提供実績のない通常授業料50%割引表示に有利誤認。ネイルスクール運営の(株)デザインワードに措置命令 (消費者庁:2024年12月17日)

消費者庁は2024年12月17日に、(株)デザインワード(東京都新宿区)が運営するネイルスクールの提供実績のない「通常授業料」での二重価格表示に対し、景品表示法(有利誤認)の措置命令を行いました。

販売実績のない「通常価格」での有利誤認表示での処分は、過去に多数出されています。
処分内容と、問題となった二重価格表示における「通常価格」での販売実績の有利誤認の考え方を確認します。

———-
株式会社デザインワードに対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁:2024年12月17日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/040387
———-


【違反内容】

対象役務:
「アフロートネイルスクール」と称するネイルスクールにおいて供給する9講座
「ベーシックネイルコース」
「プロフェッショナルネイルコース」
「トータルネイルコース」
「テクニカルネイルコース」
「ベーシックネイルコースLight」
「プロフェッショナルネイルコースLight」
「トータルネイルコースLight」
「トライアルネイルコース」
「セルフ上達・趣味ネイルコース」

表示媒体:
「アフロートネイルスクール」と称する自社ウェブサイト

期間:
2023年10月6日から2024年3月24日までの間

表示内容:
例えば、札幌校の「プロフェッショナルネイルコース」の講座について、「今だけ授業料50%割引!!」、「通常授業料701,800円(税込)」、「割引額350,900円(税込)」及び「授業料350,900円(税込)」と表示。

あたかも、「通常授業料」と称する価格は、札幌校において通常提供している価格であり、「授業料」と称する実際の提供価格が当該通常提供している価格に比して安いかのように表示していた。

実際
「通常授業料」と称する価格は、最近相当期間にわたって提供された実績のない価格であった。

【表示例】

(消費者庁発表資料より抜粋)

「最近相当期間にわたって販売されていた価格」か否かの判断基準

「最近相当期間にわたって提供された実績のない価格」とみなされた本事案の「通常授業料」と称する比較対照価格ですが、公正取引委員会が示すガイドライン(※)では、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」の一般的な目安として、以下の要件をすべて満たすことが示されています。

1)二重価格表示を行う最近時(セールの各時点において、その時点からさかのぼる8週間が目安)において、「通常価格」で販売されていた期間が当該商品の販売期間の過半を占めていること。(8週間未満の場合はその過半)
2)「通常価格」での販売期間が通算して2週間以上であること。
3)「通常価格」で販売された最後の日からセール開始時までに2週間以上経過していないこと。

《注意》
セール開始時点では1)の要件をクリアしていても、セール期間が4週間を超えると、「通常価格」での販売期間が8週間の過半を満たさなくなるため、そのまま二重価格表示を続けることは不当表示となるおそれがあります。
セール期間が4週間を超える場合は、消費者の誤認を防ぐために、セール開始時点でセール期間を明示しておくことが求められます。

本事案では、「通常価格」で販売されていた期間について公表されていないため、どの要件に抵触したのかは特定できません。
しかし、二重価格表示を行なっていた期間が、最短の事例においても2024年1月19日から2024年3月24日と9週間強となっており、「今だけ授業料50%割引」の表示のみでセール期間の明示もないことから、少なくとも1)の要件を満たしていないことが推定されます。

(※)
◆不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
(平成12年6月30日公正取引委員会 改定 平成28年4月1日消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_35.pdf

本件と同様、販売実績のない「通常価格」での二重価格表示が問題となった措置命令事案は多数あります。二重価格表示における通常価格での有利誤認の考え方と、期間限定キャンペーンの留意事項について、以下の記事で詳しく解説しています。
(会員限定コンテンツです。会員登録(無料)はこちらから

===================================
◆フィデスの美・健広告法務オンライン講座◆
法律を「知っている」から、実務で「判断」「活用」
できるコンプライアンス対応力向上を図ります。
詳細はこちら
===================================

===================================
◆フィデスの広告法務コンサルティング◆
消費生活アドバイザーが、貴社の広告コンプライアンス
体制構築をサポートします。
詳細はこちら
===================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの更新情報を、ダイジェストでお届けしています。
登録はこちら
————————————————————

関連記事

  1. 痩身系健康茶、ティーライフ(株)に対し景表法措置命令。体験談広告の問題…

  2. 育毛剤(株)RAVIPAに景表法措置命令。「いつでも解約」「顧客満足度…

  3. PS配合糖鎖サプリの認知症予防効果。シーズコーポレーションに景表法措置…

  4. イオン銀行のカード入会キャッシュバックキャンペーン表示に景表法措置命令…

  5. 「クラスTシャツ」通販の納品遅れに消安法の注意喚起。SNSの販促ツール…

  6. 特商法誇大広告の処分続く。薬用歯磨きのホワイトニング効果表示で、マーキ…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

最近の記事

2025年1月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。