消費者庁による「インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する改善指導」(2025年4月~6月)の結果から、健康食品広告の直近の監視動向を分析します。
消費者庁は、創設された2009年度より本監視事業を継続実施しており、四半期ごとに結果を公表しています。監視は、ロボット型全文検索システムを用いたキーワード無作為検索により、検知されたサイトの目視確認により行われています。
今回の監視では139事業者(140商品)について、健康増進法に違反するおそれのある文言等を含む表示がありました。消費者庁はこれらの事業者に対し、表示の適正化を求めるとともに、ショッピングモール運営事業者へも表示の適正化について協力を要請しています。

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インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示に対する要請について
(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/#internet
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「いわゆる健康食品」の改善指導が8割超
商品区分別では、カプセル、錠剤、顆粒状等の「いわゆる健康食品」が118商品と、指導件数全体の84%を占めています。「飲料等」が15商品、「加工食品」が7商品と続き、今回の監視では「生鮮食品」は0でした。
「いわゆる健康食品」が改善指導の多い商品区分である傾向に変化はありませんが、前回監視(2025年1月~2025年3月)の47%から大幅にその割合が拡大しています。
【適正化を要請された健康保持増進効果等の表示例】
(太字は前回監視(2025年1月~2025年3月)にも挙がっていた表示例)
A. 疾病の疾病の治療・予防効果
《飲料等》花粉症対策、抗アレルギー、鼻炎症状改善
《いわゆる健康食品》心筋梗塞予防、認知症予防
B.身体の組織機能の一般的増強・増進効果
《加工食品》腸内環境改善、免疫力強化、疲労回復、貧血予防、視力回復、冷え対策、良質な睡眠効果、目や鼻の不快感
《飲料等》整腸作用、抗酸化作用、アンチエイジング、ダイエット
《いわゆる健康食品》
ダイエット、若返り・老化防止、アンチエイジング、サビない身体づくり、抗酸化作用予防、成長・身長促進、貧血改善、活性酸素除去、睡眠改善、ストレス緩和、免疫力アップ、記憶力向上、集中力アップ、イライラ改善、冷え性対策
C. 特定の保健の用途に適する旨
《いわゆる健康食品》おなかの調子を整える
D. 美容関連効果
《いわゆる健康食品》
美肌効果、肌に潤い・弾力を与える、ハリ・ツヤ・プルプルの維持、美白に有効、紫外線対策、UVケア、肌の保湿対策
E.「健康保持増進効果等」を暗示的又は間接的に表現するもの
《いわゆる健康食品》「血液サラサラ効果」
【今回、表示されていた健康保持増進効果等(一部)】

監視対象になりやすい表示の傾向
適正化を要請された健康保持増進効果等の表示には、以下のような傾向が見られます。
●季節性のあるワードに注意
監視時期(4月~6月)と関連し、その時期に消費者の関心が高まるワードが集中して監視対象となっています。
春の不快感対策: 「花粉症」、「アレルギー」「鼻炎症状改善」
初夏の美容対策: 「紫外線対策」、「UVケア」、「美白」
●継続監視表示に注意
本監視事業は四半期ごとに継続して実施されています。繰り返し監視対象となった表示には特に注意が必要です。今回監視で適正化を要請された表示のうち、前回監視(2025年1月~2025年3月)にも挙がっていた表示は以下のものとなっています。
疾病の治療・予防効果表示:「認知症」
身体の組織機能の一般的増強・増進効果表示:
「腸内環境改善」、「貧血」、「冷え性」、「抗酸化作用」、「アンチエイジング」、「ダイエット」、「抗酸化作用」、「成長・身長促進」、「記憶力」、「集中力」。
美容関連効果表示:「美肌」、「肌の保湿」
健食広告留意事項の一部改定で追加された例示も要チェック
虚偽・誇大広告規制の判断基準とされているガイドライン「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」は、2022年12月に一部改訂されています。
本改定では、対象となる「健康保持増進効果」の事例として、「新陳代謝を盛んにする」、「若返り」、「アンチエイジング」、「免疫力を高める」、「細胞の活性化」、「治癒力が増す」、「〇〇〇は、活性酸素除去酵素を増加させます」、「歩行能力改善」が追加されています。
また、「『健康保持増進効果等』を暗示的又は間接的に表現するもの」として追加された「妊活」、「腸活」、「減脂○○」、「デトックス○○」等の例示が含まれています。
今回、適正化を要請された健康保持増進効果等の表示例にも、本改定で例示が追加された「アンチエイジング」、「活性酸素の除去」が含まれています。
改訂された留意事項に基づき網羅的な監視が行われていますので、コンプライアンス対応として必ず押さえておきましょう。
《参考記事》
・健食留意事項の一部改訂、違反表示事例が充実し、より明示的に
(「健康食品に関する景品表示法および健康増進法上の留意事項」一部改訂 2022年12月5日)
法執行の重点の移行! 特商法による誇大広告への警戒
健康食品広告に対しては、これまで景品表示法と健康増進法との一体的な執行が厳しく行われてきました。
景表法・健増法の処分実績
| 法令 | 処分・指導 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
| 景品表示法 | 措置命令 | 8件 | 4件 (ペット用サプリ含む) | 0件 |
| 健康増進法 | 行政指導 (誇大表示の禁止違反のおそれ) | 12件 | 10件 | 0件 |
しかし、近年の処分動向を見ると、2024年度は景品表示法や健康増進法による措置命令・指導件数がいずれも0件となりました。
法執行の重点が特商法へ移行
この件数減少は、「規制が弱まった」と判断するのは早計です。
これは、健康食品を含む美容・健康商材の定期購入契約における消費者トラブルの拡大を背景に、消費者庁による法執行の重点が特定商取引法(特商法)へと移行しているためです。
景品表示法に代わって、特商法の以下の条項を適用条項とした処分が多数行われています。
・誇大広告(12条)
・最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)
特定商取引法による処分事例(ダイエット食品)
・ダイエット食品の通販定期購入でフォックスに特商法業務停止命令(6カ月)。誇大広告+最終確認画面の表示義務違反による法執行7事案目 (消費者庁 2025年3月14日)
健康食品を扱う事業者は、景表法・健康増進法に加え、特商法による処分のリスクに対応したコンプライアンスも必ず押さえておく必要があります。
【コンプライアンス対応のための参考情報】
国の考え方を理解する上で、以下の消費者庁の資料を併せて確認しておきましょう。
●健康⾷品に関する景品表⽰法及び健康増進法上の留意事項について(要約版)
(パンフレット:消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/161121premiums_2.pdf
●健康食品Q&A(2024年12月 消費者庁)
●健康食品5つの問題(2024年7月 消費者庁)
≪関連記事≫
・インターネットにおける健康食品等の虚偽・誇大表示の監視状況(消費者庁)
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