健康食品広告で問題となる虚偽誇大表示のポイント(「健康食品に関する景品表示法および健康増進法上の留意事項」一部改訂 2022年12月5日)

2022年12月5日、「健康食品に関する景品表示法および健康増進法上の留意事項」が一部改訂されました。
景表法および健増法上問題になるおそれがある表示の考え方について、留意点の補足や具体的な表示例、これまでに問題となった違反事例等が追記されています。
そのポイントを解説します。
(パブコメでの意見を受けて改定案に追記されたり、考え方を示された内容を赤字で記載しています)

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「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の一部改定について
(消費者庁 2022年12月5日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/assets/representation_cms214_221205_01.pdf

「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」の 一部改定(案)に関する意見募集の結果の公示について
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms214_221205_03.pdf
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「明らか食品」も健食留意事項の対象となる旨の追記

本留意事項の対象となる「健康食品」として、錠剤やカプセル形状の食品のみならず、「野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに一般の食品と認識される物を含める」とした。

「明らか食品」は薬機法の対象外となりますが、景表法・健増法上の規制の対象となることが改めて明示されました。
例えば、「ニンジンでがんが予防できる」のような表示は認められません。

対象となる「健康保持増進効果」表示に追加された例示に注意

「疾病の治療または予防を目的とする効果」例
「コロナウイルスの予防に」、「認知症予防」を追加。

「身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果」例
「新陳代謝を盛んにする」、「若返り」、「アンチエイジング」、「免疫力を高める」、「細胞の活性化」、「治癒力が増す」、「〇〇〇は、活性酸素除去酵素を増加させます」、「歩行能力改善」を追加。

「自然免疫力を高める」→「免疫力を高める」、「自然治癒力が増す」→「治癒力が増す」に修正。「実際の表示におけるうたい文句としては単に「免疫力を高める」としているケースが圧倒的に多い中、「『自然免疫力』と言っていないので問題ない(=単なる「免疫力」ならOK)」という誤ったメッセージを発信することになってしまうのではないか」という意見を鑑み、「自然」をカットしました。

「特定の保健の用途に適する旨の効果」例
「体脂肪を減らすのを助ける」、「本品は骨密度を高める働きのある○○○(成分名)を含んでおり、骨の健康が気になる方に適する」を追加。

「栄養成分の効果」例
「ビタミンDは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、骨の形成を助ける栄養素です」を追加。

「『健康保持増進効果等』を暗示的又は間接的に表現するもの」例
名称又はキャッチフレーズ:
「妊活」、「腸活」、「スリム○○」、「減脂○○」、「デトックス○○」、「カラダにたまった余分なものをスッキリ」

「腸活」は、健康保持増進効果等である整腸作用、「妊活」は健康保持増進効果等である不妊改善を、暗示的又は間接的に表現するものと説明しています。

身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示:
「こんなお悩みありませんか?疲れが取れない。健康診断で○○の指摘を受けた。運動や食事制限が苦手。いつもリバウンドしてしまう。メタボが気になる。」、「最近、体力の衰えを感じるのは、○○が不足しているせいかもしれません。」、「年齢とともに、低下する○○成分」

なお、これらの「健康保持増進効果等」の表示をしたことが、直ちに虚偽誇大表示に該当するものではありません。健康保持増進効果等について、著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示と認められた場合に、虚偽誇大表示とみなされます。
※ただし「疾病の治療または予防を目的とする効果」についての表示は、「明らか食品」を除き、薬機法上、表示は認められません。

商品名を表示しない成分広告の「表示」に該当するケースに注意

商品名を広告において表示しない場合であっても「表示」に該当する例示を追加。

  • 特定の食品や成分の健康保持増進効果に関する広告に問合せ先を記載し、連絡した消費者に対し、その食品や成分の健康保持増進効果に関する情報が掲載された冊子とともに、商品情報が掲載された冊子や商品の無料サンプルが提供されるなど、それら複数の広告等が一体となって商品自体の購入を誘引していると認められるとき
  • 特定の食品や成分の名称を商品名やブランド名とすることにより、その食品や成分の健康保持増進効果等に関する広告を見た消費者に、特定の商品を想起させるようなケース

