続くNo.1不当表示の処分。モバイルルーターレンタルのエクスコムグローバル、注文住宅建築の飯田GHDに景表法措置命令 (消費者庁 2024年3月1日)

「No.1」表示に対する景品表示法による立て続けの処分です。

太陽光発電システム等3社に続き、消費者庁は2月28日に、「イモトのWiFi」で知られるデータ通信機器レンタルサービス業のエクスコムグローバル(株)(東京都渋谷区)、2月29日に戸建分譲事業及び請負工事事業等を行う飯田グループホールディングス(株)(東京都武蔵野市)及び関連事業を行う同グループ子会社4社の計5社に対して措置命令を行いました。
太陽光発電システムの事案と同様に、満足度No.1表示について、客観的な調査に基づくものとは認められず、優良誤認とみなされました。

処分の内容と、「No.1」評価の「調査対象者」について確認します。

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エクスコムグローバル株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年3月1日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036495/

飯田グループホールディングス株式会社ほか4社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年3月1日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036536/
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エクスコムグローバル(株)
対象役務:
「イモトのWiFi」と称するモバイルルーターのレンタルサービス
表示媒体・表示期間:
旅行ガイドブックに掲載の広告
「地球の歩き方インドネシア2020~2021年版」:2022年2月12日以降
「地球の歩き方ドイツ2023~2024年版」:2024年11月1日以降

自社ウェブサイト
「【公式】海外行くなら!イモトのWiFi|海外WiFiレンタル」:2023年6月7日
「海外行くなら!イモトのWiFi」:2023年8月9日~13日、8月16日、23日、30日、9月6日、13日
「No.1ありがとう」:2023年6月7日、8月9日~13日、8月16日、23日、30日、9月6日、13日

違反表示内容:
「お客様満足度 No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」
「海外旅行者が選ぶ No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」
「顧客対応満足度 No.1※ 海外Wi-Fiレンタル」
等と表示。
あたかも、エクスコムグローバル及び他の事業者が提供するモバイルルーターのレンタルサービスについて、実際に利用したことがある者に対して「お客様満足度」、「海外旅行者が選ぶ」及び「顧客対応満足度」の3項目をそれぞれ調査した結果において、エクスコムグローバルの本件サービスに関する順位がそれぞれ第1位であるかのように示す表示をしている又は表示をしていた。

実際:
エクスコムグローバルが委託した事業者による調査は、本件3項目について、回答者に対し、同社及び他の事業者が提供する本件サービスと同種サービスについて実際に利用したことがある者かを確認することなく、本件サービスと同種サービスを提供する特定の9事業者の各サービスのみを任意に選択して対比し、同社及び特定9事業者のウェブサイトの印象を問うものであり、それぞれ客観的な調査に基づくものではなかった。
また、当該表示は、当該調査結果を正確かつ適正に引用しているものではなかった。

【表示例】自社ウェブサイト

(消費者庁公表資料より引用)

飯田グループホールディングス(株)
住宅情報館(株)、一建設(株)、(株)飯田産業、(株)アーネストワン

対象商品・役務:
注文住宅の建築請負に係る役務
表示媒体・表示期間:
飯田GHD
自社運営ウェブサイト:2023年6月7日、8月9日~9月13日
X(旧Twitter)内の「sumaiida」と称するアカウントの投稿:2022年6月29日~2023年9月25日
住宅情報館
ポスティングチラシ:2022年2月18日~3月3日、2022年3月14日~26日
一建設
自社運営ウェブサイト:2023年6月7日、8月16日~9月13日
飯田産業
自社運営ウェブサイト:2023年6月7日、9月15日
アーネストワン
自社運営ウェブサイト:2023年6月7日、9月15日、2023年6月7日、8月9日~9月20日

違反表示内容:
例えば、「飯田グループの注文住宅が選ばれる理由」「飯田グループは日本トレンドリサーチによる調査の結果、『土地情報が豊富な注文住宅会社』『高品質なのにローコストな注文住宅会社』『初めて住宅を建てる方におすすめの注文住宅会社』の3項目で満足度No.1を獲得しています。」
「土地情報が豊富な注文住宅会社 No.1」
「高品質なのにローコストな注文住宅会社 No.1」
「初めて住宅を建てる方におすすめの注文住宅会社No.1」
等と表示。
あたかも、飯田グループ(飯田GHD及び飯田GHDの子会社)及び他の事業者が提供する注文住宅の建築請負サービスに関する「土地情報が豊富な注文住宅会社」、「高品質なのにローコストな注文住宅会社」及び「初めて住宅を建てる方におすすめの注文住宅会社」の3項目について、実際に利用したことがある者又は知見等を有する者を対象に、それぞれ調査した結果において、飯田グループが提供するサービスに関する順位がそれぞれ第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
飯田グループが委託した事業者による調査は、本件3項目について、回答者に対し、同社及び他の事業者がが提供する注文住宅の建築請負サービスについて実際に利用したことがある者か又は知見等を有する者かを確認することなく、同社及び特定9事業者(委託事業者が、同種サービスを提供する事業者の中から指定)のみを任意に選択して対比し、各事業者のウェブサイトの印象を問うものであり、それぞれ客観的な調査に基づくものではなかった。
また、当該表示は、当該調査結果を正確かつ適正に引用しているものではなかった。

【表示例】自社ウェブサイト

(消費者庁公表資料より引用)

【表示例】X内のアカウント

(消費者庁公表資料より引用)

「満足度」評価では、調査対象商品の利用者であることが必須

本件のNo.1」表示が不適正とみなされたポイントは、太陽光発電システム等3社の事案と同様に、「No.1」評価調査において不適切な「調査対象者」、「調査選択肢」、「調査方法」設計により、客観的な調査方法に基づく評価ではなかった点です。
・太陽光発電システムとその施行サービス3社、No.1表示に景表法措置命令 (消費者庁 2024年2月27日、29日)

なお、エクスコムグローバル事案では、No1.表示に対して、「海外Wi-Fiレンタル10社を対象にしたサイト比較イメージ調査」である旨や、調査対象が「全国の20代~50代の海外旅行をしたことがある男女1316名」といった調査概要について注記されていましたが、客観的な調査とは認められませんでした。購入意向やイメージ評価の項目であれば、調査対象条件は調査対象商品のターゲット属性の設定で十分ですが、「満足度」評価では、調査対象商品の利用者であることが必須となります。

過去の事案では、2020年9月の家庭教師派遣サービスに対する満足度No.1表示事案においても、調査対象が「全国の子どもがいる20~50代の男女から選ばれた」と記載されていましたが、顧客に対しての調査ではなかったという点で客観的な調査方法とは認められませんでした。
・埼玉県、家庭教師派遣(株)ワン・ツー・ワンに景表法措置命令。合格率や教師登録数、解約料等の表示に誤認認定 (埼玉県 2020年9月14日)

飯田GHDの事案では、Xの投稿も対象表示媒体に含まれており、自社のSNSアカウントの投稿管理の徹底が求められます。
また、不当表示の違反リスクがグループ会社全体に波及し、事業活動への多大な損失となることが懸念されます。

「No.1表示」を行う際の景品表示法上の注意点について、以下の記事で解説しています。
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≪参考記事≫

・プレスリリースのコンテンツ審査、2.4%に指摘。最多指摘理由は「最上級表現の根拠不足」((株)PR TIMES 2023年12月5日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。