健康食品125製品のうち105製品に表示違反の疑い(2023年度東京都健康食品試買調査)

東京都では、毎年、法令違反の可能性が高いと思われる健康食品の試買調査(販売店、インターネット通信販売)を行い、不適正な表示・広告を行った事業者に対し改善等を行っています。
成分検査による医薬品成分の検出も確認しています。
2023年度の調査では、「感染症予防」、「脳を若返らせる」など医薬品的な効能効果の標ぼうや客観的な実証のないNo.1表示、ネット通販の最終確認画面の不適正な表示が指摘されています。

広告表示違反の傾向について、確認してみましょう。

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令和5年度健康食品試買調査結果
都が購入した健康食品の84%に不適正な表示、広告を発見
(2024.3.26 東京都福祉保健局生活文化局)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/03/26/12.html
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ネット購入81製品の98%(79製品)で法令違反の疑い

今回調査で購入した健康食品125製品のうち105製品で、試買品目数の84%に製品表示や広告に法令違反又は違反の疑いあり。
購入方法別では、店舗購入44製品中26製品、ネット購入81製品中79製品が不適正な表示・広告となっている。
前回2022年度調査では、125品目のうち違反品目は103品目(店舗購入42品目(内、違反品目24品目)、ネット購入83品目(内、違反品目79品目))と、ほぼ同水準の違反状況となっている。

また、1製品からタダラフィルを、2製品からシルデナフィル(そのうち1製品からはアセトアミノフェンも検出)の医薬品成分が検出された。

違反が多い製品「美白、美容、美肌」「ダイエット効果」「男性機能向上」「免疫力増強」「抗糖化・エイジングケア」

注目されている製品テーマ(購入製品の多いもの)として、「美白、美容、美肌」(21製品)「ダイエット効果」(19製品)、「男性機能向上」(18製品)、「免疫力増強」(15製品)、「抗糖化・エイジングケア」12製品)となっている。

購入方法別では、販売店では「男性機能向上」(12製品)、ネットでは「美白、美容、美肌」(18製品)「ダイエット効果」(13製品)が多くなっている。

違反が多い製品は、「美白、美容、美肌」19製品)、「ダイエット効果」(17製品)、「男性機能向上」(13製品)「免疫力増強」「抗糖化・エイジングケア」(12製品)となっている。

表示違反が多い法律は、薬機法、景品表示法、特定商取引法

表示違反が多い法律は、医薬品医療機器等法が75件と突出している。次いで、景品表示法41件、特定商取引法40件、食品表示法(衛生事項)38件、食品表示法(保健事項・品質事項)31件となっている。

製品テーマ別では、主に以下の法律での違反が目立つ。
美白、美容、美肌:医薬品医療機器等法、特定商取引法、景品表示法、食品表示法(衛生事項)
ダイエット効果:医薬品医療機器等法、食品表示法(衛生事項・保健事項)、景品表示法
男性機能向上:食品表示法(品質事項)、医薬品医療機器等法、特定商取引法
抗糖化・エイジングケア:医薬品医療機器等法、景品表示法、特定商取引法、食品表示法(保健事項)
免疫力増強:医薬品医療機器等法、食品表示法(衛生事項)、景品表示法、特定商取引法

今回の調査で、違反又は違反の疑いがあるとみなされた表示です。

製品についての不適正な表示・広告の事例
健康増進法(健康保持増進効果等の虚偽誇大表示):
・著しく事実に相違する又は人を誤認させるおそれのある表示
製品紹介パンフレットに使用者の体験談を掲載し、健康保持増進効果について著しく誤認を与えるおそれのある表現。
「体にとって大切なビタミンやミネラルの合成を助け、消化や血液循環を促す働きがあります。」
「消化力が弱く、肌トラブルも多かったが、3日ほどで便通が良くなり、腸内がピッカピカになった感じがしました。」

景品表示法:
・優良誤認に該当するおそれのある表示
表示内容を裏付ける合理的根拠がない場合など、その商品が実際のものよりも著しく優良であるかのように消費者の誤認を招くおそれのある表示。
「髪が生まれ変わったように自己再生」「活性成分が腸へ働きかける」等

客観的な実証のない場合など、その商品が他社の商品よりも優れているかのように消費者の誤認を招くおそれのある表示。
「口コミ評価第1位」「顧客満足度第1位」等

医薬品医療機器等法:
・疾病の治療又は予防を目的とする効能効果に該当
「抗腫瘍作用(がんの予防)」「大腸炎」「便秘にお困りの方」「アレルギー花粉症」「アトピー性皮膚炎」
「胃炎の改善」「PMS症候群」「更年期障害にも効果的」
「高血圧予防」「高脂血症予防」「感染症予防」「歯周病予防」
「花粉症」「抗炎症」「抗不安」「抗うつ」

・身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効能効果に該当
「肝機能を回復」「血流改善」「血液サラサラ」
「脳を若返らせる」「新陳代謝促進」
「発毛」「飲む日焼け止め」

法令で義務付けられている表示についての不適正な事例
食品表示法(容器包装の表示):
・原材料と添加物が明確に区分されていなかった。
食品衛生法で既存添加物とされており、添加物として表示が必要な物質を、原材料に混在して表示していた。
・添加物が正しく表示されていなかった。
添加物の用途名である「着色料」のみが記載されており、物質名が併記されていなかった。
・表示が欠落していた。
容器包装に一括表示がなかった。
・賞味期限が表示されていなかった。
賞味期限の事項名及び表示箇所のみが記載されており、その年月日又は年月が表示され ていなかった。
・栄養成分表示が正しく表示されていなかった。
栄養成分表示の枠内に食品表示基準別表第9に定められていない成分の表示値が記載されていた。
・栄養機能食品として必要な表示事項の記載がなかった。
ビオチンの栄養機能食品であるのに、栄養成分表示内にビオチンの記載がなかった。

特定商取引法(通信販売広告の表示):
・インターネット通販の広告画面において、送料や返品に関する事項(返品の可否、返品の期間等の条件、返品送料の負担の有無)などの通信販売広告に表示すべき事項が、わかりやすく表示されていなかった。
・インターネット通販の最終確認画面(注文確定となる画面)に表示すべき事項のうち、返品や解約に関する事項、商品の引渡回数や時期などが、容易に確認できるように表示されていなかった。

不適正な表示・広告を行った事業者に対しては改善等を指導しており、他の自治体が所管する事業者については当該自治体に通報し、指導等を依頼しています。
他にも東京都では、インターネット広告表示監視事業により発見された不当表示に対して改善指示を行ったり(※)、消費者庁では、国と地方、地方の間での調査情報、被疑事案情報の共有を図ることを目的とした『景品表示法執行NETシステム』を、2012年4月から運用しています。

(※)
・東京都、令和4年度ネット広告(年間24,000件)監視 205通販事業者に改善指導!不当なネット広告への対応強化

<関連記事>

・2022年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・2021年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・2019年度健康食品試買調査結果 (東京都)

・平成30年度健康食品試売調査結果(東京都)

・東京都サイバー薬事監視の取組(1)【ネットショッピングモール(B to C)編】

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。