糖質カット炊飯器の販売事業者4社に景表法措置命令。みせかけの糖質低減率表示に「合理的な根拠」認めず(消費者庁 2023年10月31日)

10月31日、消費者庁は、糖質カット炊飯器の販売事業者4社に対し、商品の糖質カット炊飯機能表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行ったと公表しました。
4社の命令発出日は、(株)forty-four(東京都渋谷区)10月26日、ソウイジャパン(株)(同品川区)10月30日、(株)EPEIOS JAPAN(同中央区)10月27日、HR貿易(株)同隅田区)10月31日となっています。
不実証広告規制(※)を用いた処分となっており、4社が提出した根拠資料は、いずれも表示の裏付けとなる「合理的な根拠」として認められませんでした。
表示媒体は、自社ウェブサイトや、楽天、アマゾン、ヤフー内の自社ウェブサイトのほか、プレスリリースやクラウドファンディングサービス「Makuake」での販売サイトが対象となりました、クラウドファンディングサイトが対象となるのは初めてです。

処分のポイントと、4社が認められなかった根拠資料について「合理的な根拠」の考え方を確認します。

———-
糖質カット炊飯器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について
(消費者庁 2023年10月31日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/035090/
———
(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。
⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


違反事業者・対象商品

(株)forty-four(フォーティーフォー/東京都渋谷区)の『LOCABO(ロカボ)』
ソウイジャパン(株)(同品川区)の『Low Caloriena(ロー カロリーナ)』
(株)EPEIOS JAPAN(エペイオスジャパン/同中央区)の『SUGAR-CUT RICE COOKER(糖質カット炊飯器RC868)』
HR貿易(株)(同墨田区)の『ZHENMI X6(ジェンミ エックス6)』

違反概要

(株)forty-four
表示媒体、表示期間:
1)自社ウェブサイト「LOCABOオンライン」:2022年9月29日~2022年10月11日
2)クラウドファンディングサービス「Makuake」に開設した自社ウェブサイト「locabo」:2022年9月29日、10月11日、12月26日、2023年1月4日、1月17日
3)「ニッポン応援させていただきます!」と称するウェブサイトに開設した自社ウェブサイト「糖質カット炊飯器『LOCABO』(白)」: 2023年1月26日、2月6日
4)日刊新聞紙に掲載した広告:2021年9月28日、10月28日、2022年1月10日、2月5日、6日

表示内容:
「減らす 控える 落とす 美味しさそのまま 糖質45%※カット炊飯器 LOCABO ※第三者機関による検査(2021年7月)」及び炊飯された米飯等の画像と共に、「糖質カット炊飯器LOCABO『あれば便利、邪魔にならない』をコンセプトにした糖質45%カット炊飯器LOCABOの一番の特徴である糖質カットを実現したのは、その構造です。一般的な炊飯器では、お米を炊いた際にお米から発生する糖質(でんぷん)が水と一緒にお米に付着しています。そこでLOCABOはお米から発生した糖質(でんぷん)がお米に付着しないように、蒸し器のような構造にしています。これによって、炊飯時に発生した糖質(でんぷん)を落とすことが可能になりました。」と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質(でんぷん)が、45%カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:(株)forty-four(LOCABO 自社Webサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

ソウイジャパン(株)
表示媒体、表示期間:
1)自社ウェブサイト「SOUYI ■オンラインショップ」及びサイト上の動画5種:2022年10月18日
2)自社ウェブサイト「ソウイジャパン公式オンラインショップ」:2022年10月18日、25日、11月1日、8日、15日
3)クラウドファンディングサービス「Makuake」に開設した自社ウェブサイト「ソウイジャパン株式会社」:2022年11月22日、29日、12月6日
4)PR TIMESのウェブサイト(2021.9.10/2021.12.8):2022年10月4日、18日、25日、11月1日、22日
5)「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「SOUYI 公式ショップ」:2022年9月29日
6)「Amazon.co.jp」に開設した自社ウェブサイト「ソウイ公式ストア」:2022年9月29日
7)「Yahoo!ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「SOUYI 公式ショップ」:2022年9月29日

表示内容:
本件商品及び容器に入れられた米飯の画像と共に、「最大54% 驚異の糖質カット  Low   Caloriena糖質カット炊飯器 【SY-138】」及び炊飯しているイメージ画像と共に、「54% 糖質カット」、「糖質カット炊飯器は通常の炊飯器と異なり、お米から出た糖質を含んだ水を、独自の高性能自動排出バルブを通して下部のトレーに流すことで、糖質最大54%カットを実現しました。お米は蒸気で炊き上げるので、糖質カットしていてもふっくらと美味しくお召し上がりいただけます。通常炊飯やおかゆ、雑穀米、蒸し料理も調理可能なので1台で5種類の料理をお楽しみいただけます。」等と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質(でんぷん)が、54%カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:ソウイジャパン(株)(Low Caloriena 自社Webサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

