東京都は、2024年度に実施したデジタル広告監視の結果を公表しました。(※1)
景品表示法に違反するおそれのある不当表示について、通販事業者に対し改善指導などを行っています。2024年度からは、これまでのインターネット広告に加え、SNS広告も監視対象となりました。
2024年度は341件(296事業者)に改善指導が行われています。
東京都はこの結果を受け、関連の業界団体と検索サイト・ショッピングサイトの関係事業者(21団体)に対して、景表法や関係法令の順守について、より一層の周知を図ることなどを要望。同時に、消費者庁に対して情報提供を行っています。
この監視事業は2011年度から実施されており、インターネット通販サイトの広告・表示について年間を通し継続的に調査しています。開始当初の2011年度と12年度は監視件数が2万件でしたが、その後2022年度まで24,000件が継続され、2023年度からは16,000件に縮小されました。そして今回、2024年度においてSNS等広告監視を240件追加しています。
(※1)
令和6年度インターネット広告表示監視事業及びSNS等広告表示監視事業実施報告(東京都)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/keihyo/20250828.html
SNS広告は「有利誤認」や「ステマ」の改善指導が多い傾向に
改善指導件数は、インターネット広告が181件(174事業者)だったのに対し、SNS等広告は、160件(122事業者)でした。
ただし、指導広告の出現率を見ると、母数となる監視件数がインターネット広告は16,000件、SNS等広告は240件であることから、インターネット広告は1.1%、他方、SNS等広告は66.7%と、SNS等広告が大きく上回っています。
インターネット広告に対する指導内容(181件:174事業者)
優良誤認のおそれ(品質・規格の誤認):143件(79%) 健康食品、化粧品、雑貨(※2)等
有利誤認のおそれ(価格の誤認):32件(17.7%) 役務、雑貨、健康食品等
その他誤認のおそれ(ステルスマーケティング):30件(16.6%) 健康食品、役務、医薬部外品等
(※2)
雑貨:着圧レギンス、美顔器、フェイスマスク、脱毛器、EMS機器、除菌スプレー等
SNS等の広告に対する指導内容(160件122事業者)
優良誤認のおそれ(品質・規格の誤認):154件(96.3%) 健康食品、医薬部外品、化粧品等
有利誤認のおそれ(価格の誤認):53件(33.1%) 健康食品、化粧品、医薬部外品等
その他誤認のおそれ(ステルスマーケティング):68件(42.5%) 健康食品、役務、医薬部外品等。
過大な景品類の提供:1件(0.6%) 化粧品
指導内容別では、インターネット広告、SNS等広告ともに優良誤認が最も多く、特にSNS等広告では96%に上ります。また、SNS等広告では、有利誤認が3割以上、ステマが4割以上となっており、インターネット広告が各17%にとどまっているのと比べて高い割合であることが特徴的です。
【指導内容別 広告監視結果(件数)】
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不当表示の多い商品は、健康食品、化粧品、雑貨
媒体別の傾向として、雑貨や役務はインターネット広告での指導件数が多く、医薬部外品、健康食品はSNS等広告での指導件数が多い傾向が見られます。
インターネット広告
健康食品:50件(27.6%)サプリメント、お茶 など
雑貨:50件(27.6%)脱毛器、美顔器 など
役務:46件(25.4%)修理、エステ、葬儀 など
化粧品:25件(13.8%)美容液、マスク など
医薬部外品:10件(5.5%)育毛剤、歯磨き粉 など
SNS等広告
健康食品:77件(48.1%)サプリメント、お茶、コーヒー など
化粧品:36件(22.5%)ファンデーション、シャンプー など
医薬部外品:35件(21.9%)美容液、マウスウォッシュ、育毛剤 など
雑貨:10件(6.2%)美顔器、高機能インソール など
役務:2件(1.3%)ダイエット、脱毛 など
【商品・サービス別指導件数】
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「不実証広告」、「期間限定」、「No.1表示」、「ステマ」は、特に注意
【不当表示例と問題点】
健康食品:
表示例1:この健康食品を摂取することで、血圧が高めの人の血圧が低下し、高血圧対策に効果があるかのように表示
・「高めの血圧がみるみる…」
・「現役医師の9割が推奨しているんです!」
表示例2:この健康食品を摂取するだけで脂肪が減ったり、脂肪が燃焼するかのような表示
・「無理な食事制限過度な運動一切なし!お腹の脂肪を減らす」
・「日常生活にプラスするだけ!」
