものが多かった。
④エビデンス総体の評価の適正性の検証
十分に記述されていないものが多く、第三者がエビデンス総体の評価内容を十分に把握し、理解できるものは少なかった。
⑤メタアナリシスの手順・記述の適正性の検証
メタアナリシスの手順及び記載はほぼ十分な内容であった。
⑥その他(レビュアーの特性、ハンドサーチの実施、スクリーニング者の独立性、採用した研究デザイン、疾病罹患者データ採用の有無) 1

●機能性関与成分の分析方法の検証
平成27年4月1日から9月30日までの間に届出された機能性表示食品146件(撤回届が提出されたものを除く。)機能性関与成分164成分を対象。
【検証事項と結果】
(1) 定性確認について
・ 記載された分析法により、機能性関与成分として届出された成分を定性的に同定可能か(特異性があるか)。

(2) 定量確認について
・ 記載された分析法により、機能性関与成分として届出された成分を定量可能か。
・ 届出された分析法で第三者が実際に分析可能かどうか。

●機能性表示食品の買い上げ調査
平成27年4月1日から9月30日までの間に届出された機能性表示食品(146件)のうち、17件の機能性表示食品(機能性関与成分としては6成分)について、買上調査を実施。
【検証結果】
届出書類に記載されている分析方法の多くに不備がみられ、そのまま実施することが困難であったことから、分析法を一部修正するなど補足して実施したところ、
・ 機能性関与成分の含有量が、表示値を下回っている、若しくは過剰に含まれている
・ 同一製品にもかかわらず2ロット(又は2パッケージ)間でのばらつきが大きい
など、品質管理上の問題点が見つかった。

≪関連記事≫

・トクホの更新制度は復活するのか?保健機能食品の品質管理規制

・強まる健康食品への規制 トクホ広告審査と業界の自主規制の取り組み
(日健栄協 第4回 特定保健用食品広告審査会)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。