景表法改正、ステマ規制、No.1表示等に注意。令和6年度の消費者庁の広告表示適正化への取組(消費者庁 2025年5月公表)

前回の記事では、消費者庁の「景品表示法の運用状況及び消費者取引の適正化への取組」(※1)より、令和6年度の景表法違反状況を取り上げました。

・令和6年度景表法違反、国の措置命令件数は26件に留まる一方、指導件数は339件と大幅増(消費者庁 2025年5月公表)

今回は、令和6年度の消費者庁の表示適正化への具体的な取組について報告します。
自社のコンプライアンス対策に、チェックしてみてください。

健康食品広告への法執行は、景品表示法から特定商取引法へ
●事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が22件
令和5年景品表示法改正施行に伴う運用基準整備
「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表。「No.1表示」適正化の取り組み強化へ
ステマ対策必見。「ステルスマーケティングに関するQ&A」の公表
●都道府県との連携、協力関係強化

健康食品広告への法執行は、景品表示法から特定商取引法へ

・令和6年度に、インターネット上の食品の虚偽・誇大広告の監視を行い、健康増進法第65条第1項(誇大広告の禁止)の規定に違反するおそれのある519事業者に対して、表示の改善を要請した。
・健康食品に対する景品表示法の優良誤認による措置命令は、0件だった。

健康食品広告に対しては、これまで景品表示法と健康増進法との一体的な執行が、消費者庁の表示対策課食品表示対策室及びヘルスケア表示指導室において厳しく行われてきました。
景品表示法に基づく措置命令が、令和4年度は8件、令和5年度4件(ペット用サプリメント含む)、健康増進法第65条第1項項(誇大表示の禁止)に違反するおそれがある事案については、令和4年度は12件、令和5年度10件の指導を行われましたが、6年度はいずれも0件となりました。
しかし、健康食品を含む美健商材に関しては定期購入契約での消費者問題が拡大していることを背景に、景品表示法に代わって、特定商取引法による誇大広告(12条)+最終確認画面の表示義務違反(12条の6第1項)を適用条項とした処分が多数行われました。

《参考記事》
・加速する通販分野の特商法執行。最新規制動向をまとめてチェック

事業者が講ずべき管理上の措置の執行 「指導及び助言」が22件

不当表示等の発生を防止するために、事業者が講ずべき必要な体制の整備その他の必要な措置について、消費者庁は必要な指導及び助言、勧告をすることができる(景品表示法第27条、第28条第1項)。
勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。(第28条第2項)
令和6年度は「指導及び助言」が22件で、減少傾向にある。

指導が行われた事例:

  • 優良誤認表示について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応を行っておらず、自社ウェブサイトにおいて、表示の根拠となる情報を確認していなかった。
  • 有利誤認表示について、商品パッケージにおいて、表示の根拠となる情報を確認していなかった。
  • 景品事件について景品表示法の考え方の周知啓発・法令遵守の方針等の明確化・景品類の提供等を管理するための担当者等を定めること・不当な景品類の提供等が明らかになった場合に迅速かつ適切な対応を行っておらず、違法とならない景品類の価額の最高額・総額・種類・提供の方法等を確認していなかった。

令和5年景品表示法改正施行に伴う運用基準整備

「不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律」が、令和5年5月17日に成立し、令和6年10月1日から施行された。改正法の施行に当たり、内閣府令・運用基準等の整備が行われた。

改正内容:

  • 事業者の自主的な取組を促進するための確約手続
  • 繰り返し違反行為を行う事業者に対する課徴金の割増規定
  • 悪質な事業者へ対応するための直罰規定
  • 適格消費者団体が事業者に対し表示の合理的根拠の開示要請ができるとする規定 等

———–
(消費者庁)
景品表示法等改正について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/#amendment
令和5年改正景品表示法に関する解説動画
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/movie_explanation
———–

改正法に盛り込まれた確約手続きによる初の確約計画認定が、2024年2月26日に、パーソナルジムの運営会社caname(株)に対して行われています。

《参考記事》
・景表法確約計画認定の留意事項(caname、パーソナルジム期間限定キャンペーン事例)

「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表。「No.1表示」適正化の取り組み強化へ

消費者庁は2024年9月26日、「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表した。
本報告書では、No.1表示のうち「顧客満足度」や「コスパが良いと思う」といった第三者の主観的な評価を指標とするものや、これと類似する「医師の○%が推奨」といった表示について、景品表示法上問題となるケースについて考え方が示された。

「No.1表示」に関しては、令和5年度に景表法で13社、特定商取引法で1社に行政処分が出されています。いずれの事案も、「顧客満足度」や「コスパが良いと思う」など 「第三者の主観的評価」 を指標とするNo.1表示で、No.1の根拠が客観的な調査に基づくとはいえない手法によることが問題となっています。
今回の調査結果公表により、消費者庁が今後いかなるNo.1表示を不当表示として取り締まっていくのかについての指針が示されたと言えます。令和6年度の処分は出されていませんが、報告書の考え方が周知された令和7年度以降、「No.1表示」への法執行が強化されることが予測されます。
安易なNo.1表示を行わないようしっかりとした対応が必要です。

《参考記事》
・消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表。調査会社任せの危うい「No.1表示」の実態が明るみに。「専門家の○%が推奨」も注意

ステマ対策必見。「ステルスマーケティングに関するQ&A」の公表

令和5年10月1日に施行されたステルスマーケティング告示について、消費者庁は、令和6年10月、「ステルスマーケティングに関するQ&A」を公表した。本Q&Aは、ステマ告示施行後の執行実績や消費者庁に寄せられることの多かった質問等を踏まえ、同告示の考え方を具体的に示したもの。

令和6年度の「ステルスマーケティング告示」による措置命令は5件となりましたが、違反認定されたポイントは、上記Q&Aに考え方が示されています。
「「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準」と併せて、しっかり理解しておくことが重要です。

《参考記事》
・ロート製薬の機能性表示サプリにステマ告示措置命令。続く大手製薬会社のステマ違反、自社サイトのSNS投稿転載に注意 (消費者庁 2025年3月25日)

都道府県との連携、協力関係強化

・都道府県における景品表示法の執行力の強化に向けて、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と協力して北海道・東北地区、関東甲信越地区、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州・沖縄地区のブロックの都道府県との連絡会議を開催し、景品表示法担当職員向けに研修を実施。
・都道府県職員対象の執行研修や、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等と共に、都道府県が行う景品表示法の運用に関して助言を行う。
・消費者庁は、平成24年4月1日から景品表示法に関する調査情報等を共有するネットワーク(景品表示法執行NETシステム)(※2)の運用を開始し、公正取引委員会事務総局地方事務所・支所等及び都道府県等との情報共有の緊密化、協力関係強化を図っている。

《参考記事》
・都道府県等への措置命令権限付与から7年。景表法執行に向けた運用課題と今後の取り組み

(※1)
令和6年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組
https://www.caa.go.jp/notice/entry/042438
(※2)
・消費者庁『景品表示法執行NETシステム』運用開始!景品表示法執行が迅速化?

令和6年度は、令和5年景品表示法改正やステマ告示施行に伴う運用基準整備が進み、令和5年度に問題視されたNo.1表示に関する景表法上の考え方が示されるなど、表示適正化に向けた下準備が行われたように感じます。
令和6年度の措置命令件数は26件と前年度(44件)から大幅に減少しましたが、今後、監視強化が予測されます。

事業者の皆さんには、一層の広告管理体制への取り組みが求められます。
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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。