(株)EPEIOS JAPAN
表示媒体、表示期間:
1)自社ウェブサイト「EPEIOS」:2022年9月29日
2)PR TIMESのウェブサイト(2021.9.10/2021.12.8):2022年10月4日、11日、25日、11月1日、8日、15日、22日、29日、12月6日、14日、21日
3)「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「mpowjapan」:2022年9月29日
4)「Amazon.co.jp」に開設した自社ウェブサイト「エペイオス(EPEIOS)」:2022年9月29日
5)「Yahoo!ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「mpowjapanshop」:2022年9月29日

表示内容:
本件商品の画像と共に、「美味しく、ラクして、糖質カット。三位一体の機能搭載。糖質カット炊飯器」、「美味しいご飯を食べたい、お腹が気になる、たくさん炊いて冷凍したい…多くのライフスタイルに合わせて  万能な糖質カット炊飯器  炊飯器市場では、ご自宅で食事をする傾向の高まりもあって、美味しさ、使いやすさ、健康志向..さらに少鑑炊き、中/大鑑炊き(5 5合前後)などにモデルが分かれています。 そこで、今回の『EPEIOS糖質カット炊飯器』では、美味しさを保ちつつ、健康志向とまとめ炊きに注目し、"糖質カット/まとめ炊き/他の調理(蒸し料理)もできる三拍子揃った"製品を実現。 お客様のライフスタイルに合わせ"心も豊かになる製品を"コンセプトに、美味しくラクして健康志向&作りおきで節電節約のモデルを製品化しました。」及び「クラス最高レベルの最大54%糖質カット  美味しさ変わらず健康志向  本モデルでは独自の排水システムにより、炊飯中に出る糖質を含んだ水分を釜からタンクに切り分けることでクラス最高レベルの糖質カット率54%を実現。 このシステムを採用したことで、高い糖質カット率を維持しつつ、炊き上げられたお米は粒だちも良く美味しい仕上がりに、また保温しても美味しさが保てるようにしました。」と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質(でんぷん)が、54%カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:(株)EPEIOS JAPAN(SUGAR-CUT RICE COOKER「楽天市場」自社Webサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

HR貿易(株)
表示媒体、表示期間:
1)自社ウェブサイト「HR ONLINE STORE」:2022年10月11日
2)クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」に開設した自社ウェブサイト「ZHENMI  JAPAN」及びサイト上の動画:2022年10月11日
3)PR TIMESのウェブサイト(2020.10.9/2022.4.28/2022.7.11)及びサイト上の動画:2022年10月4日、11日、18日、25日、11月1日、8日、15日、22日、29日、12月6日、14日、21日、26日
4)「楽天市場」に開設した自社ウェブサイト「JuntakuShop」:2022年9月29日
5)「Amazon.co.jp」に開設した自社ウェブサイト「JuntakuShop」:2022年9月29日
6)「Yahoo!ショッピング」に開設した自社ウェブサイト「JuntakuShop」:2022年9月29日
7)日刊新聞紙に掲載した広告:2021年8月1日、10日、18日、26日

表示内容:
本件商品の画像と共に、「ZHENMI  毎日食べるご飯を罪悪感なくヘルシーに こんなお悩みを解決! 家族の健康を考えると食事の糖質が気になる 糖質制限が続かない 糖質カット食品で出費がかさんでいる ZHENMIなら炊飯器を変えるだけ! ▼ 糖質 44%カット カロリー 43%カット さらに!白米はもちろん玄米や雑穀米も糖質カット可能!」、「\テレビや雑誌で紹介されました!/ ◎2022年1月19日テレビ朝日グッドモーニング  必見!ヘルシー調理家電『糖質44%カットのヘルシー炊飯器』  ◎2021年7月1日  TBS  朝の情報番組ラヴィット最新ヘルスケア家電『美味しさそのままの糖質カット炊飯器』」等と表示。

あたかも本件商品の糖質カット炊飯機能で炊飯することにより、通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がりで、米飯に含まれる糖質(でんぷん)が、44%カットできるかのように示す表示をしていた。

違反表示例:HR貿易(株)(ZHENMI「楽天市場」Webサイト)

(消費者庁発表資料より抜粋)

実際:
4社に対し、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料は当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

なぜ、合理的根拠として認められなかったのか?

