太陽光発電システムとその施行サービス3社、No.1表示に景表法措置命令 (消費者庁 2024年2月27日、29日)

太陽光発電システムとその施行サービス広告の「No.1」表示に、福岡市の事業者2社と札幌市の事業者1社に立て続けの景品表示法の処分が出ています。
今回の措置命令は消費者庁及び公正取引委員会事務総局の九州事務所と、北海道事務所の調査による事案です。

2月27日:
太陽光発電システム機器等の販売施工業者2社
(株)新日本エネックス(福岡市)、(株)安心頼ホーム(福岡市)
2月29日:
太陽光発電システム機器等の販売施工業者 フロンティアジャパン(株)(札幌市)

サービス品質、信頼性、推奨、顧客満足度、口コミ満足度などの項目に対するNo.1表示について、客観的な調査に基づくものとは認められませんでした。
処分の内容と、「No.1」評価調査において不適切とみなされた「調査対象者」、「調査選択肢」、「調査方法」について確認します。

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太陽光発電システム機器等の販売施工業者2社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年2月27日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036478/

フロンティアジャパン株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2024年2月29日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/036495/
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太陽光発電システム機器等の販売施工業者2社
(株)新日本エネックス
対象商品・役務:
蓄電池を含む太陽光発電システム機器及びその導入に係る施工
表示媒体・表示期間:
「ENEX」と称する自社ウェブサイト:
2023年4月10日、12日、17日、24日、5月2日、8日、15日、18日、29日
違反表示内容:
a)「『アフターフォローも充実の太陽光発電蓄電池販売』 『安心して導入できる太陽光発電・蓄電池販売』 『知人に紹介したい蓄電池販売』、の3部門でNo.1を取得しました!」
b)『アフターフォローも充実の太陽光発電・蓄電池販売』、『知人に紹介したい蓄電池販売』、『顧客満足度』の3部門でNo.1を取得しました!」
等と表示。
あたかも、新日本エネックス及び他の事業者が販売する同種又は類似の商品およびその施工サービスに関するa)b)の各3項目につき、実際に利用したことがある者又は知見等を有する者を対象にそれぞれ調査した結果において、新日本エネックスの商品・施工サービスに関する順位がそれぞれ第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
新日本エネックスが委託した事業者による調査は、a)b)の各3項目について、回答者に対し、同社及び他の事業者が販売する蓄電池を含む太陽光発電システム機器およびその施工サービスを、実際に利用したことがある者又は知見等を有する者かを確認することなく、同社及び特定事業者(委託事業者が、同種商品・サービスを販売する事業者の中から指定する他の事業者)の印象を問うものであり、それぞれ客観的な調査に基づくものではなかった。
また、当該表示は、当該調査結果を正確かつ適正に引用しているものではなかった。

【表示例】自社ウェブサイト

(消費者庁公表資料より引用)

(株)安心頼ホーム
対象商品・役務:
蓄電池を含む太陽光発電システム機器、「エコキュート」と称する給湯器、電気温水器及びそれらの導入に係る施工
表示媒体・表示期間:
「安心頼ホーム」と称する自社ウェブサイト:
2023年4月7日、10日、12日、17日、24日、5月2日、8日、22日、29日
違反表示内容:
「No.1 日本トレンドリサーチ 九州エリアの蓄電池販売施工会社 口コミ満足度」
「No.1 日本トレンドリサーチ 九州エリアの太陽光発電 販売施工会社 口コミ満足度」
「No.1 日本トレンドリサーチ 九州エリアのエコキュート・電気温水器 販売施工会社 口コミ満足度」等と表示。
あたかも、九州地区内において、安心頼ホーム及び他の事業者が販売する蓄電池を含む太陽光発電システム機器、「エコキュート」と称する給湯器、電気温水器およびその施工サービスに関する上記3項目につき、実際に利用したことがある者を対象にそれぞれ調査した結果において、安心頼ホームの商品・施工サービスに関する順位がそれぞれ第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
安心頼ホームが委託した事業者による調査は、本件3項目について、回答者に対し、同社及び他の事業者が販売する本件商品と同種商品およびその施工サービスを、実際に利用したことがある者かを確認することなく、同社及び特定9事業者(委託事業者が、同種商品・サービスを販売する事業者の中から指定)のみを任意に選択して対比し、各事業者のウェブサイトの印象を問うものであり、それぞれ客観的な調査に基づくものではなかった。
また、当該表示は、当該調査結果を正確かつ適正に引用しているものではなかった。

