「シリカ」または「ケイ素」を含む飲料水や健康食品に関する消費者相談が急増していることを受け、(独)国民生活センター(国セン)が当該成分を多く摂取できることをうたった商品の購入調査を行い、注意喚起を行っています。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、シリカまたはケイ素を含む飲料水や健康食品に関する相談が2017年以降の5年間で429件寄せられており、特に2021年度に前年度の倍近く急増しています。
ケイ素含有商品は、美容や健康に良いとうたわれて販売されていますが、ケイ素について現時点では一日当たりの摂取必要量や美容や健康増進などに対する具体的な有効性については、必ずしも明らかにはなっていません。(※1)
(※1)
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
ケイ素、ケイ素化合物
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail579lite.html
2022年 6 月には、ケイ素に関連して合理的な根拠なくさまざまな効果を広告したとして、景品表示法の措置命令が出ています。
・沖縄特産販売、珪素の健康食品の効果表示に景表法措置命令。業界団体の会員社へのチェック機能働かず (消費者庁 2022年6月1日)
そこで国センでは「シリカ」または「ケイ素」を含む飲料水、健康食品等の表示、広告、含有量等を調査し、消費者にケイ素の摂取に関する情報提供を行うとともに、消費者委員会や食品安全委員会、業界団体などに情報提供を行い、事業者への改善要望、消費者庁や厚生労働省に事業者への指導を要望しています。(※2)
今回は、「シリカ」または「ケイ素」を含む飲料水、健康食品等に関する相談状況と、国センが行った商品テストについて確認し、品質管理や表示、広告の注意ポイントをチェックしましょう。
ケイ素に関する摂取量や有効性、安全性について
- 市販の飲料水や水道水をはじめ、多くの食品にも含まれている元素で、普段の食生活で意識せずに摂取している。人の骨や髪、皮膚などを構成している元素のひとつ。
- 摂取量については、「推奨量」、「目安量」、「耐容上限量」のいずれも設定されていない。
- ケイ素は人の体内の微量ミネラルとして、骨の形成に関与しているが、有効性について信頼できる十分な情報は見当たらない。
- 通常の食品に含まれる量の摂取はおそらく安全だが、妊娠中・授乳中の多量摂取に関しては、信頼できる十分な情報がないため避けたほうが良い
- ケイ素(酸化ケイ素)は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」とされている。
PIO-NETに寄せられた相談情報
【相談件数】
シリカまたはケイ素を含むとうたった飲料水や濃縮液、健康食品、水に入れてシリカまたはケイ素を含む飲料水ができるとうたったスティックや固形物(以下、「生成器」)に関する相談件数。
2017年以降の5年間で429件寄せられている。(2017年4月以降受付、2022年9月30日までの登録分)2021年度に前年度の倍近く急増し、2022年度上半期も21年度分の同時期までの件数と比較して微増の状況となっている。(図1参照)
【相談事例】
有効性や安全性に関する相談:
- 子どものアトピーに効くとの体験談を信じてケイ素水をネット通販で購入。500ml で 2 万円と高額だが、効果がなく、納得できない。
- 整体師から「シリカを含む水を塗るとコロナに感染しない」と言われ、シリカを含む水を購入した。
- 1 カ月ほど前、大手通販サイトでケイ素のパウダーを購入し、それ以来毎日飲んでいる。
- 美容や健康に良いという口コミが複数掲載されている。私自身はまだ何の効果もないが、このまま飲み続けていても大丈夫なのかと気になる。安全性について知りたい。
- 表示に関する相談:
- 知人から体に良いと紹介され、インターネットでケイ素原液 2 本を注文した。届いた商品チラシにはケイ素の測定値の記載があるが、どこで検査した測定値なのかは不明である。
- 店で販売しているミネラルウォーターにシリカが含まれていると表示がある。食品表示欄に記載がなく問題はないか。
テスト対象銘柄
2022年 7月に、Googleや楽天市場、Amazon.co.jp、Yahoo!ショッピングのサイトにおいて「ケイ素水」、「シリカ水」、「ケイ素水 生成器」、「シリカ水 生成器」、「ケイ素 サプリメント」、「シリカ サプリメント」といった語句で検索した際に表示されたもののうち、以下を選定。
(個別の企業名や商品名は非公表)
ペットボトル入り飲料水10銘柄
水などで希釈して摂取する濃縮液3銘柄
生成器4銘柄
錠剤状の健康食品3銘柄
商品テスト結果
【表示・広告について】
対象:
商品本体等(20銘柄)対象銘柄のラベルやパッケージ、説明書等