報道によると、以下のように報じています。

消費者庁が各社に表示を裏付ける資料の提出を求めたところ、通常炊飯したご飯と糖質カット機能で炊いた同量のご飯に占める糖質量の差を示す試験結果が提出された。しかし、糖質カット機能で炊いたご飯は通常炊飯のご飯より多い水分量を含んでいて総重量が増えたため、総重量に占める糖質の割合が低くなっているとして、消費者庁は合理的な根拠となる資料と認めなかった。

糖質カットうたう炊飯器、 見せかけの低減率 販売元4社に措置命令
(朝日新聞デジタル 2023年10月31日)
https://www.asahi.com/articles/ASRB062S1RB0UTFL007.html

4社の糖質カット炊飯器の機能はいずれも、釜から糖質を含んだ煮汁を排出することにより大幅な糖質低減が得られることをうたっています。
4社がウェブサイト等に掲載している糖質カットの根拠データは、外部検査機関による試験データとなっていましたが、通常炊飯したご飯と糖質カット機能で炊いた同量のご飯に占める糖質量の差を示す試験のみでは、エビデンスとして不十分です。
実際はご飯の水分量を多くすることで、みせかけの糖質低減率データを作ることが可能です。

また、通常のご飯より50%前後もの大幅な糖質低減率が得られるほどご飯の水分量を多くした場合、措置命令文にあるように「通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がり」になるとは考えにくいでしょう。

「おいしく楽しく適正糖質」の食事法「ロカボ」を提唱する一般社団法人 食・楽・健康協会では、2021年8月31日より「糖質45%カット炊飯器LOCABO」に対して強い疑念を表明していました。
「糖質45%カット炊飯器LOCABO」に対する当協会のスタンス・第七報

当協会の「糖質45%カット炊飯器LOCABO」に対するスタンスを改めて申し上げます。
当該炊飯器で炊飯することにより米の糖質を45%もカットできていることの証明は全く存在していません。
通常の白米を「通常炊飯」で炊飯し、通常の白米にほぼ同量のこんにゃく粒(まんなんライス)を混じたものを「低糖質炊飯」で炊飯し、それぞれの糖質量を第三者機関で計測させれば、前者に対して後者の糖質量が55%程度(45%カット)になることはありえることです。
あるいは、「低糖質炊飯」では「通常炊飯」に比して炊きあがりの容積が約2倍になるような、いわゆる”お粥炊飯モード”で炊飯している場合には、同一容積あたり(あるいは同一重量あたり)の糖質量が55%程度(45%カット)になることはありえることです。
よって、第三者機関の計測値があっても、それだけでは当該炊飯器の機能を証明したことにはなりません。
当該炊飯器によって45%も糖質がカットされることを主張するのであれば、そのカットされた糖質がどこに移動したのかを明示し、その移動した先(例えば炊飯した際の水分)の糖質量が元来の糖質量の45%程度に相当していることを示す必要性があります。
当協会は当該商品の科学的妥当性を強く疑います。

「糖質45%カット炊飯器LOCABO」に対する当協会のスタンス(当該企業からの反応について)
(一般社団法人 食・楽・健康協会 2021.09.12) 
https://locabo.net/news/7223/

糖質カット炊飯器については、今回の措置命令に先立ち、国民生活センターが今年3月に糖質低減率等に関する商品テストを実施し、5銘柄中4銘柄において広告などで示されていた低減率を下回る製品があり、景品表示法上問題となるおそれがあると指摘していました。
指摘を受けた4銘柄には、今回の措置命令を受けた4社のうちの2社((株)forty-fourの『LOCABO(ロカボ)』、ソウイジャパン(株)の『Low Caloriena』)が、含まれていました。

国民生活センターの商品テスト方法や見解について確認します。

《関連記事》
・水素関連食品 3社に景表法措置命令 商品テスト対象銘柄も
(消費者庁:平成29年3月3日)

======================================
◆広告法務コンサルティング・社員教育◆
販促・広報戦略、商品表示・広告チェック社内体制構築等、
社外専門家としてのノウハウとサポート
詳細はこちら
======================================

————————————————————-
◆本ブログをメルマガでまとめ読み!
本ブログの1週間分の情報を、ダイジェストでお届けしています。

登録はこちら

————————————————————-

関連記事

  1. 続く除菌剤の景表法措置命令。サプリメント・ワールド、新型ウイルス除去、…

  2. 埼玉県 接骨院MJGの「お客様評価」「やせプログラム」表示に景表法措置…

  3. 新型コロナウイルス抗体検査キットの販売事業者6社に景表法行政指導。消費…

  4. ソフトバンク「いい買物の日」のキャンペーンでApple Watchのお…

  5. 2度目の糖質カット炊飯器の景表法措置命令。違反事業者4社中1社が国セン…

  6. 「メーカー希望小売価格」「通常価格」による二重価格表示に注意!スーパー…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

最近の記事

2024年5月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。