この例示に該当する景表法措置命令事案として、2019年11月の健康食品「ブロリコ」事案があります。
本事案では、「成分」による免疫力向上、疾病の治療又は予防の効果をうたった自社ウェブサイトを通じて、成分に関する資料を請求した一般消費者に対して、冊子及びチラシを送付するとともに、商品の注文はがき付きチラシ及び商品の無料サンプルを送付。
冊子、チラシと、最終商品とを結び付かせる手法について、一体となる広告とみなされ処分となっています。
・イマジン・グローバル・ケア、「ブロリコ」成分の研究コンテンツによる広告手法に景表法措置命令(消費者庁:2019年11月1日)

広告主が表示主体となるアフィリエイト広告と管理上の措置に注意

アフィリエイトサイト上の表示について、「広告主がその表示内容を具体的に認識していない場合であっても、広告主自らが表示内容を決定することができるにもかかわらず、他の者であるアフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合」について、広告主がその表示内容の決定に関与しているとし、広告主は景表法および健増法上の措置を受けるべき事業者に当たることを明記した。
また、広告主は、「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置」として、アフィリエイターの作成する表示を確認することが必要となる場合があるとした。

これは、「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書の提言を受けた、景品表示法26条「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の一部改訂を反映させた内容となっています。
・広告主に課されるアフィリエイト広告の適正管理。ステマ規制も示される(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)
・景品表示法において、広告主がASPやアフィリエイターに対して講じるべき措置(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針改正 2022年6月29日)

「著名人のブログ」による「ステマ」は虚偽誇大表示の「著しく」に該当

健康増進法上の虚偽誇大表示の「著しく」に該当する広告手法に、「著名人のブログ」による「ステマ」の文言を追加。

インフルエンサーを活用したSNS広告等においては、「広告」であることを明示するとともに、通常の広告以上にその表示内容が虚偽誇大表示とみなされるリスクが高いことを意識して活用することが求められます。

痩身効果・免疫力の「合理的な根拠」と認められなかった理由をチェック

消費者庁が不実証広告規制(景品表示法第7条第2項)を適用して健康食品の表示に関して措置命令を行った事例において、「合理的な根拠」と認められなかった理由の事例を追加。

  • 痩身効果を標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、内臓脂肪や体重の減少について、実証された内容と表示された効果が著しく乖離していた。
  • 特段の運動や食事制限をすることなく摂取するだけで痩身効果が得られることを標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、ヒト試験の被験者に対して運動や食事制限の介入指導が行われていた。
  • 糖質や脂質の吸収抑制効果を標ぼうする商品に関し、商品を用いたヒト試験の報告書が提出されたが、吸収抑制効果について、実証された内容と表示された効果が著しく乖離していた。
  • 免疫力が高まることにより疾病の治療又は予防の効果が得られることを標ぼうする商品に関し、商品の成分が一部の免疫細胞を活性化することに関する試験データが提出されたが、疾病の治療又は予防の効果に係る本件商品の有効性を実証するものではなかった。

健康不安訴求、No1.表示、体験談・打消し表示も要注意

景品表示法及び健康増進法上問題となる表示例の追記。
特定保健用食品:
特定保健用食品として消費者庁長官の許可を受け、当該許可の要件を満たしたものであるかのように示す表示をしていたにもかかわらず、実際には品質管理として、包装後の製品における関与成分についての試験検査が行われていないなど、健康増進法第43条第1項の規定に基づく特定保健用食品の許可の要件を満たしていない場合。