【表示例】自社ウェブサイト

(消費者庁公表資料より引用)

フロンティアジャパン(株)
対象商品・役務:
太陽光発電システム機器及びその導入に係る施工
表示媒体・表示期間:
自社ウェブサイト:2023年4月18日、26日、5月1日、8日、15日、22日
新聞折り込み又はポスティングチラシ:
2022年6月の4日間、7月の4日間、8月の5日間、9月の4日間、10月の4日間、11月の5日間、12月の8日間、2023年1月の8日間、2月の9日間、3月の6日間、4月の8日間、5月の9日間
違反表示内容:
a) 優良誤認表示
「北海道エリア太陽光発電業者 満足度3冠達成」
「No.1日本トレンドリサーチ 北海道エリア 太陽光発電業者 アフターサポート満足度」
「No.1 日本トレンドリサーチ 北海道エリア 安心・信頼できる 太陽光発電業者」
b)有利誤認表示
「北海道エリア太陽光発電業者 満足度3冠達成」
「No.1 日本トレンドリサーチ 北海道エリア 太陽光発電業者 見積価格満足度」
等と表示。
あたかも、北海道内において、フロンティアジャパン及び他の事業者が販売する太陽光発電システム機器およびその施工サービスに関してa)の2項目については、実際に利用したことがある者を対象に、b)の項目については、実際に見積りを徴したことがある者を対象に、それぞれ調査した結果において、フロンティアジャパンの商品・施工サービスに関する順位がそれぞれ第1位であるかのように示す表示をしていた。

実際:
フロンティアジャパンが委託した事業者による調査は、回答者に対し、北海道内において、同社及び他の事業者が販売する本件商品と同種商品およびその施工サービスに関して、a)の2項目については実際に利用したことがある者か、b)の項目については実際に見積りを徴したことがある者かを確認することなく、同社及び特定9事業者(委託事業者が、同種商品・サービスを販売する事業者の中から指定)のみを任意に選択して対比し、各事業者のウェブサイトの印象を問うものであり、それぞれ客観的な調査に基づくものではなかった。
また、当該表示は、当該調査結果を正確かつ適正に引用しているものではなかった。

【表示例】自社ウェブサイト

(消費者庁公表資料より引用)

「No.1」表示に求められる客観的な調査方法

本件のNo.1」表示が不適正とみなされたポイントは、No.1」評価調査において不適切な「調査対象者」、「調査選択肢」、「調査方法」設計により、客観的な調査方法に基づく評価ではなかった点です。
アフターフォローの充実といったサービス品質や信頼性、知人に紹介したいといった調査項目についての調査対象者の条件としては、調査対象商品・サービスの利用者や知見を持っている者であることが求められます。さらに、「満足度」評価では、調査対象商品の利用者であることが必須となります。
「調査選択肢」の設定では、上位に挙げられる競合商品に抜け漏れがないように、また、比較対象を見たときに、一般消費者からみて納得感が得られる競合相手を選定することが求められます。
また、「満足度」、「おすすめ」を評価する「調査方法」については、事業者に対する「印象」やサイトのイメージ調査では評価することはできません。
本件では、No1.表示に対して、ブランドやサイトのイメージ調査である旨の調査概要について注釈が記載されていますが、客観的な調査とは認められませんでした。

「No.1表示」を行う際の景品表示法上の注意点について、以下の記事で解説しています。
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≪参考記事≫

・プレスリリースのコンテンツ審査、2.4%に指摘。最多指摘理由は「最上級表現の根拠不足」((株)PR TIMES 2023年12月5日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。