⇒表示の裏付けとなる合理的な根拠を有していないおそれ。(優良誤認のおそれ)
雑貨:
【着圧インナー】
表示例:この商品を使用するだけで、痩身効果を得られるかのように表示
・「これを着て生活するだけで全身ヤセが叶う」
・「着るだけで「瞬間-5Kg級」!」
【美顔器】
表示例:この商品を使用することで、顕著な美容効果を得られるかのように表示
・「美白だけでなく、シワ改善やリフトアップにも 高い効果がある」
・「深いシワやほうれい線が明らかに薄くなった」
⇒表示の裏付けとなる合理的な根拠を有していないおそれ。(優良誤認のおそれ)
化粧品:
表示例:この化粧品を使用することで、容易に若返り等の顕著な美容効果を得られるかのように表示
・「-20歳の肌になれる感動コスメ・・・」
・「整形級若見えファンデ」
・「1分で韓国女優肌を再現!」
⇒表示の裏付けとなる合理的な根拠を有していないおそれ。(優良誤認のおそれ)
商品・サービス全般:
表示例:根拠等記載が不十分であり、 客観的な実証に欠ける不当な表示
・「〇〇ランキング第1位」、「〇冠達成」
⇒表示の裏付けとなる合理的な根拠を有していないおそれ。(優良誤認のおそれ)
表示例:期間の記載がなく、常時又は長期間にわたって同様の条件で販売を行っていた。
・「限定クーポン」、「キャンペーン」
⇒実際よりも著しく有利な価格や取引条件であると誤認させるおそれ(有利誤認のおそれ)
表示例:以下の表示について、「事業者の表示」であることが明瞭になっていなかった。
・報酬等の対価と引換えに、事業者がインフルエ ンサー等に依頼してSNSに投稿させた内容について、一部分を切り取ったものを自社サイト等に掲載し、「SNSで大好評!」等と表示。
・「お客様の声」等として、商品・サービスに関する消費者の体験談を掲載していたが、寄せられた 体験談の中から無作為抽出したものではなく、商品・サービスについて好意的な評価をしているものを恣意的に抽出したものだった。
⇒消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であるおそれ(ステルスマーケティングのおそれ)
東京都によるSNS広告への監視体制強化と法執行
2024年度の広告表示監視では、SNS広告が新たに監視事業の対象となりました。
東京都は、2023年7月に弁護士やWEB広告専門家など外部の専門家から助言を得る制度「東京デジタルCATS (Clean Advertising Team of Specialists)」を導入し、SNS広告への調査方法等について専門的な知見を活用する取り組みを開始しています。(※3)
「東京デジタルCATS」からの助言を活かした法執行として、地方自治体で初となるステルスマーケティング告示を含む処分や、アフィリエイト広告の不当表示に対する処分が行われています。
《参考記事》
・東京都によるステマ告示措置命令。ダイエットプレミアムのダイエット食品アフィリ広告、優良誤認も (東京都 2025年3月28日)
・アフィリエイト広告への処分続く。ヴィワンアークスの育毛剤の発毛・白髪改善効果表示に景表法措置命令(東京都 2024年10月10日)
(※3)
不当なインターネット広告への対応力を強化します!
– 「東京デジタルCATS」始動! –
(東京都 2023年8月25日)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/torihiki/hyoji/cats/
消費者の通報制度と試買調査にも注力
東京都ではホームページ上で都民からの悪質商法、誇大広告、架空請求に関する通報を受け付け、悪質事業者の処分・指導や都民への注意喚起等を行っています。
2024年度の「誇大広告」通報件数は301件と前年度の211件から大幅に増加しました。そのうち、インターネット広告・SNS広告についての通報が280件と9割以上を占めています。行政指導につながった主な通報事例では、受験対策の学習塾で、合格者数が実際よりも過大に表示されている優良誤認表示がありました。
《参考記事》
・誇大広告への消費者通報が急増中!行政処分につながる消費者の厳しい目(東京都 悪質事業者通報サイトの通報概要(令和6年度))
また、健康食品においては、毎年、法令違反の可能性が高いと思われる製品を試買調査(販売店、インターネット通信販売)し、不適正な表示・広告を行った事業者に対し改善指導を行っています。
《参考記事》
・健康食品124製品のうち98製品に表示違反の疑い(2024年度東京都健康食品試買調査)
【景品表示法に関する解説記事】
・景品表示法(優良誤認)の不実証広告規制。表示の裏付けとなる「合理的な根拠」の判断基準とは
【景表法】「No.1表示」の注意点
【景表法】二重価格表示の注意点~セール時の価格表示~
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