販売者等のウェブサイト(19銘柄)
●摂取による効果等
ケイ素は肌や髪や爪などをきれいに保つのに必要で、商品やケイ素を摂取することは美容や健康増進等に効果がある旨の記載。
商品本体等:
飲料水5銘柄、濃縮液2銘柄、生成器3銘柄、健康食品1銘柄
販売者等のウェブサイト:
飲料水9銘柄、濃縮液2銘柄、生成器3銘柄、健康食品3銘柄すべて
通常の食事からの摂取ではシリカやケイ素が不足しがちで、積極的な摂取が必要であるかのような記載。
販売者等のウェブサイト:
飲料水7銘柄、濃縮液3銘柄すべて、生成器3銘柄、健康食品3銘柄すべて
シリカやケイ素の一日の必要量や一日に体内から排出される量が10~40mgであるとの記載がみられる銘柄もあり。
商品またはシリカやケイ素の摂取について、血液がサラサラになる、デトックス効果があるなど、医薬品的な効能効果や健康保持増進効果等と受け取れる記載。
(医薬品医療機器等法、健康増進法、または景品表示法上問題となるおそれ)
商品本体等:
濃縮液2銘柄、生成器1銘柄
販売者等のウェブサイト:
飲料水2銘柄、濃縮液2銘柄、生成器1銘柄
●シリカやケイ素の含有濃度や含有量
商品のシリカやケイ素の含有濃度や含有量の記載がみられない。
商品本体等:
濃縮液2銘柄、健康食品3銘柄(うち2銘柄は販売者等のウェブサイトにも記載なし)
不正確な記載。
含有濃度の記載があった濃縮液では、販売者等のウェブサイトにおいて、ケイ素濃度、シリカ濃度のいずれとしても同一の数値が記載されていた。
生成器では含有量の記載とともに、公的な機関が出している規定の方法で分析した結果である旨の記載があったが、当該規定にはケイ素の分析方法は定められていない。
●商品や調製した水の一日に摂取する目安の量等
商品本体等に記載あり。
濃縮液3銘柄すべて、生成器1銘柄、健康食品3銘柄すべて
販売者等のウェブサイトにのみ記載あり。
生成器1銘柄
商品本体等、販売者等のウェブサイトのいずれにも記載なし。
飲料水10銘柄すべて、生成器2銘柄
●食品表示(食品表示法違反)
栄養成分表示において、ナトリウムの記載があるにも関わらず食塩相当量の記載なし。
飲料水1銘柄
表示事項名が「原材料」や「原材料名」ではなく、「成分」と記載されている。
ナトリウムや鉄といったミネラルが摂取できる旨が記載されているにも関わらず、栄養成分表示がない。
濃縮液1銘柄
【ケイ素の含有濃度等について】
飲料水
ケイ素の含有や摂取がうたわれていない市販のミネラルウォーターよりもケイ素が多く含まれていたが、ほとんどの銘柄でケイ素の含有濃度が表示濃度よりも低い傾向あり。表示濃度の4割程度の銘柄があり、食品表示法、または景品表示法上問題となるおそれがある。
生成器
調製した水のケイ素の濃度が、表示されていた最大とされる濃度よりも大幅に低い(約2~3割)銘柄が2銘柄あり、景品表示法上問題となるおそれ。
濃縮液、健康食品
健康食品1銘柄で、記載されている一日に摂取する目安の最大量を摂っても、ほとんどケイ素を摂取できない銘柄があり、景品表示法上問題となるおそれ。
【重金属類】
飲料水及び生成器で調製した濁りのない水
鉛、カドミウム、ヒ素、水銀の濃度がミネラルウォーター類の成分規格の基準を超えるものはなし。
濃縮液及び健康食品、生成器で調製した濁りのある水
各銘柄の一日に摂取する目安の最大量を毎日摂取した場合でも、鉛、カドミウム、ヒ素、水銀により健康被害が出るリスクは高くはないと考えられる。
商品テストの結果を受け、国センは、商品本体等や販売者等のウェブサイトにおいて医薬品医療機器等法、健康増進法、または景品表示法上問題となるおそれがある表示を行っていた事業者に対する指導を、消費者庁と厚生労働省に要請しています。
また、栄養成分表示や原材料表示に不備、ケイ素の濃度について食品表示法や景品表示法上問題となるおそれがある表示を行っていた事業者に対する指導を、消費者庁に要請しています。
「シリカ」または「ケイ素」関連食品や生成器等を販売する事業者としての留意事項
以上の商品テスト結果より、次の点に留意してお客様への情報提供を今一度チェックされるとよいでしょう。
●商品について、薬機法、健康増進法、景表法上表示できる効能効果の範囲を確認し、消費者に誤認を与えないよう、適切な表示をする。
●適切な栄養成分表示や原材料表示や、商品で摂取できるケイ素の濃度を正しく反映した表示を行う。
(※1)
シリカやケイ素を摂取できるとうたった飲料、健康食品等に関する調査
-ケイ素の摂取は美容や健康に良い?-
(国民生活センター 2017年7月13日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20221207_2.html
≪参考記事≫
・国民生活センターの商品テストや情報公開を、前向きに活用しよう
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