本事例のベースとなる処分事案として、日本サプリメントのトクホ商品に対する事案があります。特定保健用食品として許可申請した関与成分が含有されておらず、許可要件を満たしていなかったとして、トクホ制度初の健康増進法による許可取り消し処分となり、景表法違反としても処分も下されました。
・トクホ取消の日本サプリメントに景表法措置命令 強まる景表法の取組(消費者庁:平成29年2月14日)

パブコメの意見に、製品中の関与成分を担保する必要性について、トクホの許可要件として健増法や特定保健用食品の審査等取扱い及び指導要領中に記載のない「品質管理として、包装後の製品における関与成分についての試験検査が行われること」ではなく、「関与成分の量が、消費期限又は賞味期限を通じて含有されていない」ことを、虚偽誇大表示の根拠とすべき、という意見がありました。
それに対して消費者庁は、トクホの許可を受ける際には、関与成分の有効性と安全性が確保されるために必要な品質管理を適切に行う体制が整備されていることが必要であるとして、意見を退けています。
結果的に製品中の関与成分量が許可要件を満たしていたとしても、品質管理として、包装後の製品における関与成分についての試験検査が行われていないなど、当該特定保健用食品の許可を受けた際の要件を満たしていない場合には、虚偽誇大表示等に該当し得ますので、注意が必要です。

機能性表示食品:
届出内容を超える表示の例示追記。
届出表示の内容が「肥満気味の方の内臓脂肪を減らすのを助ける 機能性がある。」であるにもかかわらず、表示全体から、あたかも、 特段の運動や食事制限をすることなく、誰でも容易に腹部の痩身 効果が得られるかのように表示すること。

本事例のベースとなる処分事案として、2017年11月の葛の花由来イソフラボンを機能性関与成分として、痩身効果を標ぼうする機能性表示食品の販売事業者16社に対する不実証広告規制を用いた措置命令事案があります。
・「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性(消費者庁:平成29年11月7日)

「機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針」(事後チェック指針)の虚偽誇大表示等に当たるおそれのある考え方を追記。

いわゆる健康食品:
解消に至らない身体の組織機能等に関する不安や悩みなどの問題事項の例示や、およそ得られない身体の組織機能等の変化をイラストや写真を用いることを、虚偽誇大表示に当たる表示として追加。

上記表示の例示を追記。
実際には、運動や食事制限を併用することにより内臓脂肪の減少効果が得られるものであるにもかかわらず、「こんなお悩みありませんか?最近おなか周りが気になる、健康診断で内臓脂肪について指摘を受けた、運動が苦手、食べすぎを我慢できない」等と表示すること。

No1.表示:
「ダイエット部門売上 No.1」、「顧客満足度ランキング第 1 位」などと強調する表示(いわゆる「No.1 表示」)について、合理的な根拠に基づかない、根拠となる具体的な調査条件や出典等が明瞭に記載されておらず、優良・有利誤認となる場合を虚偽誇大表示に当たる表示として追加。

体験談・打消し表示:
不適切な体験談の表示例として、打消し表示に「軽い運動を併用した結果です」の例示追記。虚偽誇大表示例に、「商品に含まれる成分の効果を強調する表示」を追記。

体験談において健康食品の効果をうたう際の、以下の推奨表記事項を追記。
「体験談を表示するに当たり事業者が行った調査における①体験者の数及びその属性、②そのうち体験談と同じような効果が得られた者が占める割合、③体験者と同じような効果が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すること。」

例示の文言にとらわれず、表示全体から消費者にどのように認識されるかに留意

本留意事項では、景品表示法及び健康増進法上問題となる表示例が具体的に示されています。ただし、虚偽誇大表示等に関する景品表示法及び健康増進法の規定は、特定の用語、 文言等の使用を一律に禁止するものではありません。
虚偽誇大表示等に該当するか否かは、表示全体から消費者がどのように認識するか、表示ごとに個別具体的に判断されることに留意することが大切です。
暗示的な表現や、言い換え表現でグレーゾーンを探るのではなく、表示の根拠とユーザー実感に裏付けされた広告表現を目指しましょう。

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。