急増!健康食品・化粧品・飲料のネット通販定期購入トラブル 法的注意点は?

通信販売におけるホームページやSNS等の広告で「お試し価格」「初回無料」などをうたった健康食品、化粧品、飲料の定期購入に関する相談が急増しています。
定期購入契約を条件として商品を通常価格より安い初回価格を設定して販売していたところ、消費者が定期購入であることを認識しておらず、初回価格で「1回だけ」購入するつもりだったことからトラブルとなっています。

PIO-NETに寄せられた相談件数は年々増加傾向にあり、2015年度の相談件数(5,620件)は、2011年度(520件)の10倍以上に増えていると、国民生活センターが6月に公表しました。

定期購入相談件数2016

トラブルの内容は、以下のようなものが多くみられます。
・消費者が自主的に停止手続きをしないと自動で定期購入へ切り替わってしまう。
・消費者の認識が「お試し」「1回だけ」でありながら実際には定期購入契約になっている。
・解約を申し出ようとしたところ、事業者へ電話がつながらない。
・初回価格だけ支払えばよいと思っていたのに事業者から通常価格を請求された。

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相談急増!「お試し」のつもりが定期購入に!?
-低価格等をうたう広告をうのみにせず、契約の内容をきちんと確認しましょう-
(東京都国民生活センター 平成28年6月16日)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160616_1.html
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同様に都及び都内消費生活センター等に寄せられた相談でも、インターネット取引での「商品」に関する相談では、「健康食品」に関する相談が最も多く、27年度は839件で前年度(357件)の2.4倍に。特に10歳代の相談は3.9倍に急増しています。
健康食品相談件数2015

【相談事例】お試しできるサプリの未成年者契約
SNSに「モニターコース初回100円お試し」と書いてあったダイエットサプリを申し込んだ。1回だけ試すつもりで注文したが、実際は定期購入になっており、翌月も同じ商品が届き、1万円と高額だった。販売会社に電話し「定期購入を止めてほしい、返品したい」と申し出たが「規定回数を購入しないと解約できない」と言われた。自分は高校生で親の承諾は得ていない。 (契約当事者/10歳代女性)

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平成27年度消費生活相談概要
相談件数は12万件以上!高齢者の相談は依然として高水準で推移!
インターネット取引が全相談に占める割合は過去最高!
(東京都 平成28年6月6日)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2016/06/60q66300.htm
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過去にも同様のケースの注意喚起がなされています。

・健康食品のネット通販定期購入解約トラブル。続く行政の注意喚起。消費者契約法にも注意

(東京都 平成28年1月)
・「お試し」のつもりが継続購入に。消費者相談事例に学ぶトラブル対策のヒント
(東京都 平成27年7月)

事業者として事例のような消費者とのトラブルを回避するために、以下の点に注意が必要です。

●定期購入申し込みであること、途中解約ルールが明示的であるか

お試し価格購入が定期購入を前提とした契約であるならば、以下の契約条件を明示し、同時に、途中解約ルールを予め消費者に納得して契約してもらう配慮が必要です。

・購入必用回数
・購入必要期間
・購入必用金額
・解約手続き方法
・途中解約した場合の精算方法

なお、広告中に記載されていたとしても、気付きにくい位置や読みにくい表示である場合、消費者は誤認してしまい、景品表示法上、不当表示とみなされるおそれがあります。
魅力的なお試し価格を強調して表示(強調表示)し、その内容についての制約条件(お試し価格は定期購入が条件、消費者が自主的に停止手続きをしないと自動で定期購入へ切り替わってしまう等)や、例外条件(途中解約の場合は通常価格を支払う等)を「注意点」として表示することを「打ち消し表示」と呼んで、公正取引委員会が事業者に求められる表示上の留意事項を公表しています。

・消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項
(消費者庁)

以下の記事も参照ください。
・「定期購入」にまつわる消費者とのトラブル事例と対策のヒント

●消費者契約法にも注意
また、定期購入型の通販においては、消費者契約法にも注意が必要です。
今年5月に成立した消費者契約法改正では、消費者の利益を一方的に害する条項を記載した10条について「消費者の不作為をもって当該消費者が新たな契約の申込み又は承諾の意思表示をしたものとみなす条項」を不当条項として例示するといった法改正を行いました。

端的にいうと、「消費者が何の意思表示もしなかった場合は新たな契約を結んだとみなす」といった内容の規約は無効とする、というものです。

たとえば、定期購入型の通販や、有料会員サービスなど年1回の更新時といったときに、解約の意思表示をしなければ自動更新されてしまう、といったビジネスモデルが規制対象になると考えられます。

「お試し購入→定期購入」のマーケティング施策を行う際は、法改正動向を注視しつつ、消費者トラブルとならないよう十分配慮が必要です。

◆消費者契約法の一部を改正する法律案(平成28年5月成立)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/190/meisai/m19003190045.htm

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。